15 誕生
◯ 15 誕生
死神達との合同訓練が始まった。ギダ隊との連携はかなり良くなったし、戦闘の幅も広がった。影の中に入っての移動は死神の中でも中級以上の評価を得る事が出来た。元々が、戦闘のプロなだけあって、こつを掴めば上級と同じに、直ぐになるという。死神流の戦闘になれるにはまだ経験が不足ならしい。問題は僕という足枷がある事だろうか。
それでも、悪神の一人を天井ごと吹き飛ばして捕まえたし、死神と共同でも一人を湖に沈めた。200メートルの範囲だった僕の闇のベールの有効範囲も、繋がりをポースと共同にすれば倍に広がったし、時間も五時間に増えた。
合同訓練以外にもスフォラは身体強化を覚えるべく、毎日マリーさんの訓練を受けている。フォーニにやられたのが悔しいらしい。僕は飛ぶ練習をしている。空を飛ぶ靴と、リストバンドを付けて、分体に入って紫月について飛んでいる。体が小さいと小回りが利いて動き方が紫月と似せやすいので、随分参考になった。まあ妖精達の本気には付いて行けないけれど、随分ましになったと思う。
僕は最近、魔法で空気の圧縮したものを、攻撃からの盾に使う事も覚えた。柔いスポンジが付いたぐらいの衝撃の吸収率だから、あんまり利かないけれど、無いよりはましだ。
スポンジ盾と名付けられたそれは三枚重ねにしても、スフォラのパンチを防ぐ事が出来なかった。ほんのチョッピリ勢いが削がれただけで、霧散して消えた。それでも一応効果はあると思う。お福さんの猫パンチなら受け取れるからね。後は防護を張るタイミングさえ早くなればばっちりだ。
「アキちゃん、防護はね攻撃を受けてからじゃ遅いのよ〜?」
マリーさんが忠告してくれる。でもそれは僕には出来ないよ。
「でも、パンチの方が早いから、二発目からになるよね」
パンチの来るタイミングが早過ぎる。大体、スフォラが避けてくれてるけど、身体強化しているから、電撃が飛ばせない。代わりに僕が防護をやってるけど、役に立ってるのか良く分からない。早すぎて、付いて行けてないから防護を置き去りに移動している始末だ。
「二発目も防いでな……なんでもないわ〜。やる気になってるんだからその調子よ〜。攻撃と見せかけたら良いかも知れないわね……電撃を浴びせられるよりは良いわ〜」
ベール無しでの訓練はそんな感じだ。最近始まった分体も入れての訓練は、僕には全く付いて行けないし、防護のタイミングすら分からない。大人しく、幽霊になって外から見学だ。マシュさんがスフォラの分体の強化をしたらしい。スポンジ盾よりも役に立つぞと言われた。まあ、確かに。
僕の金属擬きのカジオイドもスフォラの様な、半生命体にしてしまおう作戦になったそうだ。意志を持たせれば、自分で体の管理をするようにさせてしまえるので、何やらやっている。
僕はいつかマリーさんに貰ったくまのぬいぐるみに、術を掛ける練習をしている。熊野 権三と名付けたはずなのに、レイがチャーリーと呼んでそっちが定着した。
言い合いになって仕方ないので、チャーリー 権三無と言う名に改名した。結局負けているが、まあ良いだろう。メイド服を来た権三は今一合わないから仕方ない。
次に貰ったうさぎのぬいぐるみは稲薔 飛駆留だったが、マリーさんがリーシャンと呼んでそれが定着した。仕方ないので、リーシャン 飛駆留無に改名した。執事服を来た飛駈留は今一イメージに合わなかったので……。
きらりと落ちた涙に名前をつけて、話し合いをしてなんとか戻って来たので、折角だから動かしてみようと練習を始めた。涙から作ったキリムが一番良く動いた。ただの水ではない。借りとはいえ命を持ち、意志を感じさせる優しい水だ。
光の結晶の中にいれて息を吹き込めばもう、疑似生物だ。ついでに羽根を付て飛べるようにしておいた。光の羽根をきらきらと動かし、妖精達と遊んでいる。紫月も分解せずに遊んでくれているので気に入ったのかもしれない。みかん箱の部屋でしか出来ない業だ。
ぬいぐるみに込めた念は大概蓄積されてるので、もっと動くはずだとマシュさんには言われた。人の家にある古いぬいぐるみや人形が気持ち悪く感じるのはそれのせいだ。もっと繋がってみれば良いのかな?
チャーリーの念いは動けるのなら、もっと動きたいだった。自由を意思を尊重して欲しい欲求が感じられる。リーシャンも同じように念っているみたいだ。動かす僕の方法が悪かったと気が付いた。彼らの念いにそって動かせてなかったんだ。意思を尊重して、運動エネルギーに変換させる物を中にいれる事にする。
光と闇の純結晶のコラボだ。ぐるぐると回り続けるエネルギーになる。念いの続く限りは動く設計だ。多分、みかん箱の部屋でだけだけど……。
「君はチャーリー 権三無。好きに動いていいんだよ」
僕が息を吹き込む。滑らかに動き出したチャーリーはぬいぐるみには見えなかった。首を傾げる姿が可愛い。
「君はリーシャン 飛駆留無。好きに動いていいんだよ」
息を吹き込んで念いとシンクロする。ゆっくりと立ち上がって動き出した姿はなんだか凛々しい。成功だ。皆に紹介したら、すぐに打ち解けた。マリーさんが作っただけあって、家事、戦闘、何でもこなした。ただ、細かい作業がぬいぐるみの手では、難しくて困った。マシュさんの家に行って頼んでみた。
「ふーん、原動力からのエネルギー変換は良い感じだ。他のものと合わせれば、行けるかもしれないな。外でも動けるようになりたいか?」
マシュさんはぬいぐるみを調べながら二体に聞いた。チャーリーとリーシャンは頷いた。
「良いだろう。設計してやるから、待っていろ。それから実験を含むから、それの契約もちゃんとして貰うぞ」
それも頷いていた。僕も頷いた。費用は実験を含むので材料費ぐらいだ。手数料やら特許だとかそんなのは実験を受け入れた事で相殺された。
「良かったね、チャーリー、リーシャン」
「どうするの〜?」
「マリーか。当然、改造する。手の部分は縫い直してもらうぞ?」
「分かったわ〜。あたしのぬいぐるみが外でも動くのね〜」
マリーさんは両手を合わせて体中をくねらせて喜びにもだえていた。
「良かったね」
楽しみだ。……何故かキリムが既に外にいるのは、紫月達妖精の仕業だろうか? 気にしたら負けだ。きっとカシガナの成長促進補正だ。
怪しい人になっている主人公にはその内フォローが入ります……。見捨てないでやって下さい。キリムに関しては紫月のせいと言っておきます。
そしていつ、ガリェンツリーに行くんだ? 勿論三十話を超えてから……。まあ、色々と主人公にも準備が必要なのです。




