13 閃き
お食事中、又は男性の方は要注意です。サラッと流しましょう。
◯ 13 閃き
「じゃあ、ジューダッド水将は新しい皇に第六皇子を立てて民を圧政から救う気だったんだ?」
「そうみたいだね。民衆の意見を取り入れた、新たな皇政を目指そう! みたいなそんなのを目指してたよ?」
ちょっとちゃかすようにレイが言った。
「ふうん。良い事言ってたんだね」
「言葉だけは良い感じだけど、悪神の言う事なんて、どれも嘘っぱちだからね」
大体、旅行した感じでは民衆に不満はなさそうだ。第六皇子も寝耳に水状態だったらしい。あの宮殿を落として、セスカ皇子を人質に取りつつ王宮も攻めるつもりだったみたいだ。
「その人はどうなるの?」
「洗脳を解くしかないね。まあ、どんな政治を目指すのかを聞いたら、出たとこ勝負だなんて、最低の事を言ってたから、頭は良くないみたいだね」
「騙されたんだね」
「セスカ皇子が毒で苦しんでる間、ガーラジークに会いに代理で来てた人だよ。刺し違えても良いから悪神打倒に燃えてたみたいだね」
脳筋タイプらしい。それでも会えなかったので、クーデターか。はあ、大変だ。ラークさんが面倒くさがるのが分かる。宮殿の修復も大分掛かりそうだし、セスカ皇子には一瞬しか会えなかった。光の魔結晶と、皆の贈り物を渡しただけで終ってしまった。
タキは僕の治療の後、湖近くの家の中に悪神達の隠していた転移装置の場所に行って、地球に帰ろうとしたが、弾き飛ばされて帰れなかった。当然だ。地球の方で不正な転移装置からの侵入は許されないように、董佳様が処理しているのだから。特にタキの事は今は正式でも通れない。ブランダ商会の転移装置は得に誰かが手引きをしない限りは全て弾かれる。
「帰るには、借金返済しないと無理だよ。交渉してそれだけは道があるんだから。次はもうかばえないし、文句いうなら自分で仕事見つけてよ?」
「くそお、畜生が! 何でだよっ。何したってんだっ」
「さあ、何したの? 僕はあんまり知らないよ」
「なんだよ、それ」
「ただ、帰りたいって言うから、僕に出来る事をしただけだよ」
その転移装置も回収されて、最後の悪神は捕まえて死神達が冥界へと連れて帰っていった。タキはここの特徴的な湖の色で、ここの世界に転移装置で入ってきたのを思い出したらしい。そして、悪神達と取引をして、帰る為に宮殿内に導いたという事だ。
その後、腕が治ったタキを待っていたマシュさんが、涎を垂らしそうな捕食者の顔付きで、ディフォラーの新たな試作を植え付けようとしていた。タキはその迫力にちびっていた。
当然、借金は三十倍ぐらい増えた。今回の事件の処理が進むに度に、順調に借金は増え続けている。組合は取れる所から取る主義だからね。一気に白髪が増えたタキは枯れたおじさんな雰囲気を漂わせて、マシュさんの魔の手から離れて犯罪者区画に戻った。
上機嫌なマシュさんはそっとしておこうと思う。何を要求したのかは分からないけれど、ディフォラーが破壊されたのを受けて、体からは勝手に出せない設定にしたみたいだ。
それに、星深零と協力して作ったそのデーターの報酬は割と良いみたいで、断る事は不可能だったみたいだ。それしか借金の返済は無理だと思う。
まあ、ちょっと可哀想だから、お米とみそ汁、インスタント食品なんかの食料品を規定の範囲内で送ってあげた。もっと寄越せとメッセージが送られてきたが、通販で買えると送り返した。
「痴漢を繰り返したら、大事なところが機能しなくなる設定にしてやったぞ」
マシュさんがそんな事を報告してくれた。
「そうなんだ?」
「悪神にすがるクセがあるみたいだから、ディフォラーをケツから取り出すようにした」
専用の機械以外はそこからしか出ないらしい。
「……そうなんだ」
ものすごく嫌だ。悪神を手引きしたし、ディフォラーを取り出して破壊したので、次は裏切れないようにしたつもりらしい。
「試していたら何かわめいてたが、あれなら取り出そうとはしないだろう。勝手に取り出そうとしたら、それも痴漢した時と同じ設定だ。吹き飛ぶからな」
何を試したのかは聞かないでおこうと思う。
「それはやろうと思わないね」
背中に嫌な汗が流れる。恐ろし過ぎる。
「われながら良いアイデアだ。タキが痴漢行為の後の汚物処理をやってる映像を見て、ひらめいた」
そうなんだ? でも納得だ。犯罪には手を染めないようにしようと誓った。
捕まえて眠らせたビーバーの様な顔にアライグマな尻尾の動物は、契約してポースの中に入ってもらった。すばしっこいし、よく見たら可愛いのでちょっと嬉しい。バッタよりも役に立たないけど、五匹いるし、バッタや妖精と同じで思念を映像化したのを交換するやり取りが出来る。簡単な言葉と思念で指示をしたら動いてくれる。戦闘に関してはさっぱり分からないので、今度、ネリートさんとセーラさんに聞いてみようと思う。




