112 神僕
◯ 112 神僕
神界でアイリージュデットさんに会ったヴォレシタンさんは、眩しそうにしていた。
「遅くなりましたことをお詫びします。私も力を削がれておりましたので、どうすることも出来ず……外からの力に頼りました。おかげで良い神々と縁を繋げれました。どうか受け取って下さい」
「有り難き幸せにございます」
アイリージュデットさんの前に跪いた姿はなんだか絵になっている気がする。神僕の印を受け取って号泣しているヴォレシタンさんは少し若くなっている気がした。三十代後半くらいに見える。
「レイがやったの?」
「まあね、もうしばらくやって貰わないと困るしね」
肩をすくめている。
「そうだね」
肯定したら、微笑んでいる。
「じゃあ、ボクは管理組合の方にいるから」
「うん。いってらっしゃい」
「いってきます」
ウキウキとレイは転移装置をくぐっていった。
「マリーさん、彼の装備も少し軽くて良いのが要りそうだね」
重そうな鎧を着ているので動きにくそうなんだけど……。
「そうね〜、あれは布装備じゃないから、知り合いと共同作業ね〜」
「じゃあ、そうしようか」
僕はヴォレシタンさんを連れて第六フィールドに向かった。シュウに新しい神僕だからと紹介して繋を付けた。
「そっちもか。こっちもさっき、火をつけられかけてなんとか消火したばかりだ」
シュウはそのことだと思ったと言った。僕とヴォレシタンさんは顔を見合わせた。
「全体を襲っているの?」
「神に刃を向けるなど、愚かな」
ヴォレシタンさんの眉間に皺が益々深く刻まれてしまった。
僕はマリーさんに連絡を入れた。他の場所の教会の様子を調べてもらった。カジュラ達にも連絡して聞いたら、第五フィールドの教会は無事だったらしい。ま、あそこは何もないからね。カジュラ達の神殿も警戒をと言っておいた。
その後の連絡で他の場所も五カ所程火をつけられていたが、冒険者訓練やら神官の訓練をしていた人達に寄って綺麗に消火されていた。
「あの人達も、あそこが終ったら他を回る気だったのかもしれないね」
三十人程いたのを思えば多分そうなのだろう。
「我々を片付ければ良いと思ってたのか……」
神樹の印が無いから狙われたのかもしれない。シュウ達と力をあわせさせない為だろうか。
「考え方が怖いね。建物もすぐに建て直しても壊されるだけだね」
「石造りは時間が掛かりすぎるし、どうした物か……」
「はあー、嫌になって来た」
こんなに色々と問題ばかり持ってくるんだろう? イライラするよ?
「それだけの資金を手に入れるしか残ってないな。幸いカジュラ達はランクSで稼げるからな」
シュウも困った顔だ。カジュラ達との連携で警戒を高めたと見るべきかもしれない。世界樹に集まる者達の連携を恐れたんだとするなら、余計に結束を高めただけじゃないかな?
「訓練を受けてる人達は?」
「怯えてる。貴族達に手を出されたことで動揺して、泣いてる人が出てる。出て行くと言ってる人も多い」
「そっか。彼らの作戦はそっちだね?」
「元奴隷達の恐怖心を煽ったか……」
ヴォレシタンさんも気が付いたみたいだ。元々心を病んでいる人が多い。強行状態に陥れば自ら破滅する可能性もある。希望の芽を潰しに来た。そっか、僕達の結束は高まっても長年虐げられてた人達にはかなりの痛手だ。
「用心棒でも雇う?」
「ギルドに頼むのか?」
「冒険者同士の伝でも良いし、何でも」
「あの、襲って来た黒服は?」
ヴォレシタンさんが一瞬懐疑的な顔をしたが、
「元、奴隷達か。やってくれるかどうか……聞いてみるだけでも良いか。奴らは貴族のやり方を知っている」
と、途中からは良い考えだと思ったみたいだ。ヴォレシタンさんは自分の場所に向かった。シュウも一旦そっちに行って様子を見ると言って、永井と一緒に出かけた。
僕は神界に戻った。カジュラ達は無事だったみたいなので少しホッとした。まあ、あっちは神罰の下剤が効いているんだろう。
元奴隷達の結束は硬く、シュウ達が戻った時には人質の救出に向かってしまったらしい。メリラーナさんまで一緒に向かったらしい。さすが直情型だ。きっと奴隷達の境遇に感情移入してしまったんだ。
「それで何処に?」
「三国全部に散らばっているからそれぞれにチームを組んで行ってしまった」
「すごいね。長くやってたのかな」
「分からんが、そうなんだろう」
ヴォレシタンさんとそんなメッセージのやり取りをしながら、三日がったった。一チームがぼろぼろになりながら帰ってきたと連絡が来た。
「それで人質は?」
「タトゥーの解除をして欲しい。苦しんでいる」
「分かったよ」
僕はカジュラにも連絡を取って第二フィールドの世界樹の島に至急飛んでくる様に頼んだ。自分もすぐに向かった。
空を飛んでいたら、後ろからカジュラが猛スピードで飛んで来た。
「カジュラ、早かったね」
「勿論でございます! 日々精進しております!」
「イバラのタトゥーの解除をするから!」
「了解です!」
島に降りたら、メリラーナさんが走って来た。僕達はそっちに走っていった。
「様子は?」
「はっ、人質の様子はかなり重篤です! この前はご無礼を働き申しわけございませんでしたっ!」
合流してそのまま案内してもらう。勿論走り続けている。
「ヴォレシタンさんを困らせ過ぎだよ? 今度禿げたら、君のせいだと思っておくね」
「は、はあ」
今はフサフサだからね。良く分かっていない顔のメリラーナさんに付いていった場所は、焼けたあの小さい家の後に無理矢理に廃材を集めてくっ付けた場所だった。どうやら地下室があるみたいで、そこは焼けてなかったみたいだ。
地下に降りていって。十人程の人質のタトゥーを解除していった。そのまま治療に入っていく。光の力では強すぎる人が多い。月の癒しでゆっくりと回復させていく。傷も時間をかけてそっと治した。
「我々の薬も中々効かずに吐き戻してばかりで手を焼きましたが、さすがです」
ヴォレシタンさんが冷や汗を拭っている。
「弱りすぎてて、それだと強すぎるんだ。もっと水で薄めた方が良いよ。ある程度回復したら普通ので行けるよ。他の人達は?」
根気良くやるしかない。霊泉水を渡してこれで薄めるように言っておいた。
「ここまで戻って来れてないのでは?」
カジュラも心配げだ。
「皆はバラバラにここを目指しているから」
「湖の捜索だね?」
「私が行きます!」
カジュラが勢いよく言った。
「お願いね?」
僕は魔力回復薬と治療薬を何本か渡した。
「僕も近くは探してみるよ」
そのまま、二人で捜索をした。半時間後に船を発見したので近寄って、黒服の人だと確認したので声を掛けた。
「世界樹を目指している人ですか? タトゥーを解除しに来ました」
「おお! 助かった」
「頼む、目を開けないんだ!」
そのまま、解除して治療に入った。小さい女の子だ。
「この船は三人だけですか?」
「途中ではぐれて、船を元に戻せばなんとかあいつらも来れるかもしれない」
「このまま戻るのでしたら、これを。少し薄めた方が良いかもしれません。弱っていると体が受け付けません時間が掛かるんです」
「分かった。戻るぞ! その子をお願いします!」
「気をつけて!」
彼ら用の治療薬も渡して、僕は女の子を連れて一旦島に戻った。シェンブートとシュンザートが手伝いに来てくれたので、シェンブートに治療をお願いしてシュンザートと一緒に湖を見てまわった。
カジュラから船を発見したと連絡が入った。シュンザートが向かったと伝えたら、御犬様ですか! と、返事がきた。
暫くしてから、猛スピードで島に向かっている船を発見した。どう見ても百キロ以上出てそうだ。分解しないと良いけど……。
「島周りの二十キロ範囲はいなかったよ」
島で治療をしているシェンブートに伝えた。
「交代致しましょう」
「うん。そうだね、シェンブートの方が早く飛べるしね」
「では、こちらに来て下さい」
「了解!」
島に戻ったら、二十人程の人質が増えていた。タトゥーは解除されていたので治療を引き継いだ。カジュラには湖伝いに陸地を捜索してもらった。仲間を迎えに戻った人達も獅座達の活躍ですぐに港に着いた。




