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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
くろいばら
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111 通告

 ◯ 111 通告


 目が覚めて船の甲板に出た。残っていた霧がゆっくりと晴れて行く所だった。朝の光に照らされた世界樹は綺麗だ。後もうしばらくで接岸しそうだ。顔を洗って、朝食を食べておいた。

 世界樹のある島は小さな村があって、湖で魚を捕って暮らしていた。湖の世界樹の近くには魔物が出ないらしくて安全に漁ができる。でもここ数年は魔物の侵入があったという。世界樹もそれだけ力を無くしていたみたいだ。


「最近、魔物が出なくなったらしい。世界樹は綺麗に見えるし、噂は本当かもしれないな」


「新しい神のことか?」


「ああ。変わったって言う神は、エルフに神罰を与えたとか」


「それは有名だろう。もうお許しが出たとか言ってたぞ?」


「あいつら付き合いにくいのが治ると良いけどな」


「さあな。奴隷には一番人気だったが、中々捕まらない種族だからな」


「馬鹿、神樹様は奴隷の待遇を上げろってお告げに出したろ?」


「奴隷を認めてるんだろ?」


「いや、いずれは解放するようにと最後に言ったらしい」


 食べてる間、横にいた二人が噂話しているのを聞いていた。


「神樹様は変革をお望みよ。我々がやらなければダメなのよ」


 後ろから声が掛かった。振り返ると二十歳くらいの女の人が立っている。神官服ではなく、騎士の格好だ。


「これは聖騎士様。おはようございます」


「今日もご機嫌がよろしいようで、では我々は失礼します」


 愛想笑いを浮かべた顔で言いながら後ずさりして、横にいた二人は逃げる様に行ってしまった。


「聖職者のくせに奴隷を使っているからダメなのよ。やっと我々の考えが日の目を見ているというのに、貴様も奴らの仲間なら同様なのだろう。性根を叩き直してやろう!」


 近くに居たせいで仲間と思われていたらしい。


「えーと、仲間では無いです」


「言い逃れか? 見苦しい! そこに直って歯を食いしばれ!」


 何故彼らが逃げたのか理解した。ダメだこりゃ。調度船が着いたみたいで船がぐらりと揺れた。


「ひぁっ!」


「げぼっ」


 身構えて無かった僕達は看板の上でよろけた。よろけついでに既に放たれてたパンチはスフォラの予測と違った動きをした。しっかりとみぞおちにパンチを食らって甲板の上を転がり、樽にぶつかって止まった。何か星が飛んでる?

 気が付くと世界樹の教会に運び込まれていた。天井部分に特徴のある模様が浮かんでいる。後頭部とみぞおちが痛い。


「メリラーナ。あれほど自身を抑えよと言っているのが、まだ分からんのか?」


「はい。申し訳ありません」


「我らの存在はまだ表に出るのは早い。少数の力では改善はままならん。少しずつ変革されなくては大きな力に消される。まずは草の根でも良い、続けるのが大事なのだ。幸いにも神樹様は我らと考えを同じにして下さっている」


「はい。分かっていますが、あんな訳も分かってない子供が神樹様の名を使って動いているのは納得いきません! 力はあるかもしれませんが、我々の様な志も無きあのような者に何故、印があるのか……悔しくないんですか!」


 この声は甲板であった女の人だろう。僕は自分で頭とみぞおちの治療を始めた。スフォラもパンチを食らって不機嫌だった。


「何か御理由があるのかもしれん。それに、最近の世界樹の教会での試みは我らがやろうとしている事と似ているし、我らもそれを補佐する必要がある。陰ながらでもやることは沢山ある。神樹様は我らのことも見て下さっている。悲観するな」


「悔しいんです! ヴォレシタン様がふさわしいはずなんです!」


 女性の声は泣いているのか震えている。


「それは、神樹様の御心のままにだ。要求するのが間違いだ。それは奢りへの道だ。気を引き締めよ」


「私はエルフの様にはなりません!」


 走って行く足音がして、どこかに行ってしまったらしい。直情型な気がする。


「メリラーナ!」


「全く、成長せん……」


 その後、もう一人の足音が扉の前に止まってドアを開けて話していた主が入って来た。五十代くらいの男性でこの人も騎士の格好だ。ヴォレシタンと呼ばれていたので連れて行くのはこの人だ。


「目が覚めたようで良かった。こちらには巡礼に?」


 ホッとした顔で僕に笑顔を向けて聞いてきた。


「いいえ、ヴォレシタンさんで間違いないならあなたに会いに」


 横たえられていた寝台から下りて、立ち上がった。


「冒険者が何の用かな?」


 少し警戒の顔色がうかがえた。

 冒険者カードが寝台の横のテーブルに置かれている。身元を調べたようだ。アイリージュデットさんから預かった葉っぱを収納スペースから出した。目を見開いているヴォレシタンさんは固まっている。


「これを貴方に」


 緑の特徴のある葉っぱはキラキラと光り輝いている。


「通告……」


 驚きを顔に貼付けたヴォレシタンさんは、震える手でそれを手に取った。すると光って体内のに入った。これで生体端末からアイリージュデットさんの言葉が再生される。ランダムに送る場合は世界樹の葉っぱを飛ばして街中で声だけ再生されたりする。今回のは正式な通告だから手渡しだ。


「畏まりました。貴方に付いていけば良いのですね?」


 しばらく惚けていたけれど、なんとか持ち直して聞いて来た。


「そうですね。帰りの船は夕刻ですね?」


「はい。おもてなしする様な物も無く申し訳ございません、えーとお名前は……」


 テーブルの冒険者カードをちらっと見ては慌てている。名前を覚えなかったらしい。


「アキです。どうかおかまいなく」


「さ、きほどは部下が無礼を働き申し訳ございません」


 今度は青白くなった。


「あ、うん。隣に座ってた人の仲間だと誤解してたから……話が通じない思い込みの激しいタイプですね」


「く、あぁ、大変なご無礼を! 厳しく叱っておきますので、どうかお許しを。彼女はその、仰る通りの性格でして、ですが真直ぐな心を持っております。時々暴走を致しますが、その、大目に見てやって下さい」


 僕の台詞で事態を悟ったみたいで慌てている。


「ヴォレシタンさんの部下ですし、悪くない人だと思います。大変ですね、あのタイプは面倒をずっと見ないとダメな感じだし」


「う、そうなんです、分かって頂けますか。今回もこんな騒動をやらかして、この前なんて……」


 長ーい苦労話を聞きながら、仲間のことを教えてくれた。神に仕える騎士としての活動は魔物の駆除やら、世界樹の運営の資金を稼ぐことみたいだ。まあ、シュウ達と似た感じだ。

 冒険者ギルドには所属はしておらず、独自の販売ルートを持っている。これだけ物が集まる場所なら魔物の肉やら魔核は問題なく売りさばけるみたいだ。このフィールドで、三国からも独立した組織で世界樹の信仰を集めている集団だ。

 ギルドという仲介が入らないので随分稼ぎ易いらしい。仲間の数は二十名程度、それでもちゃんと動けているのは冒険者達にも信頼が厚いせいなのだとか。


「そっか、ナヴォーシェン秘密結社ってヴォレシタンさん達のこと?」


「手伝ってはいるが、正確には我々だけではない。技術者の固まりとの連携だ。貴族連中に虐げられてるからな。一泡吹かせたい連中が揃っている。組織として成り立っているのは我々も協力しているせいだ。ダンジョン内で会う古株の連中と薬やら道具と素材を交換しているし、情報も色々入ってくる」


 また違う組織があってそっちとの取引なんだ。ドワーフの件で冒険者ギルドにありもしない情報を渡されていたシュウ達とは一線を画すようだ。


「そっか。情報も独自経路なんだね」


「そうなります」


 そんな話を聞きながら、昼過ぎまで一緒に島を歩いた。旅の準備があるからと小さな家に入っていった。僕は案内された部屋で自分のジュースをついで飲んでいた。暫くしてヴォレシタンさんが準備が整ったのか出て来た。と、同時に外に変な気配を感じた。


「何か取り囲まれてます?」


「っ!」


 火矢が飛んでくるのが窓から見えた。


「いつの間に!」


「逃げましょう!」


「くそ!」


 僕達は玄関から飛び出して港に向かって走ったが、そっち方向は既に沢山の黒い外套を着込んで顔を半分隠した男達に待ち伏せされていた。強行突破をするには人数が多過ぎるし、隠れるような場所も少ない。世界樹の教会の辺りから煙が上がっている。向こうも襲われているみたいだ。

 三十人単位はいそうなんですけど……。きっちりと訓練されてる動きなのは何となく分かる。スフォラの魔法を防護する人と、攻撃する人が違うし。距離を空けているのはこっちの攻撃を封じる為だ。じりじりと近寄ってくるし、後ろの家は火に包まれつつある。

 眠りの魔法を僕は展開することにした。スフォラが攻撃を防いでくれているあいだずっと掛け続けた。ゆっくりとした動きになっている追っ手にヴォレシタンさんがいた。そのまま頑張って掛けること一分、みんな眠ってくれた。

 攻撃中の人はやっぱり眠らせにくい。念のために少し深く眠らせて、指示を出していた人の顔を見てみた。知らない犬耳のおじさんだ。

 ヴォレシタンさんを起こして聞いてみたが、知らないと帰ってきた。よく見ると何か術が掛かっている。イバラを模したタトゥーが胸にあった。


「奴隷の人だね」


「そのようだな。暗殺部隊か?」


 ヴォレシタンさんは疑問を口に出して考えている。


「何処の?」


「分からん。貴族どもは何処も親戚関係だから」


「そうなんだ」


 知らなかったな。


「結束は硬いですね。色々と失伝しているらしいが、このタトゥーも最近復活した物と聞く」


 眉間の皺が深く刻まれて厄介そうにしていた。


「首輪よりは効力は少ないけど、酷いね。この人も人質がいるのかな」


「そんなことをしているのか!?」


 目を見開いて心底驚いている。そこまでは分かってなかったみたいだ。


「うん。この間はそうだったよ」


「そうか」


 唇を噛んで俯いてまた考え出しみたいだ。僕は倒れている皆のタトゥーの拘束を解除していった。時間が無いので雑だったけど、大体は消せた。その間、ヴォレシタンさんは世界樹の教会に走って行った。ヴォレシタンさんの仲間が何人か来たので彼らを任せた。


「これで、協力して自分達で解決してくれると良いけど」



 待ち合わせの港にいたら、ヴォレシタンさんは悲しそうだった。教会が燃え落ちたそうだ。


「メリラーナさんは?」


「無事だ。彼女にもここを一旦出て再建の為の資金を集める様に言った」


「そうですね。シュウ達も教会を新しく立て直すみたいです。協力出来ると良いですけど」


「ふむ。士気を上げるには調度いいと思っておこう」


「前向きですね」


「まあな。こういう時はあの猪突猛進型が役に立つ」


 苦笑しているが、少し気が晴れたみたいだ。メリラーナさんには苦労を掛けられるが、逆に目標に真っすぐに向かう姿には助けられていると言う。


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