109 買占め
◯ 109 買占め
今日は人族の穏健派の集まっているという第二フィールドにきている。大きな湖の周りを三つの国が取り囲む様にしてある。
かなり広さのあるフィールドで、湖のど真ん中の島に世界樹は立っていた。昔から世界樹の信仰の強い国が集まっているとされていて、歴史は長い。安定していると聞いているのでここに来るのは初めてだ。
「綺麗な所だね」
スフォラもここは気に入ったみたいだ。天門をくぐって見えた景色に息をのんだ。高台の上にある天門から湖がよく見える。アイリージュデットさんが勧めるだけある。
天門のある広場と一番近い街は、ここにある三国が共同で統治をしている貿易の街になる。乗り合い馬車が調度来たので、それに乗って一番近くのナフイユの街まで進んだ。
湖に面した街は広くて綺麗に整えられている。石畳の道路は人と馬車の通る位置が決められていてちゃんと整理されていた。その昔、ここの土地を巡って戦争が絶えなかったらしい。そんな時に世界樹に祈りを捧げていた神官が、思いつきで三国が共同で治めるようにして下さいと祈ったらしい。
それを採用して通告を行ったら意外にもうまくいったらしい。それ以降はずっとこの土地は三国の共有財産として存在し続けているとのことだ。神樹からの最初の通告がそれというのもおもしろい。神樹の僕の歴史の始まりだ。
「活気のある街だね。何かやっとまともな所に来た気がする」
今はここには神樹の僕はいないらしい。でも、力が少し戻ったので与えても良いか聞かれた。まあ、アイリージュデットさんが良いならと言ったら、神界に一回連れてきてもらいたいと言われた。迎えに一番適している僕が行っている訳だ。どうせ観光もしたいので迎えは明後日だ。
宿を取って、のんびりと街を歩いた。魔道具屋があったので入ってみた。ダンジョンで出たコンロやら冷蔵庫が並んでいた。値段はずっと前に見た物よりも下がってる。
指輪も売っていた。それはダンジョンで出た物以外も色々と種類があった。飛行の指輪とかもある。ケースに入っていて、触れない様になっていた。
心を読む指輪に魔眼の指輪、コカトリスの目の指輪とか物騒な物も置いてあるけどなんだか偽物っぽい。闇の魔石じゃないし、ただの貴石だと思う。魔法陣が入っているのでもないし変な感じだ。しかも激安。
杖用の魔石もあったけれど、店の店主が睨んできたので通信用の魔道具はあるのか聞いたら、がっかりした顔で売り切れてないと言われた。店主の顔から本当だろうと思う。
「最近売ってないから、どこに行ったんだろうかって言ってたんです」
ダンジョン内に入れていた耳飾り型の通信用の魔道具を最近見ないと、カジュラ達が言っていたのだ。ここなら売ってるかと思ったんだけど、無いみたいだ。
「分からんよ。貴族が買い漁ってるからまたなんかありそうだよ」
店主が申し訳なさそうにしてそんな情報をくれた。
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いや、仕方ないさ。薬を買い占めたと思ったら今度はこれだ。困るぜ」
情報のやり取りは精々五百メートルから一キロ圏内だし、片割れとしか話せない。しかしまた貴族か、警戒は必要かな。
「ここの街の観光は何処か良い所ありますか?」
「この街なら湖で取れる魚料理さ。三国の料理が混ざって独特の味付けだって言われてる。何でも選び放題だ。それに卸市に行くのも良いぞ、ここからは歩きだと時間が掛かるが乗り合い馬車に乗っていけば直ぐだ」
「卸市ってことは商人が買うんですか?」
「ああ。ものすごい人と物が集まるし、一般人も少し割高だが買えるぞ」
「そうなんですか。じゃあ、明日行ってみます」
「おう、そうだ、スリには気をつけな?」
店主にお礼を言って店を出た。宿に戻ると暗くなった。ここはお風呂は無かった。残念。スフォラにカジオイドで桶を作ってもらってお湯を溜めてそれで体を綺麗にした。部屋の隅にそれ用のがあったけれど縁にヒビが入っていたのだ。使えなくはないけど、止めておいた。
「明日は買物だね」
スフォラにお休みを言って早めに眠った。




