107 傷痕
◯ 107 傷痕
悪魔が放った力のせいで神殿のあちこちが地獄の気で傷んでしまっていた。亜空間を解除した時にその力を周りにまき散らしたみたいだ。
星始祭は波乱に巻き込まれた形になったが、最後の一日は悪魔を捉えた後の為に縁起はいいとされた。その日から新しい日が始まるのだから、メレディーナさんはそんな話をして少し微笑んでいた。
「どう?」
レイが背中の傷を診ているメレディーナさんに聞いている。
「ええ、悪魔が付けた傷も綺麗に消えました。普通は残り易いのですが、いいお薬が出来てますから」
「治療薬の出来が上がってるなら、アピールポイントだよね?」
「ええ。これならば何処にも負けないはずです」
傷も良くなっているので、今はアストリューの家から神殿に通っている。メレディーナさんは微笑んで治療は終了です、と言ってくれた。
家に帰ると、マリーさんは新しいぬいぐるみを完成させていた。僕のベッドには既にぬいぐるみが四体もいる。五体目のぬいぐるみに服を着せて僕に渡してくれた。
僕は治療の終了を言われたと皆に報告した。完治祝いはごちそうがたっぷり出た。
「悪魔との戦いは次の日の朝には殆ど決着がついていて、あたしが駆けつけた時にはほぼ一方的だったわ〜」
「アストリューに悪魔が出たと聞いた時は驚いたぞ。あんな霊気の固まりみたいな所で動けてる奴がいるなんて。映像を見たが、亜空間内に閉じこもって色々やるタイプだから出来たんだな、あれは」
「それに妙なアイテムを使ってたから、あれに秘密が隠されてそうだよね」
「あれは瘴気の固まりだった。ヘラザリーンが疑似生物に溜め込ませたあれだ。あれを悪魔が体内で飼っているから動けてたんだ。力を使い切ったら次のを飲んでいたろう?」
「あの容器は悪神の骨〜?」
マシュさんが頷いた。そんな物があったんだと僕も驚いてる。皆の表情は硬い。
「調べたらそうだった。ヘラザリーンも結局良く分からない勢力に飲み込まれていた訳だ」
あんな所で生け贄になっていたのを思い出した。
「ブランダ商会が目をつけて何かしたんだろうね。これで活発な悪神達の陣営が何をやっていたのか分かったね」
時々思い出したように出てくるあれは何なんだろう。
「こっちで動ける物を大量に作っていたってことだな。あれだけ強引にダンジョン化を進めようとするのはそれだけ後ろ盾が強力ってことだ。邪神やら悪神の大量生産大量消費をやってた訳だな」
「あの悪魔が五芒星の生け贄でこっちに来た可能性は?」
「それも調べたけど、確証は取れなかったそうよ〜。こっちに喚ばれてから全員を虐殺して、あの瘴気の疑似生物を持ってた悪魔から使い方を聞き出し奪って、こっちの破壊活動にいそしんでたみたいだから〜」
「一匹狼か」
「そうだね。あれだけ強力な物を手に入れてたら、群れようとはしないよね」
皆の話を聞いて、またあれが出てきているんだとちょっと嫌になった。ブランダ商会は悪魔を喚んだは良いけど、完全に飲み込まれてしまったみたいだ。より強力な悪魔召喚で力を求めて、そして今は自滅しようとしている。残ったのは大量の負の遺産だ。
問題はどれだけこっちに悪魔が召喚されているかだ。ガリェンツリーのように残っていれば良いけど、消えてしまった世界はもう戻らない。もしかしたらガリェンツリーのように偽装された世界が何処かに存在して、また悪神達が大量に生まれているかもしれないんだ。
「悪魔はどうやってここに入ってきたの?」
僕はそのことが良く分からなかった。
「亜空間を割と上手く使えている悪魔だったから、自分で異界を渡れる力を持っているってことだね。無理矢理力で穴を空けるやり方でもなく、綻びを作ってそこから忍び込んでくるタイプだね」
レイはそんな風に教えてくれた。
「そんなことが出来るんだ」
「アキも出来るよ。あの亜空間から出るのも近いからね。ただ、それだと不法侵入だから、やったらダメだよ?」
レイが笑っている。確かにその通りだ。それに僕じゃ時間の把握が転移装置無しじゃまだ難しい。世界の膨大な時間の流れを感じるのはまだ無理だ。精々自分の収納スペース内くらいだ。




