103 顔
◯ 103 顔
クィッツさんは毎日墓に花を摘んで飾っていた。シュウ達の詳しい話だと死後三日は経っていたらしいので先に殺されてたのは間違いないと言っていた。
墓地にあった新しい墓穴に埋められていたのを執念で掘り当てていたと聞いた。何時もそうやって証拠隠滅していたみたいだから、手口を知っている者からすれば分かるのだろう。暗殺部隊の拠点には血の跡しかなくて何も残ってなかったらしい。
利用され大事な人を失った悲しみは、胸を押しつぶしてしまったのかクィッツさんは涙もでないようだった。毎日ふらふらと墓地に行っては花を摘んで飾ってそこで座り込んでいるらしい。
多分、もう直ぐに死ぬと思う。半分魂が抜け出ようとしているからだ。命を燃やそうとしていない彼に声を掛ける神官も何となく察しているのだろう。元々の栄養状態も良くないし、食べ物も受け付けないようだ。
僕は死神に連絡を入れておいた。あのままだと魂は帰る場所を認識出来ずに彷徨いそうだから。
二日後に死神がクィッツさんを連れて冥界へと去った。横には娘さんの魂も一緒だった。冥界も時にはそんな希望を叶える良いシステムがあるのだ。使っても良いと思う。
「それで妾達の顔すら見ようとせぬのは、知っておったのか!」
調度、幽霊状態のクィッツさん親子が、手をつないで冥界へと消えたので視線を声の主に移した。目尻の皺をはっきりと浮きだたせた熟女が僕の目の前に両手を広げて立ちふさがっていた。その隣には腕を吊るしている老女がいた。この紫の服は……。
「……神罰中の人?」
折角の雰囲気がぶちこわしだ。僕は不機嫌になった。
「こんな仕打ちを何故受けねばならん! 不快な! 悪神の徒よ成敗してくれるわ!!」
「キポローム、その口の聞き方はダメだぞ! そういう要員だって言っただろ? これ以上はそういう態度を取ったら許してもらえぬぞっ」
二人は何やら揉め出したので少しは分かったらしいルルさんに聞いてみた。
「何が悪いのか分かってるんだよね?」
「カジュラの言う通り奢り過ぎだと気が付いたが、これは無いのではないか?」
苦々しそうにルルさんは訴えている。
「そう? 大喜びすると思ってやってたみたいだよ。植物は良く育ってるでしょ?」
「「やはりか!」」
何故か嬉しそうなルルさんと怒り狂っている現族長が、同時に叫んだ。
「何を喜んでいる! 種族の存亡に関わるぞ!」
また言い合いを始めたみたいだ。
「それだけの力のある神がいるんだと分かっただけでも良い。謝るから許してくれるだろうか? 私はこのままでよいが、他の皆は頼むから元に戻して欲しい。頼む!」
土下座しているルルさんは覚悟があるみたいだ。隣の現族長は、そんなルルさんに呆れたのか族長として同じにした方が良いのか迷っていた。
「はあ、聞いてはみるけど、期待しないでね? 現族長さんの意見は?」
「私が教育し直します!」
何か言おうとしていた現族長を抑えてルルさんが答えた。
「グラメール?」
レイに連絡して映像を送った。その間ずっとルルさんは土下座していた。
「へえ、やっと大人しくするって言ってるんだ? まあ良いよ。元に戻るのは時間が掛かるからね、三倍は掛かるよ」
面倒くさげにレイは答えて通信を切った。
「元に戻すのはしばらく掛かるって。その間に反省した方が良いと思うよ? 多分まだ半分怒ってるし」
「ありがとうございます」
それでも満足しているのかルルさんの顔は晴れやかだった。仕える神の力を知りたかったみたいだ。確かに僕にそれを求められると困る。でもレイだってここ以外でも色々とやってるから暇じゃないし、使う所は使って抑える所は抑えている。
「我らが仕える神ならば、このくらいは出来て当然だ!」
何かムッとするかも。
「……世界ごと吹き消されなくてよかったね? 一回うざいから消しても良いか聞かれたよ」
このくらいの嫌みは言っても良いと思う。何か設定をしている間に面倒くさくなったみたいで、不機嫌に聞かれてしまったのだ。
「「ひっ!!」」
本当に聞かれたからね、反省した方が良いよ? 僕の様子から本当だと思ったらしい二人は今更震えている。
「友達がいるし、それはなんとか止めてもらったけど、次に何かうざい事したらブタ顔の種属に作り替えるって言ってたよ?」
「「ひぇっ!!」」
「気をつけて帰ってね?」
首を縦に振っているので大丈夫だろう。




