波音制覇 ☆伝説(?)の日々 2
海の様な広い心で読んでくださると嬉しいです。
次は妹ちゃん視点のSSが一時間後に入って、
明日から新章 くろいばら です。
☆ 2
アッキのウェットスーツの透明ポケットに入り、周りを見ればかっこ良くサーフィンしている奴らがいる。あの板はアッキのとは違う。アッキのは小さい板だ。
ボディーボードとやらに揺られて沖に出るとアッキはボードの上で待機して波を待っている。
俺様はあっちのカッコいいサーフボードとやらに立って波を制覇したいぞ!!
幾つか波をやり過ごし、順番待ちをしているアッキに要望してみた。
「アッキ。あっちの方がかっこ良いぞ?」
アッキはケチなデザージなんかと違って要望に応えてくれるからな。
「あれは危ないからマリーさんが、禁止だって。他人に突っ込んだらダメ、だ、からね。これは、これ、でカッコいい業があるから、だ、大丈夫だよ……」
何か隠してないか? 何かその言い方は不安をかき立てるぞ? 何故こっちを見ないで答えてるんだ? アッキ!! 海デビューはかっこ良く決めたいんだ。しっかり……っ!
「アッキ、早まるな! あの波は見送れっ、うああぁっーー、ブッブクブクッ……!! ッ!」
俺様に三半規管があったら今頃目を回していたに違いねぇ。
右回転しながら波に押し出され、直ぐにそのまま高速回転に入り、あっという間に波に飲まれて縦回転を何回も決め、白い波の中で綺麗に洗われた気分で砂浜に打ち上げられた。
サーフボードなんて目じゃねぇ、あり得ない業だ。これまでの常識を剥がされたぜ。
「やられたぜ、アッキ。すごい業だ。誰もこんな動きはしていねぇ。アッキのオリジナルか?」
ポケットから出てその場で回転して体から水を切り、アッキに聞いた。
「…………そうだよ」
波間の音の空白の時間に、赤い顔で答えてくれたが、なんだか何時もより覇気がないな。もっと興奮しねぇと。
「かっこ良いぜ。こうでないとな」
「う、うん。波から飛び出す最後の決め業もあるけど難しいんだ」
成る程、アッキ的にはさっきのは失敗だったのか?
「そいつあすげぇな」
しかし、アッキ。何で視線を明後日の方向から戻してこっちを見ないんだ。自信もっていいぞ?! こんなものすげぇ事が出来るんだ。自慢して良いぞ!!
「この業を極めないとな。応援するぜ!」
「そ、そうだね。頑張るよ。幽霊の間に決めないとね……」
そこは肩を落とすところじゃないぞ?
「アキちゃん。見栄を張っちゃダメよ〜?」
寄って来たマリーがさっきから肩で笑っていたが、どういう事だ!?
「う、うう、う」
目から大粒の涙を流してアッキがこっちを凝視している。
「どうしたんだ?」
どうもアッキの涙はいけねぇ。なんかこう、ざわつく。これが背表紙が痒いって感じか!?
「ポース、ごめん。本当は、こんな業は、無いんだぁーー! うあぁーー!」
泣きながらアッキが何時もの二倍は速い動きで砂浜を走って行ってしまった。
「アキちゃんたら、ちゃんと走れば早いじゃないの〜」
十メートル先で盛大にこけているアッキに呆れているマリーから事情を聞いた。
あれは溺れる寸前ならしい。いや、アッキが幽霊じゃなきゃ出来ない修行なんだと言う。
「だが、他の奴にはできねぇ業には変わりねぇ。マリーこそ折れるべきだな」
「そうねぇ、何故かおかしな事に、たまーに超高難度の業を決めるのよねぇ」
マリーはどうやら少しは認めているみたいだ。首をひねって懐疑的だが、何やらアッキには秘密があるらしい。
「飛び出す業か?」
「そう、それなのよ〜。あの縦回転の波に乗って、ボードごと空中に飛び出して砂浜に着地を決めたりしちゃうの。普通あの状態って危険な状態で、引き波に飲まれたりしたら沖まで海面下に引き込まれるのよ〜。流されちゃうんだからぁ」
そんな危険な業を習得していたのか。
「それで幽霊の時期限定なのか?」
「まあねぇ。普通に皆がやってる波乗りを目指してるはずなのに、一人別次元の波乗りをやってるのよ〜」
別次元……マリーにそこまで言わせるとはすげえじゃねぇか。
「さすがアッキだな。震えが来るぜ!!」
その後はマリーがアッキを宥めて連れ戻し、練習を再開した。勿論俺様も一緒だ。こんな体験は出来るうちに乗っておかねぇとな。
「アッキ、臆することはねぇ。あれだけやって最も危険な波は避け続けてるんだ、行けるぜ! 次こそは着地成功だ」
「うん。行くよ!」
俺様が望めばアッキはやる。そう思ったぜ!
稀な体験だと言う着地に成功したこの日は、俺様に取っても良い体験だった。
縦回転制覇だ!!
縦回転。それは恐ろしい体験だった……。
鼻から水を大量に吸い込み、溺れる寸前のところに追い打ちを掛けるように引き波に攫われたのは作者です。(五メートルくらいだから大した事無いです)
生きててよかった。
しかし、生還した時は大注目で恥ずかしかったです。
当時の友人には他人のふりをされましたし、悲しい思い出しかございません。
逃げる必要があったのか?
今でも理解出来無いぞ! そして爆笑する事じゃない!!
波に攫われた時はスーっと後ろ向きに足から沖に流され、めちゃくちゃ怖かったのであります。
浜に帰った時には、足首には誰かの手形がくっきりとっ!!
という事は無かったです。はい。
残念ながら普通に溺れた人です。
このトラウマ的な経験を克服するには、アッキくらいの荒技が必要不可欠!?
と、作者は思うのです。




