98 異常
◯ 98 異常
まずはレイとアイリージュデットさんとガリルとで、ピンポイントでダンジョンの周りのエネルギーをここ千年分くらいのデータと比べて異常にふくれあがっている場所を調べた。そこを重点的に専門の死神達に探ってもらい、術の有る無しを見て貰った。
ギダ隊とマリーさんとチャーリー、リーシャンそして死神の精鋭が吸血ワームのいる第十九フィールドの密林のダンジョンの捜索をして術の全貌が明らかになった。
より強力な悪魔を召喚する為の術だった。ヘラザリーンの無惨な姿があったらしい。術の中心で繋がれて生け贄とされていて、周りにも悪神と邪神が五柱、同じ様に生け贄にされてたみたいだ。ヘラザリーンの部下達なのか、全員吸血鬼の体をベースにしていたらしい。
あの吸血ワームの異常繁殖は彼らのせいかもしれない。
「みかんの中間界があるせいで地獄との繋がりが薄くなってるから、術の効果と残っている瘴気の高まりだけであんな事になってたみたいだね。それでもあれがフィールド全体に行き渡っていたら、また地獄と繋がってた可能性は否定出来ないよ」
「あのフィールド全体がダンジョン化よ〜」
「危なかったんだね? 実際外に魔物が出て行ってたし」
確かに弱い魔物はダンジョンの外にも溢れていた。
「今まで浄化されてた分よりもあのダンジョン内の瘴気の方が多く集まってたよ。本当はダンジョン内の気を術の中心に集めるものだったんだけど、それが外にも過剰に集まりすぎて術が一部壊れてたと報告が来てる。それでダンジョン内全体に影響が出たんだよ。術の力よりも周りのエネルギーが集まりすぎたんだ。あの術を張った悪魔の力を超えたって事だね」
「危なかったのよ。あれが一気に壊れてたら、エルフの里なんてあっという間に消えてなくなってたのよ〜」
それでも力のある悪魔なら何もかも飛び越えて来る可能性もあるみたいだ。結局そんな仕掛が更に三つも見つかった。地底の洞窟ダンジョンにあった単体での仕掛は、自分達で見つけるしかない。嫌な報告を次々と聞き、胃痛と闘いながらアストリューに戻った。
「胃潰瘍です。しばらく安静ですよ、アキさん」
メレディーナさんの診断が下った。
「はい」
「聞きましたよ。事前に抑えれたのは良かったのです。前を向いて良い世界に変えれば良いのですよ」
メレディーナさんの優しい言葉に泣きそうになりながら返事をした。
「はい」
「アキさんが見つけた術は他の場所でも見つかっているのです。ダンジョンを抱えている世界は今、必死になってますよ。ブランダ商会との縁を切る世界も増えてます。悪神は受け入れれても、地獄の住人である悪魔までは受け入れられないという神は多いですから。地獄の向こうからの使者は相容れないと分かっているのです」
「……ブランダ商会は無くなるの?」
「近いうちには破綻ではと囁かれてます。これまでの悪事の数々が異世界間管理組合でも問題になっていて、全ての契約の見直しをしていっています。暫くすれば自然と消えるでしょう。他の団体もこの情報は出回っていますからね。それも冥界経由です。広まりは早いでしょう」
真剣な顔で説明をしてくれたメレディーナさんも、その結末を期待しているみたいな感じだった。
独自の冥界を持っている場所でも死神の組合とはどうしたって縁が切れない。それだけ情報の集まる場所だから必ず連絡は取っている。うちの管理組合も問い合わせが多くてこの情報の対応が間に合ってないくらいみたいだ。
「良かった。あの世界を作ったところが無くなるんだね……」
「ええ。再生が早まりますよ」
「良かった。また死神の組合のマイナスポイントが増えたから、どうしようかと思った」
「まあ。それが原因ですの?」
頬を膨らませて拗ねていたら、メレディーナさんはおかしそうに笑っている。
「だって、倍に増えるんだよ。おかしいよ……」
今回はそこまで深刻だなんて思ってなかったから心構えが無かったし。後から後から報告が来る度に……。
「専門のスタッフは確かに高いですからね……ですが情報提供のおかげで早く見つかっているのです。多分その分は返済がされるはず……請求しておくと良いですよ」
「本当に? 良かった」
今度のランクアップの試験はこっちの借金の恐怖を送ってみよう。あの吸血ワームよりも日本なら効きそうな気がする。そんな事を考えながら僕は静かに眠った。
静養している間にガリェンツリーのダンジョンは、正常な働きをする場所になった。密林のダンジョンは上級者どころかランクSパーティーのみ推奨の特別危険ダンジョンになった。吸血ワームは相変わらず何処でも出るし、術の中に溜め込んでた邪気やら陰の気は徐々にダンジョン内に放出していく様に変更された。変な石のオブジェが生け贄の悪神達のいた場所に建てられて代わりを果たしている。
そんな感じに変更されたダンジョン五つは頑張って浄化をしていかないとダメな場所になった。
「時々、チャーリー達と奥に行って異常が無いか見るんだね?」
「まあ、頑張ってね?」
レイにチョッピリ同情的な眼差しを受けつつ頷いた。仕方ない。
「結局、スフォラのその体はまだ強化出来ないのか……」
残念そうなマシュさんが僕を見ている。ダンジョンに入るのならスフォラの中でないと僕には難しい。
「ガレを強化したら?」
「その手があったな」
マシュさんは楽しげにどこかに行ってしまった。




