97 名残
◯ 97 名残
「何があったのかなぁ?」
ジュニーさんは首を傾げている。
「さあな、ギルド連中までも困惑してるみたいだな。あの張り紙のせいだよな?」
ルルさんはそう推理したらしい。
「天門の仕様変更ってどう言うことか、何処かの騎士に詰め寄られておりました」
カジュラは第六フィールドの冒険者ギルドでの一幕を見たらしい。
「神樹の僕のいる第六フィールドは見張られてるのか?」
「そりゃそうだろ。冒険者ギルドは貴族連中に逆らうのも怖いし、冒険者の暴動も怖い。板挟みで悩んでそうだな。それに神樹の通告には逆らえないだろ?」
「人族の貴族連中の力がどんどん削がれているのは良い事だ。奴隷も人族より他種族が多いのは本当に腹が立つからな」
「待遇が違ってたらしいし」
皆の噂話は最近の出来事だ。確かに埋めた奴隷達の比率はそうだったかもしれない。働き手は消えて収入も減って奴隷商人は逃げて、今回のポーション類の出費は痛かったと思う。僕達が大量に買ったと言っても高が知れている。
「今回も入口からキングゴリラとは、ご丁寧にこいつらも待機していたのか恐れ入る」
さっきからまた吸血ワームに追いかけられながらクーノスさんは愚痴をこぼしている。今回は前の場所よりも更に奥に進む予定だ。
冒険者ギルドには危険を知らせているので推奨ランクが引き上げられている。上級者用に切り替わったここは随分やばい。ダンジョンから出た魔物達も多いし、周りの森も危険地域に変わっている。
「前回はアキちゃんが眠らせてたのかもしれないわね〜」
「あり得るなっ、と」
吸血ワームとの追いかけっこをしながらどんどん進んで行くが、全く減る事の無い吸血ワームに嫌気がさしてくる。
「何となくこの吸血ワームはダンジョン内の地面にずっといる気がしてきた」
「アキちゃんの勘?」
「うん」
「もう少し行けば岩場だ」
「分かったわ〜」
岩場には先客がいた。冒険者ギルドからの調査依頼で来たパーティー五人で、一週間もここに足止めされていて限界だったみたいだ。
癒しのクッキーと霊泉水を五人に配った。ルルさんが涎を垂らしながらクッキーを睨んでいる。一人は足の骨が折れているのでマリーさんが背負って全員でダンジョン内を逆戻りする事になった。しっかりと光の包帯で応急処置はしたし、治療魔法も掛けたし後は日にち薬だ。
「食料はなんとかいけるがポーション類が足りなくてな。済まない」
「貴族連中が買い占めてたせいだ。気にするな、値崩れを起こしてるから大量に持ってきてるぞ、しっかりこれで回復させとけ。出口までは走りっぱなしだ」
ルルさんの言葉に怪我をした人が頷いている。
「何かあったのか?」
調査隊のリーダーらしき人が聞いてきた。
「ああ。何か企んでたけど、天門の仕様が変わってから貴族達はポーション類を手放したんだ」
「そんな事が?!」
向こうではそんな話がされている間に、僕はマリーさんに言われてダンジョン内に感覚を広げての気の流れを追った。濃い瘴気の流れと澱みから溢れてくる異常な陰の気を感じた。
「何かの術がある気がする。何となく星形の線になってる気がするんだけど」
引っかかったのは二つのとんがり部分と中心の五角形の一部だ。
「そう、悪魔でも住んでそうね。死神とギダ隊に討伐に向かわせるわ」
「うん。出た方が良いね。何か分かんないけど変な術が完成したらやばそうだし」
「まだ未完成ね?」
「何か良く分かんないけど中心に集めてから漏れてる? 中心はあっちの奥の方だよ」
未完成と思ったら何か違う気がしてきた。
「討伐隊を依頼しに帰りましょ」
そんな訳で僕達はダンジョンを後にした。結局また一泊で戻って来た。鉱山のダンジョンにもマリーさんともう一度いく事にした。カジュラがコカトリスが多いと言っていたのを思い出したからだ。
前回カジュラと向かって金色のゴーレムがいた場所にて集中している。
「どう?」
「うん。薄らとあるよ」
なるべく分かり易い様に気の流れをスフォラ経由で映像化して渡した。
「便利ね〜。広範囲に分かるとこういう時に助かるのよ〜」
「ベールを広げるのと似てるから」
「良い事よ〜。たっぷり集中しないとダメだから戦闘中は無理ね」
「そんな事が出来る人いるの?」
「そうね〜、死神の組合に一人いたわよ?」
「へえ、そうなんだ」
「死神達とも縁が出来たからあたし達はすごく助かってるのよ〜? 戦闘員だけじゃなくて組合にも貢献しているわ。あたし達からしたらアキちゃんの評価は高いのよ〜」
「そう言ってもらうと嬉しいよ」
照れるし。
「念のために他のダンジョンも片っ端からやるわよ!」
マリーさんの気合いとともに第六フィールドの地底の洞窟のダンジョンに向かった。リーシャンと待ち合わせていたので一緒に潜っている。
「そう言えば牛人間が奥にいるとかって噂がここにはあったよ?」
「牛人間〜?」
「ミノタウロスとかかな?」
そんなモンスターいたかな?
「ん〜? 悪魔にでもあったのかしら〜」
「さあ? 蟻の巣とは違う方向でワームの巣のずっと奥だって聞いたよ?」
食料もたっぷりあるのでそこまで向かう事になった。またしても巨大蜘蛛やら芋虫やらと戦いながら巨大ワームの巣らしき場所に着いた。うじゃうじゃとダンジョン内の広場を埋め尽くしている。
「いや〜ん。殲滅よぉ」
「そうですね。大量に魔核が手に入りますね」
マリーさんとリーシャンは次々と巨大ワームを真っ二つにしていった。僕は魔核を拾うのに大変な目に遭った。千個程拾った魔核は浄化もせずにそのまま袋に入れて魔法のカバンに入れた。これを浄化するのか……。キリムにも手伝ってもらおう。
「一泊したくらいにはその伝説の場所には着くかしら?」
「ペースが早いから着くかも」
「アキちゃんがマスクをする程の瘴気になってるのも頷けるわ〜」
「マリーさんも付けると良いよ」
マリーさんとリーシャンにマスクを渡した。しばらく進んで更に瘴気が濃くなってきた。気を探ったけれど他の場所とは違って術の規模が小さい。このさきの部分だけが濃く蠢いている。
「アキちゃんはベールを被って、スフォラからは出ないで」
邪気というか陰の気と言うかなんか嫌な雰囲気だ。ベールを二重にしておいた。
「分かった」
「…………悪趣味も極まれりね〜」
更に進んだ場所にそれはあった。バイキング帽子みたいなのを被った骸骨が鎖につながれていた。
「これって?」
「多分なんだけど、悪神の魂魄を無理に悪魔と一体化させる為のものよ。悪魔召喚の一種ね。あれだけ悪魔がいた理由が良く分かったわ〜」
マリーさんの説明で地獄と繋がってた頃の名残だと分かった。悪魔がこっちに存在する為に捧げられた生け贄なのだとか。死神に連絡をして引き取ってもらう事になった。
「まだアキちゃんにはあれの処理は無理ね。あたしにだって聞いた事があるだけの良く分かんない術だもの〜」
僕達は来た道を戻って死神達を呼んだ。ダンジョン内の悪魔達の置き土産が取り除かれた。他の場所の捜索もプロに任せて僕は神界で報告を待った。




