93 治療
◯ 93 治療
密林のダンジョンは皆の得意を一人ずつやってみる事から始まった。僕は草木も眠らせるくらいの深ーい眠りの魔法を広範囲に掛けた。一人ずつ起こしていくとスフォラに怒られた。ごめん。一回制限無しでやってみたかったんだ……。
「不気味な程静かだな」
狼の耳を動かしてクーノスさんが進み出した。
「何処まで寝てるか確かめれるよね?」
「そうね〜。魔法の範囲が分かるわね」
マリーさんも慣れたものだ。少し進んで前を歩いていたハイドーリアさんが止まった。
「これは、毒蛾か?」
ハイドーリアさんが足下の蛾を槍で突き刺して目の高さに持ち上げた。
「だな。嫌な魔法だな、昆虫も眠るのか?」
神罰中の元族長が呆れた様に言う。あれ? にらみ合ってたんじゃないの? っていつの間にかマスクを外してるし。
「素材か?」
「毒矢に使える。貰おう」
「そうか」
普通に会話していた。もしかしたら気分が良くなっているのかもしれない。うん、基本は治療だしね。
「さすがアキちゃんね〜。雰囲気が良くなったわ」
マリーさんも気が付いたみたいだ。
「あれはジャガー? うわ、熊が立ったまま寝てるー?」
ジュニーさんが近くで寝ている二匹に魔法で止めを刺しながら進んでいる。
「これは墜落した鷹でしょうか?」
頭から墜落して悲惨な事になっている鳥がいた。カジュラの足下で頭を柔らかな土に突っ込んで、足を痙攣させている。う、ごめん。飛んでて墜落したのか……もっとゆっくり掛ければ良かった。
「お、羽根は無事だな。貰っておこう」
また神罰中の元族長が言った。弓矢の材料に使うらしい。肉も少しは食べれるからと後で解体すると言っている。そのまま進んで魔法の範囲から外れ、森の音が戻って来た。
「やっと範囲から抜けたか。見習いだけはあると言う事か」
足下の毒蛾を拾っている神罰中の元族長は苦笑いしている。
「アキだよ、サティンゼルグラメールさん」
機嫌のいいうちに呼び方を変えてもらおう。
「まだ怒ってるのか? 好きで良いが、神罰中は嫌だ」
「じゃあ、ルルさん。行きますよ」
「いきなりかよ」
何となく、ルルが合いそうだ。呆れているルルさんを置いて皆の後を二人で付いていく。最後はマリーさんが付いて来てくれている。ルルさんはマリーさんと小声で話を始めた。
前の人が何かを見つけたらしい。
「次はオレが行く」
そう言ったかと思ったらクーノスさんは空中にいた。跳躍力というか、すごい勢いで突っ込んで十メートル先の恐竜っぽい生き物の首を持っていた剣で落としていた。高さも三メートル以上はあるのに余裕で飛んでるし。
「成る程、狼なのね〜。夜は?」
マリーさんはクーノスさんと恐竜な生き物の解体を手伝っていた。僕は周りの警戒をルルさんとやっている。カジュラとジュニーさんは袋の中に解体されたものを入れていっていた。
「見えるし、今日は月夜じゃない」
「そう。変身もするの〜?」
「まあ少しな」
どうやら狼に変身するみたいだ。
「何か来るよ」
「む、来るな……」
目を凝らすと大きなクワガタっぽい甲殻系の巨大な虫が三体現れた。
「今日は多いな」
「そうなの〜? あたしがやっても良いの?」
「そうだな……あ」
気が付いた時には三体のクワガタは解体されていた。
「入れるわよ〜」
「うん」
マリーさんが手を振っているので僕は駆け寄っていれるのを手伝った。
「早っ! 見えたか?」
「いやーん、さっぱりぃ」
「何となくですかね……」
「やるな」
後ろで何か言ってたけど直ぐに一緒に袋に入れてから魔法のカバンに入れていった。ジュニーさんとクーノスさんが警戒している。
「何か初級のダンジョンなのに、やたらと中層の魔物が出るのね」
ジュニーさんが何か警戒している。
「何かおかしいな」
ルルさんも首を傾げている。
「そうなの〜?」
マリーさんと僕には何が違うのかが分かってない。ここの常識を知らないからだ。
「あんたはダンジョンに入らないのか?」
クーノスさんがマリーさんに聞いている。
「入ってるわよ〜。違う所でね」
「普通じゃダメな所だ。変態でないとダメと悟った」
ハイドーリアさんが目を逸らしてこっそりと溜息を付いた。
「そうなの? 個性的なだけだと思ってた」
みかんの中間界に来るお客はそんな感じだ。
「お前もおかしい」
そうかな、いやそんなにはおかしくないはず。
「アキちゃんはまともよ〜」
「害はないが、あの連中と付き合える時点でおかしい」
「そこなの?」
ショックだ。
「ハイドーリアはそこからダメなのね〜。そんなの慣れよ〜」




