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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
えさのかち
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9 一番

 ◯ 9 一番


「それで、これは推測だが、フォーニが君の記事を消すのを頼んだのは審判候補と見ている」


 入れ替えたお茶を飲みながら、話は続いた。


「消す事が出来るんですか?」


「新人のコミュニティーは狭いし、経験の為に新人に普段は任せる事が多い。消したりする場合は上の許可が必要だし、魔力紋やキーワードが揃わないと出来ない仕組みだ。それにも簡易の尋問くらいは本人にする必要がある。その手続き無しに勝手に記事を消したのなら問題だ。悪用しているし何か取引があったか脅されたかのどちらかだろう」


 穏やかじゃない話が出てきた。


「脅しですか?」


「あの助長ぶりからして、一番可能性がある。犯人の捜査は続いている」


 僕の裁判はこの犯人が見つかってからみたいだ。利用されたのなら心配だ。


「そうですか」


「殺人未遂も二度目となると、神格を持つものに裁判は移行される」


 董佳様と同じ力かな?


「見るだけで過去のすべてが流れて見えるっていう、あれですか?」


「色々だよ。時空を超えて真偽が行える者が付く。誰かその力を持つ知り合いがいるのかい?」


「あ、はい。地球の人です」


「過去視の能力か。犯罪者の過去を全て見るのも辛いね」


「そうですね」


 全ての人の過去を見るとかそんな事は董佳様はやらないけど、必要な仕事には遠慮無く見てるみたいだ。それに言葉の真偽も感じるみたいだし、思考も読める。能力はかなり高いと怜佳さんが心配そうに言っていた。僕じゃ犯罪者の過去に流されて、痛い目を見そうだとレイが横から言っていたから、大変な仕事だと思う。


「知り合いが既にいるなら、私がそれをすると今言っても問題ないね」


「い?」


 そうだったんだ? 知らなかった。……いや、そういえば幹部の人の会議室に入ったりしてたくらいだ、あり得る。今頃気が付いた。


「今回はどちらも要求は受け付けない。そういう裁判だよ」


「はい。また星深零の間に立つんですか?」


「そうなるね。質問に答えるだけだよ。もしくは黙秘でもかまわないが」


 クスクスと笑いながらいわれた。


「事件があったんだから立たないとダメだよね?」


 確認するように諭された。


「う、そうですね」


「悪神や、邪神の絡みだと立たなくても良いが、相手は君と同じ組合の者だ」


 思い切り指摘されたが、確かにそうだ。面倒くさがってたらダメだ。これは僕の立ち位置を決める為なのかもしれない。組合でのこの事件に関して僕が被害者だという事を、はっきりと決めないと先に進めない。多分そういう事だと思う。


「分かってくれたね?」


「はい」


「それではっきりと決まったら、その後だけれどフォーニの名前が犯罪者として出ることになる。二度目だし、反省もないし……反省出来ない危険人物として周りに知らされる事になる。端末に、近寄ったら警告音とともに犯罪者の印が出る」


「そんな事になるんですか?」


「真偽の区画での犯罪だったし、精神に異常という程錯乱してもいない。かなり自己欺瞞の傾向が強い人物だとは思うけれど、普通の生活には問題がある訳でもない。ちょっと信用に置けない人と言った感じだ。君の前だとあの映像の通りに狂ってるとしかいえない反応をしているけどね」


 余程自分の中の歪みを突つかれるのだろう、と僕を見ながらまたリシィタンドさんは笑った。


「何か僕がすごく悪い人に聞こえる……」


「確かにね。彼からすればすごく憎しみを掻き立てられる人だね。その増悪は自分に向けているものだと彼が気が付けないのは残念だ」


 どうやら、同じ意見のようだ。


「はい。気が付いたら終わりですね。受け止めれる程に精神が強ければ、こんな事になってないですから」


 少し楽しそうに笑って、


「彼の弱さをどう思う?」


 と、聞かれた。難しい質問だ。


「記憶を無意識に改ざんするのは、もう一度やり直したいのかもしれませんね」


 変な答えになった。


「克服するには向き合わなければ無理だが、彼の本当の望はそこにあると私も思うよ。罪の償いが終れば全ての環境をまっさらにした場所に置いてみよう。違った結果が出るなら自分の望みに気が付くかもしれない」


 目を閉じたリシィタンドさんは悲しげな表情だった。フォーニの欲を優先する癖が直るような環境は難しい。ただの僕達の希望だ。

 その後、新しい評価制度について聞いた。組合からの評価の中に星深零での発言の信用度が追加されるらしい。フォーニのような忘却と虚偽がベースの人間は星深零からの評価が下がる。

 星深零の審判にはその信用度が公開される。裁判で証人が呼ばれる時にはそれを参考にするみたいだった。裁判を経験した人にはその評価を付けて行くので楽しみにして欲しいといわれた。


「フォーニは裁判に立つのが難しい程の評価になるだろう。それに、これは彼を真偽の区画に住まわしてくれたから実現した制度だ。あんな者に証言をまかされたらこっちも混乱する。その上あの手の人間はしゃしゃり出てこようとするから邪魔で仕方ない。それで君の裁判から評価を付け始めるから、一番乗りだよ」


 おもしろがる表情を浮かべたリシィタンドさんと目が合った。前から考えられていた制度だけれど、実現させるだけの資料がフォーニのおかげで一気に揃ったみたいだ。その点ではフォーニの組合への貢献度は高そうだ。


「えと、僕が最初になるんですか?」


「良い区切りだからね」


 自分の星深零での評価を知りたければ、自分から評価制度の問答を受ける事も可能だった。どうやら裁判の前に新しい制度の為の検査と質問が用意されてるみたいだ。これはちゃんと神格のある審判が評価を付けるので、安心の制度だと説明された。了解しました。トップバッター頑張ります。


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