崩壊編 第7話【Day.2】
「………?」
何だ、これは。ストラップとかではないな。俺の財布には、ストラップなんて付いてない。
気になった俺は、財布を取り出す前にそちらを取り出した。取り出したものは、小さな紙に包まれた物体だった。その紙を外した時、俺は思わずギョッとしてしまった。中に入っていたのは、二つの頭蓋骨のミニチュアだったからだ。
(……何だよ、この気持ち悪いストラップ)
いや、ストラップじゃないな。フックもチェーンもない。そして誰だよ、こんなもんポケットに入れた奴。悪戯にしてはタチが悪すぎる。
……にしてもこのミニチュア、よくできてるなぁ。細かい所まで作り込んであるし、両方とも形が違う……
その時、俺はこの頭蓋骨にデジャブ感を感じた。なーんかこんな形の頭の奴、どっかで見たことあるな。
この、どことなく顎が大きい頭……そこで俺は思った。
まさか多午じゃないよな、と。
そう思ってしまうと、余計にその頭蓋骨が気持ち悪く思えた。
じゃぁ、こっちはどうなんだ。
俺はもう一つの頭蓋骨を指でつまみ、目の側に寄せてまじまじと見る。
井沢の顔を思い出しつつ見て見たが、さっぱり分からない。
井沢の顔は、特徴のない顔だった。しいて挙げるなら眼鏡くらいだが、これは頭蓋骨なのでその特徴は意味を成さない。
その時、頭蓋骨の中から何かが落ちた。幸運にもそれは俺の手の中に落ち、それを拾い上げた時、見なければ良かったと思った。
それは、赤フレームの眼鏡のミニチュアだったのだ。井沢の眼鏡も、確か赤いフレームだった。
つまりこれは、井沢の眼鏡――の、ミニチュア――ということになる。
試しに、頭蓋骨にかけてみた。耳がないのでかからなかったが、井沢の頭にぴったりのサイズだ。
俺の顔は、真っ青になっていた。
俺は頭蓋骨を紙で包み直そうとした。直そうとした、その時だ。その紙にも、何かが書いてある事に気が付いてしまったのだ。
何となく見ない方がいい予感はしていたのだが、それでも俺の目は見てしまった。
そして見た後に残ったのは、後悔ではなく「?」という疑問符だった。
そこには、
「多午雄大 2-3
井沢明宏 1-2」とだけ、記されていた。
これは、あいつらの旧クラスか?俺はそう思ったが、去年は俺は2年3組では無かったし、2年前も1年2組では無かったので、分からなかった。
何となく、騒がしい学校の方角を見たが、多午や井沢や主催者の声を思い出し、一瞬にして目を逸らした。もう、こんな所にいるのも嫌になってきた。早く家に帰ろう。
俺は缶コーヒーを買いたかった事も忘れ、学校の方を見ないようにして駐輪場の自転車に鍵を差し、家に向かってペダルを踏んだ。