崩壊編 第5話【Day.2】
「ではでは、そろそろ本題に入りますか。私は、いわゆる「状況説明キャラ」としてここにやって来ました!主催者なのにね」
……状況説明?それって、RPGとかで必ずいる、設定とかこれからやるべきことを説明するキャラか?
そんな奴が、何でここに。ここはごく普通の中学校の、ごく普通の教室。RPGに必要な、主人公もヒロインもいないじゃないか。
強いて言うなら、戸田が主人公、堂本がヒロインだろうか。
戸田は強い、堂本は可愛い。主人公とヒロインになるには、これ以上にないくらいの逸材だ。
そして比較的個性的な奴がキーパーソンって奴で俺を含むその他のクラスメイトは、「村人1」なんだろうな。
しかし村人らしく話を聞き流すような気には、とてもなれなかった。井沢が破裂して死んだ。そんな死体がある教室で話をしている。そして俺の上着にもダメージがいっている。横田なんかは顔にでもついたのか、必死で擦りむけそうなくらい無言で顔を擦っていた。こうして頭の中だけでも落ち着いてるような風にしていないと、なんか今すぐにでも気が狂ってしまいそうだ。
そしてやはり「状況説明キャラ」が話したことは、とても聞き流せる内容ではなかった。
「えー、まず君達は「ゲーム」に参加してるの」
そいつが最初に発した一言は、これだった。
「このゲームでは、皆様に生き残るために戦ってもらいます。あ、生き残るのは一人だけね」
その瞬間、教室の空気が一気に冷えた。
あまりにもさらっと言ったので聞き流しそうになったが、確かに今、こいつは「生き残るのは一人だけ」と言った。……嘘だ。そんな事、あるはずがない。
「あ、ゲームの進行は止められないよ?止まったら、私が強制的に進めるから」
それは、「適当に相手を選んで殺す」という意味か?……最悪だ。なんだよそんな三流ジェノサイドゲームみたいなシチュエーション。
「なので皆様は、自分の命を懸けて、多いに他人を傷つけ合い、殺し合って下さい!以上!」
それを最後の言葉にして、声はブツリと途切れてしまった。それと同時に、ドアから物音がして、すっと開いた。
俺達は暫く固まっていたが、井沢の死体を思い出し、全員猛スピードで教室から出て、階段を駆け下りる。何人かの荷物が教室に置き去りにされた。
駆け下りている途中、俺は思った。
冗談じゃねぇ。あいつなんかに殺されてたまるか。生き残ってやる。最後まで生き残るのは無理だとしても。死ぬのは怖い。生き永らえてやる。
………たとえ、誰かを傷付けても?