崩壊編 第4話【Day.2】
そのノイズ音で、クラスメイトの殆どが一斉にスピーカーの方角を見た。見ていないのは数人のみだ。
そりゃそうだ。なんせ、このスピーカーからはノイズ音なんて一度も聞いたことがない。
俺は三年間この学校に通ってきたから、間違いない。このスピーカーからノイズ音がするのは、おかしい。
―――――ったく、今日はおかしなことばかり起こる。多午の存在が消滅したことといい、閉じ込められたことといい、スピーカーからあり得ない音がしたことといい。
何でだよ。何が、俺の日常をこんなにも変えてしまったんだよ。
そう思って少し歯を食いしばったとき、今度はスピーカーから声がした。
それは、どことなくくぐもっていて、聞こえ辛かった。けど、それは確かに女の子の声だった。そして、確かにこう言った。
「うるさいなぁ。ちょっと黙ってくれない?」と。
今度はさっきよりはクリアに聞こえ、全員がスピーカーに注目する。井沢も貧乏ゆすりを止めていた。
すると、そのスピーカーから声が続いた。
「よし、全員こっち見てるね?それじゃ―――」
「だ……誰だ、誰だお前」
声の主は井沢だった。あいつにしては勇気のある行動だと俺は感心したが、そんなことはお構いなしにスピーカーは返事をする。
「主催者」
「主催者?」
「そう。主催者。何度も言わせないで」
主催者という単語に首を傾げたのは、俺だけではないはずだ。
「ど……どうして、俺達、こ、こんな、ことに……」
今のセリフは、「主催者」に言ったわけではないようだ。何度も繰り返して言ってるから、間違いなく独り言だ。
「ねぇ君、なんでまだうるさいの?さっき黙ってって言ったよね?話通じないのかな、邪魔だなぁ……そうだ、邪魔なら殺しちゃえばいいんだ。えいっ!」
その瞬間、井沢の体が弾けた。まるで風船のように。
そして、中身の空気――――の代わりに、血や肉や脳が飛び散った。
「―――――――――――っ!」
全員が、あまりのグロさに、声にもならない悲鳴をあげた。中には、嘔吐した奴もいる。俺も吐きそうになったが、なんとか気力で堪えた。
その時、またスピーカーから声がした。
「ほらね、「黙って」って言わなかったのに黙らなかったから、こうなっちゃったんだよ?君達も、黙らなかったらこうなるって――――――覚えておいてね?」