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崩壊編 第16話【Day.3】

……は?何言ってんだこいつ?殺したのはだーれだ、だと?昨日からふざけてるとは思っていたが、人殺しという異常事態で、どうしてここまでふざけられるんだ?こいつはあれか?命を綿埃程度にしか考えてないのか?

そして主催者の言葉は怒髪天状態の戸田の耳にも、どうにかと言うべきか、偶然と言うべきか届いたようで、フリーズしてしまっていた。

『ではここで問題です!死体は今どこにあるでしょう!そして誰の死体でしょう!それを生き残り全員で探してもらいまーす!制限時間は20分!名付けて、『死体かくれんぼ!』相手は動かないから楽勝――――――』

「ふざけんなぁ!さっきから黙って聞いてりゃ――――」

「落ち着け!戸田、お前まで死ぬ気か!」

必死で戸田を引き止める戸田の気持ちはよく分かる。俺だってこの球体を出来るならメッタクソに破壊してやりたい。普通のクラスを異常にしたがる主催者を殺してやりたい。

だが、今は殺せない。戸田が怒りまくってくれたおかげで、却って冷静になれてその結論を出せた。本気で殺したいなら―――――殺せるときに―――――殺さないといけない。でも―――――殺せるのか?

俺は球体と戸田の間に身体を張って立っていたが、不意に戸田が力を抜く。いきなりの事だったので一瞬よろけてしまっている間に、戸田は鞄からルーズリーフを取り出し、地面においてガリガリと書きだし、書き上げた物を俺に渡した。

『みんな さがす ユウもこい』

止める間もなく戸田は道路に置き去りだった戸田の自転車を取りに戻っており、仕方ないので俺も追いかける事にした。

『それじゃ、皆頑張ってねー!』

その声と共に、時間が動き出す。そういやあの居眠り車大丈夫か―――と思ったら、後ろの方で大きな破砕音がして、聞かなかった事にした。



今思うと、携帯を取りに戻っておくべきだったと思う。連絡無しにしらみつぶしに探すって、結構効率悪い。全員にメール送って返事がない奴が消去法で死亡、その方が早かったはずだ。死んだ奴が携帯持ってない奴じゃなければ。制限時間は30分。もたもたしてはいられない。

だが、あの状況でそんな頭が働くはずもなく。というか今も働いてない。

原因は、元野球部の戸田が全力でこぐ自転車に必死でついていってるからだ。もう息が絶え絶えで。

「あっ、難波!」

戸田が歩きながら電話中の難波を呼び止めた。

「あ、うん、ちょっと待ってね。……なぁに、戸田っち?」

難波が電話を保留にし、俺たちに向き直った。

「あの時間停止の後、誰を見かけた?」

ここに来るまでにも石津や村山とかを見かけ、そいつらにも同じように戸田は声をかけていた。だが思ったより情報が集まらない。

「ん~……あの時、私はショーコといっしょだったよ。……つかさ、2人とも汗だくじゃね?」

「あ-……散々自転車漕いだからな」

「何してたの?……もしかして、あの死体かくれんぼ?」

「そうに決まってんだろ」

「ばっかだね-、あたしみたいに携帯使って手分けすればいいのに」

俺が言うに言えなかった事を、難波は実にあっさりと言う。

「知ってる情報を、全部教えてくれ。急いでるんだ」

「えっと、とりあえずまだ死体は――――――――」

「死んでない!!」

戸田がびっくりするような声量で声を荒らげた。周りに通行人がいなくてよかった。

「誰も死んでるわけがない!」

「で……でも、あの主催者は死んだって……」

「嘘に決まってる!……またクラスメイトが死んだなんて、信じられるかよ……!

皆、絶対に生きてる、死ぬはずがない……だからこうやって、全員が生きてるか、聞いてまわってるんだよ……!」

「戸田っち……」

「戸田……」

俺は、誰かが死んだ前提で行動していた自分を反省した。

ししこうやって頭がいい割には時折愚直なまでに他人を信じている所が、堂本とよく似ている。そして、こういう所が実に羨ましい。普通の俺には真似できない。

「そっか……ん、ごめん……それじゃ、ちょっとショーコにも聞いてみるよ、ちょうど電話してたからさ……」

「ああ、頼む」

保留を解除して難波が電話を始める。

「待たせてごめん。……え?マジ?うん…」

難波は電話口を押さえながら、俺達に話しだす。

「あのね、超バッドニュース。今、ショーコから連絡あったんだけどさ……


見つかっちゃったって……、死体」


「えっ!?」

当然、真っ先に驚くのは戸田。俺も直後戸田同様えっ、となる。さっきの戸田の弁論も虚しく、このタイミングでこの報告。主催者がなにかしら仕組んでいるんじゃないか、と一瞬疑ってしまった。

「ちょ、難波、電話代わって」

「だってさ。いい?……いいって、はい」

難波が渡すよりも先に、戸田の手は携帯を引ったくる。そして俺達にも聞こえるように通話をスピーカーモードにした。

「もしもし!どこで見つかったんだ!?本当にうちのクラスの奴なのか!?」

『団地……パトカーとか来てるし、ブルーシート被ってるけど、多分……も転がってるし。誰かまでは、ちょっと……』

「わかった……団地だな?今行く」

戸田は難波に震える手で携帯を返し、

「くそっ!」

地面を踏んだ。

「また……死んだのかよ……!なんで、なんでだよ……!」

戸田が怒りで拳を握り、その拳は震えている。

「畜生……!」

その後無言で俯いて、しばらくすると顔を上げ、自転車に跨がる。

「……団地、向かうぞ。死体が誰か調べるんだ……」

「……分かった」

俺は頷いた。

「待って、あたしも行く。戸田っち、ちょっと2ケツさせて」

今回ばかりは、戸田も2人乗りについてとやかくは言わなかった。


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