崩壊編 第14話【Day.2】
「竜騎ー、財布1号死んじゃったよ」
ネオンと大人の繁華街。そこで涼と合流してからの第一声がそれだった。
俺は昨日の多午の白骨死体の件もあって、ワケ分からないし面倒だから学校に行く気になれず何となく一日中繁華街でその辺の奴とぶらぶらしてたらこの報告だ。
「また死んだのか!?」
「そうなんだって。しかもよりによって財布一号」
涼の言う財布一号ってのは、井沢の事だ。しょっちゅう理由をつけてパシったりしていた。
「しかも破裂して死んだんだよ。俺はコート1枚おじゃんで済んだけど、顔についた奴はダメージでかそうだったなー」
「……おい、状況がさっぱり飲めねぇぞ」
2日連続うちのクラスで人が死んで、昨日は白骨、今日は破裂?何言ってんだこいつ。そして何でそんな事平然と話せるんだ。
「そりゃネタだって思うよなー。けどさ、ガチなんだって」
そして涼は、今日学校で起こった事を話し出す。多午の存在が消滅した事、主催者ってのが現れた事、「ゲーム」の事。
「……ネタだろ?」
「いや、ガチ」
まさか涼がこんな小学生も鼻で笑うような冗談を言うとは思わなかったが、本人がガチだと言い張ってる。
煙草を1本取り出し、火を点けながら考える。
「じゃあ何、あの戸田から転送された萩原のヘンテコメールもマジだったのか?頭蓋骨のミニチュアがうんたら、って」
「多分マジ」
「そこは多分なのかよ」
こいつの目的が分からん。
「とにかく、何かすげー事になってるみたいだな。明日学校行くわ」
学校で何が起こってるのか、気になってしょうがない
「あ、そなの?じゃあ待っとるわ。つか財布一号死んでイライラしてるから、カツアゲしねぇ?」
「お前……さっきあんな話してた割にはなんでそんなケロッとしてるわけ?」
「ギャーギャー騒ぐなんてカッコ悪いじゃん」
「つまり、本当は騒ぎたいけどガマンしてんのか?」
冗談めいて言うと、頭を軽くはたかれる。
「ちげーよ、バーカ。俺はいつも通り行くって事。ほら、あいつとかどう?」
どうと言われて見てみると、そこにはどう見ても繁華街には場違いな白ワンピのガキがいた。明らかに浮いてる。
「あーいういかにも好奇心で来ましたタイプって、意外と金持ってんだよね。しかも弱いし。って事でどう?」
確かにいいかもな、って事で向かおうとすると、別の奴に絡まれていて、そのまま人波に揉まれつつ、路地裏へ消えてしまった。
「……チッ」
「あーあ、今日はとことんついてねーな」
そんな事を喋りながら、俺達はネオンの奥へ消えていく。
「だからマジなんだってば、もとむー!」
「いや、冗談っしょwwwwwwww」
樹里が必死に説明するも、本村は信じない。
そりゃ、いきなり主催者やらゲームやらファンタジーというかオカルトチックな事が起こっても信じられない気持ちは分かるけど。つーかミスドでこんな事で盛り上がるって、他から見たらうちらむっちゃ変な人。
「つかさ、その主催者(笑)の声とか撮ってないのwww?」
撮れるわけねーだろ、と心の中で毒づいた。下手にそんな事して、井沢みたいに殺されたらどうすんだよ。
「ショーコ、何とか言ってやってよー!」
急にこっちにバトンタッチされ、戸惑う。何か言って、と言われても、どうしたらいいか分からない。しかしそんな時、ひらめきの神は舞い降りた。
自分の携帯を開いて、ひらめきが正しいか確認。よし、オッケー。
「いや、もうお前らの話聞き飽きたからさ。たまたま二人が死んだのを利用して、そんな大ホラ―――」
「本村、多午のアド知ってる?」
「多午?……あー、アド交だけしといたような……」
「アド帳見て」
本村はスマホを出し、ロックを解除し、アド帳を開いて、うちらを見る目がマジになる。
「……あれ、お前らいつの間に俺のスマホの多午のアド消したの?手がこんだイタズラ―――」
「は?そもそもうちら、あんたのお高い静脈認識、だっけ?のスマホのロック解けないし」
「多午のアド、あったと思ったんだけどな……」
朝、多午がまったく居なかった事になってるのを思い出して、もしかしたら携帯アドもなかったことになってるんじゃないかって思ったら、ビンゴ。うちの携帯からも、多午のアドレスは消えていた。
本村の目が若干マジになる。
「―――マジで多午の存在消えてんの?嘘じゃなくて?」
「さっきからそう言ってんじゃん。机も、ロッカーも、全部無いの!」
樹里の追い討ちに心の中でGJを送った。
「……明日、ホントに無くなってんのか写メ送ってよ」
「めんどい。学校来い」あっさり一蹴。
その後すっかり形勢逆転した本村にミスド代全部奢らせて、なんかムシャクシャしたから皆でカラオケに行った。勿論本村のおごりで。
途中で渡辺と下村に会って樹里が誘ったけど、断られた。あいつら男だけでむさくないのか?