崩壊編 第13話【Day.2】
『無反応で殺せるって線は、消していいかもな。殺したのは今のとこ2人、てことは犯人も殺人には慣れてないだろ』
『じゃあ、やっぱりあの時居なかった人?確か、宮君、本村君、渡辺君……』
『全員、あの『主催者』とは大違いの奴等ばっかだな』
引きこもり、遊び人、不良だしな。
『声とか喋り方は、放送だったし演技と薬でどうにかなるんじゃない?殺す瞬間に動揺して素が出ないように黙ってれば―――』
「ちょっと待ってくれ。そういや、あの放送どうなってんだ?……って、教室密室にできるような力もあるんだから、放送乗っ取りくらい楽勝かもな」
『多分、そうだと思う』
「あ、あと犯人はかなり残酷な奴だな。殺し方からして。白骨死体と破裂だろ?」
置いていかれそうな気がして、必死でついて行く。頭を使った話は、この2人には敵わない。
「となると、犯人のイメージに一番近いのは―――」
『―――渡辺だな』
非常に言いにくそうに言われる。そりゃあな。
でもあの3人で3択したら、多分渡辺だと思う。
『でも渡辺君、多午君と井沢君と何かあったの?あんまり交流なかったよね……』
「井沢と交流あるのは、寧ろ渡辺の友達の下村だな。しょっちゅう井沢パシってただろ。つかあいつの方が性格は残酷だ」
『それだったら、井沢が殺す側だろ』
うむ、正論だ。
『―――俺、クラスの交流とかは詳しい方だけど、やっぱ渡辺は二人と関係無さそうだよな。まあ、人間関係なんて何があるか分からんが……』
犯行動機に個人的な恨みはありがちだが、これでその線も薄まったか。
『そんな深い所までは、知りようがないね』
「つかさ、容疑者絞りの前にさ、1ついいか?」
『何だ?』
「―――そもそも、どうやってやめさせるんだ?ゲーム」
人殺しが相手なんだ、下手したらこっちが死んでしまう。
『う~ん、やっぱそこが問題なんだよね。せめて人殺しのカラクリが分かったら、止めようがあるんだけど』
『多分人殺しは、前からできたわけじゃないよな。そうだったらこんな時期にやらねーよ、こんな事』
確かに受験の迫った受験生には、これはメンタルに悪すぎる。
『だから、人を殺せるようになった理由とか、殺し方とかが分かれば―――』
「その前に明日、俺達、生きてるよな……?」
『えっ………』
『………』
「………」
一瞬にしてシーンとしてしまい、ちょっとまずい事を言ってしまったと後悔する。そして無言の間が続く。2人の事だ、虚を突かれて返しに困ってるんじゃなくて、無意識に目を逸らしていた現実と向き合ってるんだろう。2人がこんな事を想定していないとは思えない。
『は、萩原君、確かに、昨日と今日と、人、死んでるけど、だからって明日もなんて………』
喋り出しが明らかに動揺してる。やばい、これは地雷を踏んだ。
『……いや、でも確かに重要かもな。これでもし俺達の誰かが明日死んだら、犯人は俺達の会話を傍受できる可能性が高い。傍受なんて最悪の状況だけどな』
戸田の回答は比較的冷静だったので、俺は少し安心した。
「そうなったら、口封じって事で……が犯人ってのも確定だな」
渡辺と言いかけたが、傍受の線を考えて言い淀んだ。
そして明らかに動揺してる堂本を気遣い、とにかく渡辺が今のとこ怪しいって事で、どことなく気まずい雰囲気のまま通話は終了した。