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崩壊編 第11話【Day.2】

時は戻って、井沢君の死んだ日。いつもみたいに、私、早苗ちゃん、華ちゃん、彩ちゃんの4人で帰っていた。いつもだったら仲良くお喋りしながら帰るんだけど、今日はとてもそんな気分にはなれなかった。ただ無言で気まずい空気の中、義務のように足を前へ進め続ける。

耐え切れずに色々関係ない事を考えて頭の中へ逃げようとするけど、そうすると今度は多午君と井沢君の事が頭をよぎって、もうどうにもならなくて逃げ場がない。

(主催者・・・一体、何者なの?)

あんなに簡単に、あり得ない方法で人を殺せて、ゲームとかなんだか言い出して、そして生き残るのは1人って、互いに傷つけ合って殺してって―――

(そんなの―――絶対に、駄目だよ・・・)

駄目とかそういう次元で進んでる話じゃないのは分かってるけど、そう言わざるを得なかった。絶望的な状況に反抗する言葉が欲しかった。

どうすれば、どうすればいいの?どうしてこんな事になっちゃったの?井沢君も多午君ももういない。特に多午君は、存在そのものが消えちゃった。状況からして、多午君もあの「主催者」が殺したんだ。人は一晩で白骨死体になんかならないし。

子供の笑い声が、耳に入る。上機嫌な笑い声で聞いてるこっちも和む、と普段なら思っていた。

だけど今日は主催者の声になんとなく似てる気がするその声がただただ場違いで、でも笑えるって事が羨ましくて地面に向けてた視線を子供に少し移すと、子供は親と片手を繋ぎ、もう片手には風船を持っていた。

(風船―――)


『そうだ、邪魔なら殺しちゃえばいいんだ―――えいっ!』


あのときの、井沢君も、風船みたいに、身体が、弾けて、


「―――――っ!!」

さっきの光景がフラッシュバックして、足がすくんで、視界が霞んで、とうとうその場にしゃがみ込む。

「――!?大丈夫、美琴ちん!」

一瞬遅れて、早苗ちゃんが一番に私の異常に気づく。すぐに私の正面にまわって、顔色を確認してくれた。

「美琴ちん―――どうしたの、いきなり―――大丈夫?」

「早苗ちゃん、多分、あれ―――」

私が動けなくなった原因を、華ちゃんは一番に察してくれた。華ちゃんの視線の先には、心配そうな顔でこちらを見てる親子。

「―――美琴、立てる?大丈夫?それともひとまず水でも飲む?」

彩ちゃんが、自分のペットボトルを差し出してくれて、「ありがとう」と小さく言って震える手で受け取ろうとすると、彩ちゃんはそれの蓋を開けて口元に宛がってくれた。

二口分くらい冷たい水が喉を通り過ぎたあたりで、大分落ち着きを取り戻し、ゆっくりと立ち上がる。友達がこんなにも優しいことに、涙が零れてきて、それをまた心配してくれる。

(そうだよ―――怖がってる場合じゃない)

早苗ちゃんも、華ちゃんも、彩ちゃんも怖いに決まってる。でも、こうして私を気遣ってくれる。

なら、私も応えなくちゃ。だって―――友達だもん。

とりあえず、帰って休もう。まだ色々とショックが大きすぎる。それから頭を整頓して、頑張るのは、そこから。


私、瀬方志乃は、凪と一緒に帰っていた。

私は凪と付き合ってる。クラスのおしどりカップルって言われるくらい仲がいい。だから帰る時も一緒で、普段なら他愛ない話をしながら家まで送ってもらうんだけど、とても会話なんてできる気分じゃなかった。

「志乃」

そんな静寂を打ち破ったのは、凪。

「大丈夫?その―――あんなの、間近で見ちゃって」

真っ先に私を心配する言葉を言ってくれて、嬉しい。

「うん、大丈夫―――凪は?」

「僕も、大丈夫。君に心配かけるわけには、いかないからね」

分かってる、お互い結構無理してるって。でもこうやって強がれる相手がいることで、本当に強くなれる気がした。

「あの声の人、ゲームとかわけ分からない事言ってたけど、あんなの嘘だよね?」

「嘘であってほしいよ。でないと―――」

そこまで言って、凪は私を抱き締める。

「僕、志乃がいなくなったら、嫌だ」

「私も。凪がいなくなったら嫌」

歩道のど真ん中で、私達は暫く抱き締めあっていた。

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