崩壊編 第8話【Day.2】
俺は家に帰り、携帯を開いた。とりあえずクラスの奴に、多午と井沢の旧クラスについて聞いてみるか。
33人もいれば(今は31人だが)、一人くらいは分かるだろ。メールの「一斉送信」と「転送」は、実に便利だ。
俺がこの謎物体について書いたメールを堂本と戸田に送れば、あの二人は友達が多いから間違いなくクラス全員に届くであろう。
クラス全員にメールを送るのは、せいぜい学園祭の時ぐらいだと思っていたが、こんな事で送ることになるとは、予想だにしていなかった。メール作成画面を開き、俺は文章を打ち込み始めた。
宛先:堂本美琴,戸田茂
題名:分かる奴いねぇか?
本文:
『今日、俺のポケットに変な物が入ってたんだ。
頭蓋骨のミニチュアとそれを包んでいた紙なんだけど、文章で打つより写真を添付して見せた方が早いから――――』
そこまで書き、俺は一旦内容を保存し、カメラモードに切り替えた。頭蓋骨と紙を机の上に並べ、カメラを向ける。
液晶を見てカメラの真ん中に収めようとした時、俺はおかしい事に気が付いた。
――――――カメラに、何一つ写っていない。
写っているのは周りの物だけで、肝心の写したい物が映っていない。いや、正確には、黒いもやとして映っている、と言った方が正しいだろうか。頭蓋骨も紙も、黒いもやとして映っているのだ。これでは、何なのかがさっぱり分からない。
俺は色々な方法を試したが、何をやってもまったくもって映らなかった。
絵に描いてそれを撮ろうかとも考えたが、俺の画力でそれができるわけがない。「何これ」というメールがあちこちから来るだけだ。
仕方ないので、俺はメール作成画面に戻した。
『写真を添付して見せた方が早い――――と言いたい所だけど、何故かカメラに写らないんだ。
だから、特徴を文章で伝えるしかないんだ。』
俺は国語の成績は中の中だったが、この際そんな事は言っていられない。俺は携帯を両手で握り、打ち込みを始めた。
『――――って感じだから、この内容が分かる奴、それか心当たりのある奴は、俺に連絡して欲しいんだ。
俺のアドレスは、――――――――――。
堂本はこれを女子全員に、戸田はこれを男子全員に転送して欲しいんだ。
携帯を持っていない奴には、そいつの友達が電話して、特徴を伝えて欲しい。
一応、明日学校に現物持ってくから。』
ここまで入力して、俺は『送信』を押した。
ケータイを見てじっと待っていると、15分程で大量のメールが押し寄せてきた。
『写真に写らないって、どういう事?』
『頭蓋骨が二人の頭の形そっくりって、本当!?』
中には直接関係ないものもあったが、とりあえず手掛かりになるものを探すために全てのメールに目を通すことにした。
一通り読むと、何通か注目するメールがあった。
文章はどれも若干違っていたが、書いてある内容は同じだった。
『多午は2年3組じゃない』
『井沢は1年2組じゃない』
……何てこった。手掛かりを探すどころか、ますます混乱する事になるなんて。旧クラスじゃないなら、この数字は一体何なんだ。
これ以上混乱するのが嫌だったので、俺は携帯の電源を切り、閉じた。結論の「け」の字すらも、見出せていなかった。