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残暑の川遊び

「……暑い」

「…あちぃなぁ……」


幻想郷は時期的にもうすぐ秋に入るはずだが残暑が厳しく、寺子屋で授業を受けている子ども達は(チルノを除いて)全員バテていた。

そういう僕もこの暑さではいつもの僧服は脱水症状になるので、この前買った甚平を着ている。


「こら!厚紙を団扇に使うな!授業に集中しろ」


慧音さんはというと、今日も素晴らしく元気に授業を進めていた。

……何であの人こんな気温の中汗を一つもかかないのだろうか。


「慧音さん、良いじゃないですか。こんな暑さだと無理もないかと」

「しかしだな。今は授業中だ。ならば授業に集中してもらわないと…」


うーん…慧音さんの教育への執着は素晴らしいけど、今の状況じゃ悪い方向に向かってる。このままだと本当に気分が悪くなる子どもが出るかもしれない。


「慧音さん、確かに授業というものはとても大切な物ですが、それも健康であればこそです。行き過ぎた教育は、時として子ども達に害を与えてしまいますよ」

「なっ私は別に、そこまで…」

「こんな暑い日に一気に知識を詰め込めるのは害ですよ。勉強には休息だって必要です」

「……そうだな。すまない、私もこの暑さに当てられていた様だ」


慧音さんが持っていた本を閉じる。


「皆、これから課外授業だ………川へ向かうぞ!」

「「「やったー!!」」」


子ども達はその一言を聞いた瞬間、先程の気だるさはどこへ行ったのか我先にと川へと向かって行く。慧音さんはそんな子ども達を見て嘆息する。


「…あの元気を普通の授業でも発揮して欲しいものだ……」

「…ハ…ハハハ」


否定出来ないので苦笑する。





「うおー!冷てー!」

「あはは!そらっ!」

「きゃあ!?冷たーい!」


子ども達は一足先に川で水遊びをしていた。

川は人里で井戸と同じ様に飲み水としても使われている程綺麗なので見ているだけでも涼しくなるような気分になる。

僕も少し足でも浸けて涼もうとすると


「とりゃーー!!」

「うわ!?」


後ろから冷たい水をかけられた。油断してた分、余計に冷たく感じる。

勿論犯人は……


「後ろからきしゅうをかける…アタイったらさいきょーね!」


チルノだった。


「チルノ…それは最強とは関係ないと思うよ……」

「えぇ!?」


うん、もう慣れた。


「チルノ、最強なら時と場所を選んで正々堂々正面から向かい合わないと。後ろから襲いかかって相手に勝っても、それは卑怯者と罵られるだけだ」

「うーん…分かった!」


チルノには少し分かりづらかったかもしれない。


「無理して解ろうとしなくて良いよ。…ただ、覚えていて欲しい」


けどいつか。この言葉を理解してくれたら、本当に最強になるかもしれない。


……多分。


「覚えていてくれたら、だけどな」

「………そうですね」


慧音さん、そこは空気を読んで下さい……。



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