命蓮『先生』
寺子屋で慧音に会い、命蓮は自分が蘇った謎のヒントを得る。
しかし、寝るところもお金も無い命蓮は慧音の誘いに快諾し…。
「…はい、じゃあ『七転八起』 この四字熟語の意味がわかる子は手を挙げてね」
「はーい!」
この世界に来て二日目。
僕は寺子屋で子ども達に勉強を教えていた。
昨日早速やることが決まったけど、寝るところもお金も無かったので慧音の誘いに快諾して、ここで教師として働き始めた。
もともと、僧侶は仏門に入ると文字の読み書きが出来るように修業するから、ある程度の知識はあった。
「…よし、正解!」
「よっしゃー!」
紙に書かれた解答に次々と○×をつけていく。
「はーい!!」
ひときわ大きな声でチルノが手を挙げる。
「はいはいっと」
チルノの前に置かれた解答を見る。
『七転八起…チルノAさいきょー』
何故そうなる。
「…えっとね、チルノ。コレは間違いだよ」
「えっ!?」
なるべく分かり易いように説明する。
「七転八起はね、何度倒れても諦めないって意味なんだ」
「ふ〜ん……」
マズい!早速興味を失いかけてる。何とかチルノを食いつかせないと…。
「チルノ。君は最強だよね」
「あたりまえじゃない!」
「じゃあチルノは何度挫けても立ち上がるよね」
「うん!」
「七転八起は何度挫けても、倒れても、立ち上がる…そう言う意味なんだ。つまり最強のチルノにぴったりな言葉なんだ!」
「そうだったのか!?」
ふぅ、良かった。何とか覚えてくれたみたいだ。
ふと一息つくと慧音が教室に入ってきた。
「皆、そろそろ帰る時間だ。準備しなさい」
「「はーい!!」」
皆が準備を終わらせて帰り始める。
「ご苦労だったな。なかなか様になってたぞ」
慧音が労ってくれた。こういった気遣いが嬉しかった。
「ありがとうごさいます!でも大変ですね、教師って…」
今日の忙しさを思い出して苦笑する。
しかし慧音は――
「だが、慣れるととても楽しいぞ!」
そう、慧音は自分も楽しそうな顔で授業をする。
「まだまだ修行が足りないなぁ…」
慧音のようになるにはどれほどの努力と年月が必要だろうか。
今日教えた『七転八起』を思い出して、自分も諦めない事を心の中でそっと誓った。