寺子屋の慧音先生
そんなこんなやっていると、いつの間にか人里に着いていた。
さらに先に進むと二人が一軒の前で止まる。
「ここが慧音先生の寺子屋です」
そういうと扉を開けて二人とも入っていく。命蓮もそれに続いて入っていく。
「慧音先生ー!居ますかー?」
大ちゃんが呼ぶと奥から足音が聞こえた。
「その声は大妖精か。チルノも一緒だな。二人とも遅刻だぞ!」
一人の女性が姿を現す。
なる程、見た目からして頭が良さそうだ。顔も整っていて優しい雰囲気が醸し出されている。
「うん?こちらは…?」
当然こちらに興味を示してきたので、チルノ達が遅刻で怒られないように今までの経緯を話す。
「…なる程、そんなことがあったとは」
「ええ。ですからチルノ達を怒らないであげて下さい」
女性は微笑むと首を振った。
「そうだな。そんな理由があるなら、今回の遅刻は不問としよう」
怒られると思っていたチルノ達はその言葉を聞いて安堵していた。
「君も上がるといい。良ければ相談に乗ろう」
「本当ですか?ありがとうごさいます!」
「いや、困っている人を見過ごせないからな。さぁ、チルノ達は教室に行きなさい」
教室に行く二人にお礼を言う。
「ありがとう。ここまで案内してくれて、とても助かったよ。また会おう」
二人は命蓮に手を振ると奥に消えていった。
「さて、部屋まで案内しよう。着いてきてくれ」
命蓮は頷くと女性が案内してくれた部屋へと入った。
「私はまだ授業があるから、しばらく部屋で待っていてくれ」
女性はそう言い残すと障子を閉めて奥へ行った。
部屋に一人になった命蓮は座布団に座り、これからの事を考える。
「これからどうなるんだろうなぁ…」
まったく知らない世界に急に連れて行かれて多少動揺しているが、それ以上に好奇心が湧いてくる。
チルノ達から聞いた話には、ここには多種多様な妖怪や神が住んでいるらしい。中には人間に友好的な者も多いとか。
かつて姉さんと旅をしていた時を思い出す。
「姉さん…大丈夫だったかな」
ここが自分の居た時代より未来だという事は人里を見てうすうす気付いていた。
建造物や町並みを見ると約百年か、それ以上の時が経っているかもしれない。
姉さんももうこの世には居ないだろう。せめて幸せな人生が送れた事を願うばかりだった。