蠢き 〜白蓮編 2〜
白蓮編の続きになります。
白蓮から発せられた光と魔力の渦が地面を吹き飛ばしながら僕に襲いかかって来る。
まさかここまで力を発揮するとは正直思ってはいなかったが、冷静に考えれば想定内の実力だった。
―――ただ、『記憶』にある彼女はもう少しばかり弱かったはずだが……。
「ままならない、か……そうでなくては面白くないからね」
無防備に光に飲み込まれていく。
文字通り身体が消し飛んでいく。にもかかわらず日蓮の顔は、その様を楽しんでいるかの様な笑顔のままだった――――。
放った魔力が消える。
今まで感じた事の無かった圧力は既に消え、日蓮が立っていた場所は地面を抉られ、山の半分を日蓮ごと消し飛ばしていた。
「…ッハァ…ハァ……」
目眩と吐き気が起こってくる。自身の全魔力を放った行為は魔法使いにとって自殺に等しいものだ。
遂には虚脱感に襲われて地面に座り込んだ。
気を失いそうになるが、まだナズーリン達が向こうで巨人達から助かった者達を守っているかもしれない。
早く助けに行かなければ。
そう思い再び立ち上がり、ナズーリン達の方へ向かって――――。
「……クスクス」
薄く笑う声が響く。
とっさに辺りを見渡すがそれらしい気配も姿も見えず、空耳だろうと結論付けた。
その時だった。
「………………は?」
思わず白蓮は我が目を疑った。
「……さてと、久しぶり。なんてね」
消し飛んだ筈の日蓮が、虚空から一糸纏わぬ姿で『出て来た』のだ。
「いやはや、素晴らしい一撃だったよ。流石だ。並みの妖魔の束なら今の一撃で全て殺せるだろうね」
この場に似合わぬ笑顔と拍手で、尻餅をついている白蓮を称える。
「だけど…残念だよ。アナタじゃ僕に『死を想像させる』事は出来ないよ」
残念だ。と最後に小さく呟くが白蓮は聞いてないようだった。
ずっと日蓮を凝視する。日蓮は首を傾げて自分をよく見ると、ようやく裸だった事に気がついた。
「おっと。そんなに見ないでおくれ。いくら僕でも恥ずかしいよ」
再び虚空から法衣が出現し、日蓮がそれを再び纏う。
だが白蓮はそのような事で日蓮を凝視している訳では無かった。
「……えっ…なんで………」
放心したように小さく呟いたその言葉で日蓮は気付いた。
「なる程。術が解けたのか…」
深くため息をつきながら顔に手を当てる。顔は極力見せたく無かったが………見られたものはしょうがない。
それに、今更知った所でもう遅い。
「良いさ。どうせアナタが次に目を覚ましたら、『全て終わった』後になるのだし…」
その言葉の後、急に白蓮の視界が白く染まっていく。
「これは…?」
「封印だよ。ざっと千年間、アナタを眠らせれるようにね」
何故?と頭ではそう思うが、既に身も心も限界に達している白蓮は封印されるのを待つしか無かった。
「………命蓮……」
今は亡き弟に縋る様に呟く姿を最後に白蓮は封印された。
白蓮が封印されるのを見届ける。だが封印した後も、何故か白蓮が先程までいた場所から目を離せずにいた。
変な感情がこみ上げてくる。それが何なのかはよく分からないが、おそらく『今の自分』には関係のない感情だろう。
―――ならば、『昔の自分』か。
自分の胸の中…魂に向かって問いかける。
例えその魂に意志は無くても、問いかけれずにはいられなかった。
「…悲しいのかな?……命蓮………」
しばらくそのまま佇んでいると、巨人達の怒号が聞こえてくる。どうやら村の妖怪や人間達が持ち直してきたらしい。巨大な雲の妖怪まで見える。巨人より大きな雲の妖怪が、巨人達を吹き飛ばしていた。
確かに、『ただの巨人』達では分が悪い。
「仕方ない、か」
そろそろ全てを終わらせよう。
「今日の僕は、何でか知らないけどむしゃくしゃしてるからね」
妖しくとも神々しい意志を秘めた双眸を再び術で隠して、白蓮という希望を待っていた村人たちに絶望を届けるために―――――――。
待って下さった皆さん。大変お待たせいたしました!!
まさかここまで時間が掛かるとは……。才能云々ではなく速くやろうという努力がないのか僕?
まぁ継続の努力は有りますよ!多分!!
次回から時間軸は戻ります!後、新キャラもやっと登場します。これからの展開をどうしていくか、それを考えるのが大変ですが、また小説を書く楽しみの一つです。なのでもう二週間程待ってkうわなにをするやめt((
な、なるべく早めに投稿しますね!!
では次回予告です!
いつも通り穏やかな日々を過ごす命蓮達。だが、そんな穏やかな日々が、突如現れた一人のおてんば少女に荒らされて……?
では次回をお楽しみに!




