表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/29

冬の妖怪の新難題

某一面ボス回です。

「……くっ!!どうすれば……」


命蓮寺の台所で命蓮は一人額にうっすらと汗を流し、頭を抱えている。


「命蓮…諦めるんだ……こればかりは、明王である俺でも………」


いつからいたのか台所の戸の前に明王が立ち、珍しく命蓮に慈悲の目を向けている。言葉と同じく命蓮に「諦めろ」という思いが伝わってくる。

だが命蓮は納得出来ないとばかりに明王に足も荒く近寄る。


「しかし…!!」

「しかしもかかしも無い。諦めるんだ。なぁに、諦めたって誰もお前を責めはしないさ。それ程の事なんだからな」


力無く近くの椅子に座り込む命蓮は悔しそうに拳を握り締める。

そんな命蓮の肩に明王は手をポンと置き我が子をあやすように静かな声で諭し始めた。


「いいか、命蓮………。俺達は未来に向かって生きていく存在だ。だけどな、俺達はどんなに多くの『道』が在ろうともたった一つしか選べない。……『選ぶしかない』んだ」


命蓮はただ黙ってその言葉の続きを待つ。明王は命蓮の目を見ると再び語り始める。

「そして、『道』が一つしか無ければ……その道を進ませるしか無いんだ………」


そう言い括ると立ち上がって、行こうと催促する。

命蓮も少し目を瞑って覚悟を決めると立ち上がり明王と共に客間へと進んだ。


何故こんなこんな事になってしまったのか。

それは約一時間前までに遡る――――――。



約一時間前。

「ふぅ…今日は一段と寒いなぁ……」


まだ早朝と言える時刻、命蓮はいつも通り早く起きて境内を掃除しようと扉を開けると、目の前に白銀の世界が広がっていた。つまり雪が大量に降り積もっていた。

当然、こんな雪をかき出す気力は無く、早朝の仕事が無くなった命蓮は囲炉裏に火をくべて居間だけでも温かくしようと火種を持って行く。


「…ふあぁ〜……。おはよう、命蓮」

「あれ、明王様?おはようございます。今日は早いですね」


本当に先程起きたのだろう。眠気眼を擦っては欠伸を繰り返している。

うむ、と明王は遅れた返事を返すと降り積もった雪を親の敵を見るような目で睨みつける。


「このクソ忌々しい雪と寒さの所為でな……」

「いや、冬ですから雪と寒さはしょうがないと思いますけど…」


すかさずツッコミを入れるが、明王はそれを無視すると居間へと入っていった。


「ふぅ、やっぱり温かいのが一番だ。冬なんざ無くなりゃ良いのによ」


入るなり囲炉裏へ一直線で向かう明王。まるでこたつに入る猫のごとき俊敏さだった。

そんな情けない明王を見て嘆息する。


「はぁ…。もっと冬を楽しみましょう」

「へーんだ。俺はお前みたいに人間出来てないんだよ!」

「最低でも人間出来てて下さいよ……仮にも五大明王の一人じゃないですか」


そんな事を言っていると急に明王様の顔つきが変わり、鋭い目つきで外…正確には境内の方…を睨んだ。


「どうかしましたか?」


何があったか分からない命蓮は疑問をぶつける。

「……どうやら妖怪が来たようだ」


やれやれ、と言いながらも囲炉裏から立ち上がって、どてらを羽織ると境内へと向かった。

命蓮もどてらを羽織り後を追った。


境内は相変わらず降り積もった雪が辺りを白銀に染めているが、一つだけ変わった所がある。

少女が一人立っていた。

しかもこの極寒と言っても差し支えない程の寒気の中、どう考えても防寒着とは思えない薄着を着ている。

普段なら命蓮が心配して飛び出す所だが、流石に正体は判ったようだ。


「(妖怪ですね…)」

「(ああ……しかも雪女の類かよ…このクソ寒い時によぉ……)」


聞かれないように念話で会話をすると少女が命蓮達に向かって歩いてきた。そして目の前まで来ると、会釈をして微笑を浮かべながら問い掛けてきた。


「ここが命蓮寺で間違い無いかしら?」


どうやら敵意は無く、襲いにここに来た訳では無いようだった。


「ええ。そうですが…」

「そう、良かったわ。今日は相談に来たのだけれど…」


相手が敵意を見せないならどんな妖怪だろうと相談に乗るのが命蓮だ。二つ返事で快諾すると客間へと案内した。


―――――――。


「どうぞ、そこの座布団へ座って下さい」


客間にある座布団の一つに座らせる。あまり緊張させないように部屋には座布団と卓袱台、囲炉裏以外何も無い。


「ありがとう」


だが少女はそんな質素な部屋に目もくれず座る。

そこで命蓮の顔つきが変わった。

ここで部屋をじろじろと眺めたりする人は声では焦っているように言っていても実は心にかなり余裕がある。しかしこの少女は部屋を一瞥すらせずに座布団に座った。つまりかなり切羽詰まった状況だということに他ならない…!


「自己紹介が遅れたわね。私はレティ・ホワイトロック。気付いてると思うけど妖怪よ」


急に自己紹介を始めたので命蓮も簡単に紹介した。


「僕は聖 命蓮と言います。それでこちらが…」

「今はこの命蓮寺の守護神をしているただの明王だ…さてとレティとやら。相談とは一体何だ。とっとと答えてくれ」


普段何もしない明王が今回はやけに積極的だと驚愕した命蓮は“一体何事だ?”と明王の方へと振り向いた。


「…………(ブルブル)」


寒さにかなり凍えている。しかもいつ取り出したのか布団を体に巻いていた。

……あまり他人がいる前ではしてほしくないものだ。


「…ハァ。それよりレティさん、一体相談とは…?」


明王と理由は(大きく)違うが、命蓮も相談の内容を急かす。

「…これは私にとってとても重要なの。口外はしないでほしいわ」

「もちろん。ここでする話は一切外に出しません」


しかも命蓮は今までどんな相談もその頭で解決して来たのだ。たとえ無理難題が来ても解決する自信があった。

その一言と頼りになる雰囲気に少し安心したのか微笑を浮かべるとある衝撃的な相談を持ち掛けてきた。


「どうすれば冬を永遠に続けさせれるのかしら?」


――――――――。


ここで冒頭の部分へ戻る。

とりあえず答えは一つ。「無理」で決定したのでそれを伝えに行く所だ。ただ少しでも気休めになるように次善策は用意したようだ。


「失礼します」


戸を開けて部屋に入る。


「何か思いついたのかしら?」


命蓮の自信の顔を見て期待した顔を見せるレティ。

ええ、と微笑みながら座布団に座ると大きく息を吸い込んで言い放った。


「…冬を永遠に続けさせれる方法は解りませんが……」

「…?」

「…寝て待てば良いのでは?」


静寂が部屋を襲う。

明王は思いもしなかった解答に口をパクパクさせていた。レティも同じ様に目を見開いて驚愕していた。


「オイ命蓮!?そういったボケ役は俺の専売…」

「良いわその案!思いもしなかったもの!!」

「えええ!!?」


命蓮はうんうんと頷いた。


「でしょう!僕もかなりいい案だと思ってたんです!!」


その後は二人楽しく談笑していた。

ただ明王は「それでいいのか二人共!!??」と、また別の驚愕を味わっていた。


レティが帰る頃にはすっかり日も真上に来ていた。既に昼時のようだ。


「じゃあ私は帰るわ。今日はありがとう。楽しかったわ」

「僕もです。また来て下さいね」


お互い気持ち良さげな笑顔で挨拶するとレティは空を飛んで帰った。


「さてと、朝食兼昼食にしますか……あれ?明王様?」


何が食べたいか聞こうと振り向くと明王の姿がいつの間にか消えていた。


「どこに行ったのかな……?」


普段寺から出ることがあまり無いのでどこに行ったのか分からないが、まぁ大丈夫か、と特に気にもせずに台所へと向かった。

今回も読んで下さってありがとうございます!

特に執筆が遅れてすいませんです…。

実は今年、晴れて新卒として入社しました!!

まぁ中小企業ですが、今かなり忙しいようなので僕の方もかなりドタバタしました。

また更新が遅くなると思いますがどうかこのダメ小説に付き合って下さい…。


さて今回はレティが登場しました!実は意外と好きなキャラです。そういえば秋姉妹も好きだな………。

もしかしたら僕、あまりスポットライトが当たらないキャラが好きなのかも……。

まぁそんなことは置いといて……。

次登場したらチルノと一緒に絡ませたいな〜、と思ってます!!また出て来てねレティ!!!


では次回予告です。

命蓮達が話に夢中になっている隙にどこかへと向かった明王。そして向かった先には数人の男たち。

一体どこに向かったのか?そして男たちの正体は……!?


では次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ