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東方風神録 〜命蓮紀行〜 stage 4

東方風神録 〜命蓮紀行〜 stage 4になります。

渓流で知り合ったにとりの案内で命蓮は滝を迂回して進んでいた。

長年山に住んでいるにとりはここがどこだか全て分かるらしい。危ない足場もすぐに教えてくれたから怪我もせずに山を登れた。


「ここがちょうど滝の横になるよ。天狗の数も多いから気をつけてね」


頷く。

ここからは声を出さない様にしないと、白狼天狗という天狗に見つかってしまうということだった。

白狼天狗というのは天狗社会で一番下の天狗と言われていると聞いた事がある。

しかし能力は侮れず、狼の如く鼻や耳が利き、中には千里を見渡せる者もいるとか…。

声を出さないだけでは見つかる可能性はまだ高いけど、それでも少しでも可能性が低くなれば……と思っていた矢先、目の前の崖の先から誰かの気配を感じた。

もしかしたら白狼天狗かも、と極力音を発てずに横を通り過ぎようとする。

がしかし。


パキッ


うっかり落ちていた小枝を思いっきり踏んづけてしまった。


「誰だ!?」


天狗と思われる気配が迫ってくる。


「マズい!」

「はやく逃げ…!」


逃げようとするが時すでに遅し、気配の主は剣を持って切りかかって来ていた。


「しょうがない…!」


そう言って後ろに下がりながら数珠を構えようとするが


「おわっ!?」


木の根に引っかかって転がった。


「えっ?!」


気配の主もまさかここで転ぶとは思わずそのまま命蓮の後ろにあった木に当たった。

舌打ちして再び切りかかろうとするが………。


「…!?ぬっ抜けない!」


剣が木に挟まってしまったようだった。

何度も抜こうとしていたけど、どうやら諦めたようにため息を吐くとこちらに向き直った。

するとにとりがビックリした顔になった。


「椛!椛だったの?!」

「に、にとり!?どうしてここに…?」


どうもこの反応をみる限り、二人とも知り合いのようだ。

そう思いながら二人を見ていると、椛と言われた少女が僕を見て…というか睨みつけた。


「何で人間がこんな所にいる?にとりを連れて何をするつもりだ」


何やら変な誤解をされそうだったので説明しようとするとにとりが大丈夫、と手をあげる。


「命蓮、私が説明するよ。

椛、実はね…」


代わりににとりが彼女に説明してくれた。

向こうもにとりを知っている様なので、静かに聞いてくれた。少し待っていると話が終わったのか近づいてきた。


「人間、お前の事はにとりから聞いた。悪い輩では無いのは認めよう」


ほっと一息吐く。

しかしだが、と続き


「どんな理由があろうとこれ以上先に進ます訳にはいかん。即刻立ち去るがいい」


完全な拒否もくっついて来た。


「理由を聞いても良いかな?」


こちらもタダで引き下がる訳にはいかない。

帰る事は出来ないにしても、何か納得する理由が無い限り、ハイそうですかとは言えない。


「理由だと?普通の人間には危ないし、何より時期が悪い。そもそもこの山に人間が入る事は禁止され…」

「言葉を返させてもらうけど、山の入山禁止は君達が勝手に決めただけだよね?幻想郷の決まりで無いなら従う理由にはならないよ。それに、まがりなりにもこの山をここまで登ってきたんだ。普通の人間じゃあこうはいかないよね」


少女から剣呑な雰囲気が出始める。


「…ならアナタは普通の人間では無く山の決まりにも従わない、と?」


頷いて見せる。


「……そうですか。なら…」


剣が刺さった木まで行くと、今度は木をそのまま切り倒してから剣を取り出した。


「アナタを力尽くにでも追い出してあげます!」


距離を取って剣と盾を構える少女。

命蓮はため息を一つ吐くと数珠を構えてにとりに避難するように促す。


「にとり、危ないから離れてて」

「二人とも…怪我だけはしないでね!」


にとりが離れるのを確認する。


「じゃあ…いくよ」

「いつでもどうぞ」


瞬間、椛が肉薄して剣を振る。

大きな剣だから速さが無いと思っていた命蓮にとってこれはかなりの奇襲だった。

とっさに下がって避けるが、切り返しでさらに追撃してくる椛。

命蓮も反撃に拳を入れようと放つが、慣れているのか殆どが避けられるか、盾で塞がれていた。


「どうしたのです。さっきまでの威勢は嘘ですか?」


剣を振り回しながら挑発してくる。

大きな剣をまるで小枝のように振り回す様は普通の人間が見れば脅威にしかならないだろう。


「いや、ビックリしたよ。まさかここまで速いとは思わなかった」


表情には出さないが、内心命蓮はかなり動揺していた。

見た目がすでに重たそうな大剣を持っているから遅いだろうという甘い認識を遥かに裏切る物だった。

しかし慣れてくるとまるで教科書のように丁寧な剣筋は見切るのにさほど時間はかからなかった。


「くっ!?」


段々見切られている事にイライラし始めた椛は裏をかこうと蹴りを放つが、慣れない分動作が大きくなってしまう。

そしてその動作の大きさだけ隙は大きくなる。


「(しまった!?)」


椛が気付いた時、命蓮は既に構えから動いて肉薄していた。


「ふっ!!」


地面に着いている足を払って椛の態勢を崩すと同時に、左手で椛の右の袖を掴んで引き寄せると関節を極めて地面に押し倒した。


「うぐっ!?」

「一本。これで終わりですよ」


関節を極めていた手を離す。


「…まさか、人間に接近戦で負けるとは……」


関節を極められていた腕の調子を確かめるとゆっくりと立ち上がった。


「…そんなに行きたいなら好きにするといい。ただどうなっても私は知らないからな」

「うん。それは僕の自己責任だからね。覚悟はしているつもりだよ」


フン、と苦笑する椛の顔は何故だか少しだけ清々しい感じだ。


「最近は弾幕ごっことかいうものが主流になって、私が得意な接近戦はもう殆どして来ないからな……久々に、負けはしたが、楽しかった」


そう言って椛は後ろの森へ入っていくが、何かを思い出したように振り返っていた。


「言い忘れていたが、そこから先に天狗はいない。皆、博麗の巫女の迎撃に当たっているからな」

それと、と呟き―――


「そういえば、人間。名前は何だったかな?」

「聖 命蓮。今は人里で寺を開いたんだ。どんな相談でも聞くから、何かあったら来てみて」


ああ、と言い残すと椛は森に消えていった。


「命蓮、大丈夫?」


すぐ側にさっきまで離れていたにとりが寄ってきていた。


「うん。お互い怪我は無しだったよ」


にとりの不安を和らげてあげる。

後は―――


「にとり、神社はもうすぐだから、道案内はここまでで良いよ」


神社から感じる攻撃的な霊力が命蓮の警鐘を鳴らす。

これ以上は危険だと判断したので、にとりに危険が無いように離れさせるのが得策だろう。


「良いのかい?まだ私は行けるけど…」

「いや、大丈夫だよ。それよりも、少しばかり危ないからなるべく離れててね。

ここまで案内してくれてありがとう。また一緒にきゅうりを食べよう!」


そう言い残して命蓮は神社へと向かった。



数分後、大きな湖が見えてきた。

その湖には何故か柱が大量に刺さっていた。


「うーん。色々と不思議な湖だ」


そう思いながら湖を越えようと飛ぼうとすると―――


「其処に居るのは何処の人ぞ」


湖の一際高い柱の上から声をかけられる。

見上げるとそこには、胸に鏡と背に注連縄を背負った影が命蓮を見下ろしていた――――。

今回は文では無く、中ボスの椛が登場しました!

時系列では文は今霊夢とバトッてます。

ここから原作とはちょっと違ってくる……ハズです(もう随分違うとか思ったのは僕だけじゃ無いはず…)。

文も登場させたかったのですが、ここで登場させると誰が霊夢を止めるんだ、となり泣く泣く登場とはなりませんでした……。


最近入社式に向けてスーツ買ったり車買ったりとかなりハードスケジュールです。

県外は辛いw



では次回予告です。


柱が一杯ある湖に着いた命蓮は先に進もうとするがその時、突如上から声をかけられる。

見上げるとそこには胸に鏡、背に注連縄を背負った人がいた。

その正体とは………?


では次回をお楽しみに!

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