小さな小さな異変 〜封印されし白鞘の鬼〜 4
命蓮登場!
流石主人公!!
何か無理矢理な気がするが……うん、気のせい気のせい!!
「ま、間に合った〜」
安心した僕の口から気の抜けた声が出る。
鬼が振り下ろした刀を法力を通した数珠で受け止める。
斬撃は受け止めれたけど、流石は鬼。力が半端ない…っ!!
「凄い馬鹿力だよ、っと!」
更に数珠に法力を通して刀を弾く。
鬼は弾かれた事に驚いてすぐに態勢を整えられなかった。
この隙を命蓮は逃さずに懐に入ると、先ずは右肘打で腹部を抉る。
その肘を軸に裏拳を顔面に浴びせる。
最後に左手に、先程までの動作の合間に溜めた法力を乗せて鬼に掌圧を食らわせる。
「――■■■■■■■!!!」
普通の妖怪なら吹き飛んでもおかしくないその掌圧を耐えると、すかさず反撃してくる。
右薙を避けると、遠心力を得た鬼がそのまま右切り上げを仕掛けてくる。
避けきれない。
数珠を使い刀を止める。
このとき鬼が薄く笑う。
――まずい!
すかさず頭を左に傾ける。
瞬間、鬼の手に握られた白木の鞘が右肩に食い込んだ。
「ッグゥ!!?」
「命蓮!?」
「先生!!」
慧音さんと大ちゃんの心配する声が上がる。
嫌な音が肩から響く。
鬼の力を全力で叩き込まれたんだ。少なくとも骨折はしているだろう。
すぐに距離を取って肩の調子を確かめるが
「……?何で?」
肩は痛みこそあれ、骨折はしていなかった。
あの力で叩き込まれたら普通は無事では済まない筈……。
「!?これは…」
感覚を研ぎ澄ませると、いつのまにか法力が体全体を覆っていた。
おそらく先程の衝撃もこれのおかげで緩和されたのだろう。
諸天善神の加護かも知れない。
僕が内心喜んでいるのと打って変わって鬼の方は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
よほど僕が無傷なのが気に食わないといった様子だ。
雰囲気が変わる。
刀を逆手に持って構えると一呼吸で肉薄してくる。
「うわっ!?」
肉薄された事にも驚くが、そんな余裕は無かった。
先程よりも斬撃の速さが格段に違っていた。
ほとんどを勘を頼りに避け続ける。
だが鬼は更に速く斬って来る。
避けきれないと悟り数珠で防御を図る。
そして左薙の一撃を防ぐと、斬撃は押さえられても力は殺せないため吹き飛ばされて木に激突する。
衝撃で肺の空気が全て持って行かれ、声すら出せない。
だが、先程の刀を受けて一つ分かった事がある。
それはあの鬼には妖力の他にもう一つ力が放出されていた。
その力は僕も良くしる……法力だった。
つまりあの鬼は仏様、または帰依した存在だということだった。
なるほど、と納得する。
なら後は鬼の正体を解明すれば対策を練れる。
角がある、ということは鬼で間違いない。その中でも仏教で神格化したなら夜叉…もしくは羅刹に絞れる。
いや、羅刹であそこまでの力を持った鬼はそういない。
ならば夜叉か。
ここまで来れば刀を持っている時点で、明王と決定づけられる。
今は狂気に捕らわれている為に本来の力を使ってないが、あの斬撃と体力…何よりもあの鬼の法力がどれほどの力を有しているかを伺える。
冷や汗が顔を伝わる。
恐らく明王の中でも更に格上……五大明王の一角、金剛夜叉明王か大威徳夜叉明王のどちらかだろう。
普通ならそんな格上相手にここまで戦える事は無い。
だけど今は正気でないのが幸いして、有り余る力を刀を振るうだけに留められている。
でも、もし―――。
無邪気な子供のようにあの力を放出されたら―――。
「やっぱり正気に戻っていただかないといけないか!!」
持っていた数珠を懐にしまうと同時に先程とは違う数珠を取り出し構えると鬼に走って近付いていく。
自然と法力で脚力を強化し、韋駄天のごとき速さで迫っていた。
「■■■■■■■!!」
当然鬼も刀を振るい迎撃してくる。
刀を受け止めると、今度は数珠を刀に巻き付ける。
「ッ!?」
予想外の行動に鬼は戸惑うが数珠を見ると一変、驚きと恐怖が混ざった顔になる。
「流石ですね。狂気に墜ちて尚『これ』が解りますか。しかし…」
数珠を刀同様、鬼の首や体に巻き付けると力づくで地面に倒そうとする。
先程までの圧倒的な力はどこに行ったのか、鬼はされるがまま地面に倒れた。
鬼は数珠の戒めから逃げようともがくが、数珠はびくともしない。
更にどうやったのか、数珠が大きく伸びて鬼の全身を縛り上げていた。
「反応が遅かった。最も…この『三千大千世界の数珠』から逃げれるとは思いませんが」
三千大千世界。
それは須弥山を中心に、日・月・四天下・四王天・三十三天・夜摩天・兜率天・楽変化天・他化自在天・梵世天等を含んだものを一世界とし、これを千個合わせたものを小千世界、さらに小千世界を千個合わせたものを中千世界、さらに中千世界を千個合わせたものを大千世界、または『三千大千世界』という。
「この『三千大千世界の数珠』は三千大千世界そのものを顕した数珠なのですよ。簡単に言うと……」
少しだけ思案し
「数珠の珠一つを一つの世界とすると……約120兆の世界を今アナタが背負っている事になりますね」
さらっととんでもない事を口にする。
「特に便利なのが、全ての神仏の力を最大限活用できるという点です。三千大千世界は全ての神仏と我々が住まうのですから、この数珠を持つ僕は今や全ての神仏と同等の力を持っています」
淡々と説明をしながら法力で陣を作り上げる。
「ただ唯一の弱点は人間が扱うには余りにも力の消費が激しい事です」
口から血を流しながらも陣を作る作業を止めない。
「ただの人間が持てば一秒保たずに力を根こそぎ奪われて餓死のような状態になります。実際僕もまともに扱える時間は三十秒が限界です」
陣が完成したのか、鬼の周りが光り始める。
「ですのですみませんが明王様、アナタの法力を、アナタを狂気から救う為に、使わせて頂きます……!!」
瞬間、強い光が辺りを包み込み、消えていく。
光が治まると、糸が切れたように倒れ込む。
だが倒れた先は地面ではなく、強く逞しい腕の中だった。
「………明王、様?」
法力をほとんど使い切り、意識が朦朧とするなか力強い声が聞こえる。
「うむ、大儀であった。聖 命蓮。今は疲れを癒すため疾く休むがいい……」
茂みの方から声が聞こえるが何を言っているのかイマイチ聞き取れない。
だがこちらに向かってくる三人を見て無事を確認すると安堵し、命蓮は意識を深い所へと落とした。
チート武器『三千大千世界の数珠』がログインしました!
この小説オリジナルの宝具のような物ですね。
つかうと、全ての神仏=自分←この様な図になります。大は小を兼ねるどころじゃないwww
作った自分が言うのも何ですが…馬鹿げてますねコレ(・・;)
一応一分以内の時間制限付きですが、その間は恐らく幻想郷…いや全世界最強でしょう。
まともな説明はまた今度本文でじっくりと書かせて頂きます!!
ここで次回予告!
さて、狂気に捕らわれ鬼に戻っていた明王を助けた命蓮。
何故明王である彼が狂気に捕らわれたのか、そしてこの明王の正体と命蓮の能力とは……!?
では次回を楽しみにしていて下さい!
(^^)ノシ




