初めての買い物〜衣服とパック〜 ❖本編 第6話の買い物場面の前半
本編『AIと一緒に異世界で薬膳喫茶をオープンしてみました』第6話のヴォルクとの買い物場面です。
プロット段階で、本編に入れたらとんでもなく長くなりそうだったので、買い物部分は短編集に持ってきました。
それでも、思ってた以上に長くなってしまったので、とりあえず、買い物の前半部分です。
「――今度は買い物だな。第3エリアに移動するぞ」
護道救済ギルドの受付から戻ってきたヴォルクさんがそう言った。
第2エリアは公共施設が集まってる場所だけど、第3エリアはどんなところだろう。
買い物に行くわけだし、店が多い場所かな。
そんなことを考えていると、ヴォルクさんから声がかかる。
「行くぞ、ハルヤ。……馬車を利用したいとこだが、ここから第3までは一指もかからねぇ……歩いて行くぞ」
――一指……?
ヴォルクさんの言葉に、なんだろう?と思うが、この世界の常識だったら……と思うと、聞くに聞けない。
店に戻ったら、エルに聞いてみよう。
……エルに聞かないといけないことばかりだな。
エルが居なかったら、この異世界でやっていけるか不安しかない。
……いや、そもそも、エルが居なかったら、異世界に来ることもなかったじゃん。
間違いなく、エルのせいだよな……。
……考えるのやめよ。
「フード、外れねぇように気をつけろよ」と気にかけてくるヴォルクさんの隣に並んで歩く。
フードを被ってたら目立つんじゃないかと思ってたんだけど、俺以外にもちらほらとフードを被っている人が目に付く。
多くはないけど、珍しくもなさそうだ。
少し歩き進むと、大きな通りに出た。
荷馬車が通りの向こう側に一台停まっていて、あとは通りを移動中の馬車が数台と、人通りがそれなりにある。
その通りを突っ切ると、さっきまで居た場所と違い、小さめの店舗や屋台が連なっていた。
大通りに面した店には食材を扱っているところが多いみたいで、野菜や色とりどりの果物らしきものも見える。
「……あ、」
ローズマリーだ……
近づいた店の中に、見慣れたハーブが目についた。
よく見ると、他にもセージやタイムに、ミントと日本人にも馴染みのあるハーブの他に、仕切りのある木箱の中に乾姜や棗、丁子、それに小茴香や大茴香……生薬まで並んでいる。
「ん?ハルヤ、どうかしたか?」
思わず漏れた声に気付いたからか、それとも、ヴォルクさんとの距離が若干空いてしまったからかは分からないが、ヴォルクさんがこちらを見ていた。
少し心配そうな表情をしてる。
ちょっと申し訳ないな……。
ハーブや生薬は気になるけど、今はヴォルクさんに心配掛けないようにしよう。
「何でもないです。……これから、どこに行くんですか?」
出かける前に聞いた話だと、俺の身の回りの物を買いに来たっぽいんだけど、何を買うかは全然聞いてない。
とりあえず、行き先を聞いてみると、ヴォルクさんは俺の方を見て短く答えた。
「古着屋だ」
服は、必要だと思うんだけど、と思ったらやっぱりそうだよな。
ずっと借り物って言うわけにもいかない。
今俺が来ている服も、ヴォルクさんのお孫さんが昔着ていた服らしいんだけど、小さくて着れなくなったから、って。
……俺には少し大きいんだけどね……。
いや、ヴォルクさんもマルダさんも背が高いから、お孫さんもきっと背が高いんだろう。
仕方ない、平均身長が小柄の日本人だもんな……ちょっと悲しいけど。
古着屋にはすぐに着いて、ヴォルクさんが一軒の立派な建物の扉を開けて入る。
俺も続いて店に入ると、中は思っていたよりも広くて、ずっときれいだった。
……なんだか、中世や近世っぽい建物が多いから、もっと乱雑なのを勝手にイメージしてたけど、わりと近代的なのかも。
トイレやお風呂もあって、衛生環境には気を配っている感じがするし。
そうなると、ふと気になったのが、金額だ。
この世界がどうかはわからないけど、古着屋に来るということは、服は基本的に高級品のはず……。
科学や加工技術が進んだ現代地球とは違うんだから。
「……あの……ヴォルクさん、聞きたいことが……」
心配になって、ヴォルクさんに声を掛ける。
「ん?どうかしたか?」
心配事とはもちろんお金のことだ。
「……その……俺、お金を、持ってないん、ですが……」
買い物に来たのに、お金を持っていない事実が恥ずかしくなって、言葉尻は次第に小さくなる。
だけど、こればかりはどうしようもない。
買い物に来ることは、出かける時には知ってはいたが、この異世界に来たのは身一つ。
一文なしだ。
……持ってたところで、使えないのは分かってるけど。
不安になって、思わずヴォルクさんから目を逸らしてしまう。
だって、ヴォルクさんから借りるにしたって、この世界の通貨がどんなのかも、物価すら見当もつかない。
だけど、ヴォルクさんは一つ頷き、しっかりと答えた。
「そう心配するな、ハルヤの金なら俺が必要な分だけ持ってきた」
「え?……俺の、金?」
俺のお金なんてあるはずがないのに、おかしなことを言うヴォルクさんの言葉に首を傾げてしまうのは仕方ないと思う。
ヴォルクさんは、そんな俺の様子を見て、周りを見渡した後、店内の奥へと移動した。
後をついて行くと、人目の付かないことを確認したのか、ヴォルクさんがもう一度周囲をちらりと見ていた。
すると、ヴォルクさんが、昼ごはんを入れていた蓋つきのカゴとは違う――ヴォルクさんのウエストポーチから、巾着をひとつ取り出した。
「――これだ。ゲンが、『もし、孫一人だけで帰ってきた時のために』と俺に渡してきたやつだ」
そう言って、俺に渡そうとしてくれたのだが……
「しまったな。ハルヤにも、ベルトポーチを持たせた方が良かったな。お前の分も作ってもらえるように頼んでおこう」
言いながら、ウエストポーチ……じゃなく、ベルトポーチに巾着を戻すヴォルクさん。
やっぱり、ああいうポーチはわざわざ作ってもらうんだ。
「……ひとつ、確認するが、ハルヤは金を使ったことがあるか?」
ベルトポーチの蓋をしかけていたヴォルクさんの手が止まる。
お金は使い慣れてるけど……きっと、そうじゃないよな。
第一、この世界のお金は見たことすらない。
「……えっと、その……ないです」
この返答がどう転ぶのかは分からないけど、ヴォルクさんがわざわざ確認するくらいだ。
使ったことがないと言っても変じゃないのかもしれない。
「そうか……見たことは……あまりないよな……」
使わないのであれば、見る機会もほとんどない。
そう結論付けたのか、ポーチの蓋をするのをやめて、先ほどの巾着をヴォルクさんはもう一度取り出した。
そして今度は、巾着の紐を緩めて中から数枚コインを取り出した。
ヴォルクさんが見せてくれた掌には、6種類あった。
「……この一番小さくて白っぽいやつが錫貨、こいつが1枚1リーヴァだ。この六角形の穴が開いているのは大錫貨、こいつ1枚が5リーヴァ――」
ヴォルクさんがざっと教えてくれた通貨は、
大錫貨の次が、角銅貨で10リーヴァ、正方形をしている。
長銅貨は50リーヴァで、短冊型。
銅貨は100リーヴァ、正円型。
大銅貨は500リーヴァ、八角形だ。
丸だけじゃなく、様々な形の硬貨と穴が開いた硬貨。
形はともかく……貨幣の基準は日本円と同じように考えられるから、すごく覚えやすい。
「――で、こいつが……」
見せてくれた6種類の硬貨を巾着に戻して、次に取り出した硬貨を見せてくれる。
「角銀貨と長銀貨だ。角銅貨、長銅貨と同じで正方形をしている方が角銀貨、短冊型が長銀貨だ。角銀貨が1,000リーヴァ、長銀貨が5,000リーヴァだ」
角銀貨と長銀貨を巾着に戻したあと、ヴォルクさんは「他にも銀貨と、金貨があるが、金貨なんぞは滅多に使わん」と教えてくれた。
それと、正方形、長方形、それから六角形の大錫貨と八角形の大銅貨は、この国だけで使える国内貨幣で、どれも穴が一つ開いている。
ただ、日本の5円と50円と違って、穴が中央じゃなく端に寄っている。
穴の開いていない正円の貨幣は、グランテラ大陸共通らしい。
「――さて、硬貨の説明もしたし、見て回るか」
ヴォルクさんのその言葉で、店内にある古着を一枚手に取り、広げて見る。
……でかいな……。
どう畳んであったのか気にせずに広げてしまったので、日本の服屋で見るような畳み方をして、木製の棚に戻す。
棚にこの世界の文字が書かれているが、読めないから分からない。
「……あの、ヴォルクさん……服の大きさなんですけど……」
一つ一つ確認するには時間がかかり過ぎる。
困った俺は、同じように服を一枚広げていたヴォルクさんに聞いてみた。
「ああ、そうだな。この辺りはハルヤにはデカそうだ」
頷き、持っていた服をさっとたたみ棚に戻すと、ヴォルクさんが「ついてこい」と言ってきた。
ついて行った先は、お店の人のところだった。
「彼に合うサイズの服を探しているんだが……」
ヴォルクさんが、カウンター内にいる男性に話しかけると、男性は俺の方を見る。
すると、一度頷き、店の入り口から一番遠い角の方を指さす。
「……ああ、だったら、あっちの奥の方にあるよ」
「どうも」
ヴォルクさんが、店員さんが指さした方の奥へと向かっていく。
壁の前に木棚があり、その棚の中には畳んだ服が。
それから棚の前に大きい木箱が数個、台の上にのせてある。
木箱の中は、服なのか、布の山が出来ている。
まるでワゴンセールみたいだ。
となると、こっちの方が、値段は安いはず……。
木箱の山の上にある服を一枚手に取る。
広げた服は、確かにさっきより小さい。
でもまだちょっと大きい。
広げた服を体にあてて大きさを見て、ざっと畳んで、次のを広げる……
それを繰り返して気付いたけど、トップスは薄い色が多くて、ボトムスは色が濃いものが多い。
もちろん、シャツの形で色の濃い物もあったけど、広げたパンツ類は全部がダークカラーだった。
あと、正直驚いたのが、どれも補修の跡がある。
棚にある服は1枚しか見なかったけど、ほつれや当て布はなかった気がするが、この木箱に積まれている服はどれも当て布があったり、どこかしら補修の跡があった。
出来たら棚の方も見たいけど、間違いなくこの山の服より高いはず…。
相場も分からないと買うのも怖い。
「ハルヤ、こっちの方にもあるぞ」
隣の台に置かれていた服の山から、生成りのシンプルなシャツを持っていたヴォルクさんが、俺の背中に服を当てる。
「悪くなさそうだな」
肩の位置と袖口の位置を見ようとしたけど、フードが邪魔をして袖口しか見えなかった。
でも、袖の長さは良さそうだ。
「そうですね。……あの、この服っていくらくらいなんでしょう?」
どれかは買わないといけないんだし、それならさっさと選んでしまおう。
ただ、金額はやっぱり前もって知っておきたいので、ヴォルクさんに聞いてみる。
「そうだな……」
ヴォルクさんは、この服があった服の山の方を見る。
服選びに夢中で気付かなかったが、箱や棚にメモ書きのようなものが貼り付けてあった。
俺には読めない文字だけど……。
もしかしなくても、値段……
「上着1枚1角銀貨と1大銅貨、脚衣1枚2角銀貨、ってあるな。まあこんなもんだろうな」
そう教えてくれるが……
たしか、角銀貨が1,000リーヴァで、大銅貨は500リーヴァ――つまり、端切れで修復されたシャツが1枚 1,500リーヴァで、ズボンが1本 2,000リーヴァ――それが安いのか高いのかが分からない。
ヴォルクさんは、「こんなもん」って言ってるから、この国で適正価格っぽいけど……。
とりあえず、シャツとズボンを2枚ずつ、木箱の山の中から選んで、お店の人が立つカウンターへと向かうと、ヴォルクさんが、さっき見せてくれた巾着から長銀貨1枚と角銀貨2枚を出した。
お店の人には、確認のために選んだ服を見せただけで、ヴォルクさんは服を抱えたままカウンターから離れる。
お店の人も服と硬貨を確認すると「まいど」と言うだけで終わってしまった。
俺は慌てて、ヴォルクさんの後を追い、声をかけた。
「あの、ヴォルクさん。入れる袋とか……」
「ああ、店にパックは置いてねぇぞ。みんな家からカゴやら布を持ってくるんだ――言ってなかったな」
そう言ってヴォルクさんは、持っていた予備の包み布で服を無造作にくるんでしまった。
日本では「マイバッグ」が当たり前になっていたけれど、忘れたら数円でレジ袋が買えたからうっかりしていた。
でも、ここでは忘れたら最後、裸で持ち歩くか、その場で包み布を買うしかないらしい。
「……あ、じゃあ、俺もこれから買い物する時のために、袋……パックを買っておきたいです」
「そうだな。ちょうどこの先に雑貨市場がある、そこなら女たちが作った便利なパックが手に入るぞ」
ヴォルクさんに連れられ、俺たちは雑貨市場へと足を向けた。
様々な雑貨店が並ぶ中、色々な布で出来た様々な形をした袋やカゴがある店の一軒の前に来た。
建物の外側に出してある台の上には、畳まれた正方形の布と、硬貨を入れるのに良さそうな大きさの巾着が置いてある。
畳まれていた布を一枚広げてみると、端処理のしてある正方形で、風呂敷みたいだった。
中に入ると、店先に出してあった商品より大きめのものが多く置かれていた。
想像していたのより種類も多い。
「……結構いろいろあるんですね」
「そうだな」
俺は、さっき買った服を入れるのにちょうど良さそうな、大きめの袋を探すが、なかなか見つからない。
「……ないなー……」
「どんなパックを探してるんだ?」
大きそうな袋かと思って広げてみても、確かに大きめの袋なのだが、ほとんどが巾着だ。
もうちょっと、バッグっぽい形のを探してるんだけど、なかなかないんだよね……。
「……えっと……こんな感じの、もっと大きいのがいいな、って思ってるんですけど……」
ヴォルクさんの問いかけに、さっき見つけたばかりの、持ち手が2本で、巾着型になっていないタイプのパックを手に取って、ヴォルクさんに見せる。
巾着が多い中、埋もれるようにあったオープン型のハンドバッグ――ミニトートだ。
「そういうのか……、たしかに、あまり見ねぇ形だな」
「そうなんですね……」
トートバッグとかレジ袋の形の袋は、エコバッグとして使いやすかったから、こっちでもあるかも……と思ったけど、そんなことはないみたいだ。
というか、大きいものは袋より、カゴが多い気がする。
でも、そのうちハーブとかも買いたいし、このサイズのバッグがあってもいいかな。
とりあえず、買う候補に入れようと、値段をヴォルクさんに聞いてみるために、バッグを見ていた視線を上げて、さっきの古着屋で見かけていたものがないことに気が付いた。
棚や木箱に文字の書いてあるメモらしきものが何も無い……
え?なんで??
「あの、ヴォルクさん、このお店の商品の値段とかって……」
気になって、ヴォルクさんに聞いたら、意外な返答がきた。
「ああ、ここの商品は一つ一つにタグが付けてあるだろ?それを店主に見せて確認するしかねえんだ」
そう言われて、手に持っているミニトートの持ち手の一つに、麻紐で穴の開けてある木のタグが付けられているのに気がついた。
異世界に来るまでは、お店の商品にタグが付いているのが当たり前過ぎて、気にしてなかった。
「そうだったんですね……でも、なんで……?」
「ここにある品のほとんどが、俺等職人じゃなく、女達が家事の合間に作ったもんだ。その作ったもんを、置いてもらう店に直接持ち込むか商人ギルドで買い取ってもらうかしたもんを、こういうところで売ってる。」
――このタグは、誰が作った物かを管理するもんみてえでな、金額もこのタグから店主が確認している。
ヴォルクさんの話を聞いて、改めて手元のバッグや店内の商品を見てみる。
丁寧な作りな物、少し縫い目が粗い物……
シンプルな物から色の組み合わせが独特な物まで、様々。
――家事の合間に……ってことは、ここにあるほとんどの商品が女の人達の内職で作った物……。
昔の人は、女性の内職で家計を支えていたことも多かったみたいだけど、この世界にもこういうのがあるんだな。
それと、買い物用のパックなら、職人が作ったものより、女性が作った物の方が役に立つらしい。
職人のほとんどが男性な分、日頃買い物をしない人が買い物用の商品を作っても、実際に使う人達にとっては使いづらいんだって。
その点、女性達が作った買い物用のパックは、そのほとんどが主婦で、買い物は日常に行っているから、自分が使いやすい物を作っていっている。
その結果、今では買い物のパックと言えば、主婦達が作った品物が並ぶこういう店に来るのが当たり前になった――ということも教えてくれた。
そういえば、日本でも、主婦が考案した商品が大ヒットしたっていうことを、グッズ紹介番組とかで見たことあるな。
消費者目線だからこそ、必要なものが作られているってことかな。
俺はその後、ミニトートのあった辺りの棚を漁ってみた。
そしたら――
「――あった……!」
見つけた!トートバッグ!
しかもA4サイズが入りそうなやつ…!
試しに肩に掛けてみるが……
掛けてしまえば平気だが、掛ける時が若干窮屈。
でも、使えないわけじゃない。
肩に掛けるだけなら平気だけど、片方の持ち手を肩に掛けたままバッグを広げた状態で出し入れする……トートバッグの利点がスムーズに、とはいかない程度。
だけど、この差って、実は結構大きかったりするよな。
他にないなら仕方ないけど、出来れば、もう少し紐が長い方が嬉しい。
「ん?良いのがあったのか?」
トートバッグを肩に掛けて開いたりして確認していると、それに気付いたヴォルクさんが近寄ってきた。
「はい。この紐がもう少し長いと嬉しいんですけど、他には見当たらないので、これにします」
「そうか。なら、それを買って次に行くか?」
「はい」
トートバッグを見つけた売り場を離れ、お店の人がいる会計所に向かう。
小さめのカウンターにおばあさんが一人、座っていた。
「勘定を頼む」
ヴォルクさんが声を掛けると、俺はおばあさんにミニトートとトートバッグを渡した。
おばあさんは、バッグに付いているタグを確認して、数ある革製の装丁の本のようなものを一冊手に取り開くと、タグと見比べている。
――わっ、もしかして、あれって羊皮紙か?
見慣れた薄くて白い紙とは全く違う。
茶色で、厚みがあって、毛羽立ってて端も不揃い。
使いにくそうではあるけれど、如何にもファンタジーにありそうなアイテムに遭遇して、内心テンションが少し上がってしまった。
おばあさんは、目的のページを見つけたのか、商品から外したタグをそこに挟み、2つ目のタグと見比べる。
……これって、かなり大変だよな……。
思わず、店内を見渡して他にお客さんがいないか確認してしまった。
一人、二人いるけれど、その人達はそれぞれめぼしいものを探しているのか、こちらに来る様子はなくて安心する。
「……待たせてすまないねぇ、こっちの大きいパックは2,500リーヴァ、小さい方は1,800リーヴァだよ。買うかい?」
どちらとも、さっきの古着より高いけど、必要な物だし。
何より、中古――しかも明らかに傷みのある物と新品の違いは大きいしね。
そう考えると、高くはないか。
「両方とも買います」
そう返事をすると、ヴォルクさんが硬貨を渡す。
おばあさんと少し会話をしてから、お店から出た。
お店から出る直前、ヴォルクさんから服を預かる時に、ヴォルクさんが「金はどうする?ベルトポーチはまだだが、そのでかいパックに入れるか?」と確認してきたので、自分で持つことを伝えると服と一緒に渡してくれた。
服を包んでくれていた布はヴォルクさんに返して、 買ったばかりのトートバッグに、服と硬貨の入った巾着を入れる。
本当は、巾着の中の硬貨を確認したかったけど、さすがに店の出入り口近くではしづらい。
「ゲンの家……じゃないな、ハルヤの家が整ってそっちに住むようになったら、残りの預かった金も渡そう。今全部渡しても落ち着かんだろうからな」
話しながら店を出るヴォルクさんの言葉に驚き、聞き返す。
「えっ!?お金はこれだけじゃないんですか!?」
すると、ヴォルクさんは困ったような呆れたような表情をする。
「ゲンが、孫の為に残した金がそれだけなはずねぇだろ……まあ、いい、ハルヤ、次行くぞ」
「は、はい!」
硬貨を入れたトートバッグを肩に掛けぎゅっと握り、ヴォルクさんの後を慌ててついて行く。
ただ、次行くって言われても、何を買いに行くか全然聞いてないんだけど――
店から出ると、さっきよりも人が増えてて少し賑わっていた。
……ほんと、なんでこんなに長くなったかなー?
流れをイメージしながら、確定した設定を盛り込もうとする私の悪いところかな……?
買い物も、まだあと半分も残ってるよ、嘘でしょ……。
後半はいつ頃更新できるかは分かりませんが、遅くても、次回の第5木曜日(7月30日)には投稿するつもりでいますので、お楽しみに!




