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ぼくらは七不思議にヒトを視る  作者: 雪車町地蔵
第五章 絶対に満点が取れないテスト問題事件

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第六話 絶対に満点が取れないテスト

「普段ならハルさんの役目だけど、前提を共有しましょう」


 今回だけは特別です、と言って、彼女は端末を操作。

 単語を書き込んでいく。


「まず、問題作成者の教諭。プライバシーを考慮してA先生と呼ぶけど、このひとには以前から、不明瞭なテスト問題を出す、という悪癖があったの」


 A先生

 かねてより不明瞭な問題を作成


 という文字が画面に躍る。

 ぼくはしばし考えて、


「悪癖か。なにか共通点や、発生のトリガーになりそうなことは?」


 と、訊ねる。

 透海さんはこちらをぴしりと指差す。


「ナイスクエスチョン。繁忙期ね」

「忙しい時期になると、テスト問題の質が低下する……」


 なんだか奇妙な話だ。

 高校教師など、年中いつだって忙しいだろう。

 そのなかで繁忙期となれば、中間考査や期末試験ということになる。

 あるいは体育祭などの行事ごとか。


「A先生はどうやって問題の作成を? なにか前例や、共通の参考資料があるのかな?」

「集めた資料によれば、毎年内容は変化するみたい。とくに、ここ2~3年は顕著ね」


 最近、問題の傾向が変化した


 これもまた書き込まれる。

 ここ近年の学園における変化か……。


「最たるものはIT化だろうね。ユビキタス、という言い方は古いにしても、図書室のアーカイブスの整備を筆頭に、最新機器の導入が進んでいる」

「教員が業務で使える端末も、個人用の備品として配備されているぐらいだものね」


 教員個人用PC


「さて、ハルさん。ここまでは先生側の話。ここからは多賀ちゃんの話です」


 どことなく楽しそうにしながら、彼女は続ける。


「大前提、A先生と多賀ちゃんは共犯じゃない。でも、ふたりには試験に前後して、何度か顔を合わせている事実があります」


 あやしくはあるが、確証と呼べるものはなにもない、という状況か。

 難しいなと、左手で顎を撫でようとして、思いとどまる。

 透海さんがバツが悪そうな顔になった。


「その手は、駆け引きだった?」

「落下する君を捕まえる意志がないと示すために折ったのか? という問いかけだとしたら、答えは否だね。それなら躊躇なく右手をやった」

「……ハルさんは、たまに卑怯なことを言う……」


 むずがゆそうな様子で身をよじり。

 「仕切り直し!」と声に出して、彼女は再び端末の操作へと戻る。


「重要なのは、やっぱり絶対に満点を取れないテスト、という部分だと思うの」

「これが仮に怪異でなかった場合、どういう可能性が考えられると、透海さんは思う?」

「おー、ここでもいつもの逆? いいね、今日はあたし、乗り気だから」


 勝ち気な表情を浮かべた彼女は、数秒考え、考えられるケースを列挙する。


「第一に疑うべきは、やっぱりカンニングでしょ。問いかけと答えに因果関係がなくても、採点されるという結果がある限り、テストにおいて答えを覗き見るのは絶対的なアドよ」


 ここでアドバンテージの話をされるとは思っていなかった。

 もしかすると透海近というのは、世の中を闘争だと考えているタイプのファイターなのかも知れない。


「第二に、採点ミスは大いにあり得るかなって。多賀ちゃんは勉強できる方だし、あたしが間違えなかった場所を同じように間違えないことはできるはず。なので、ただ一問だけ、採点サイドにミスがあった」


 採点サイドとは、この場合A先生だ。

 公平性を担保するために採点者と問題作成者が違う学園もあるらしいが、そこまでうちには人件費がない。


「となると、ぼくは採点の方法が気になる。機械的に○×判定を行うタイプか、それとも加点要素や減点要素を採点者が見出すタイプか」

「前者ね。それこそ機械でもできる。だからこそ、解けるわけがない問題だったんだから」


 なるほど、得心いった。

 ならば、三つ目の疑惑は、偶然、だろうか。

 本当にたまたま、一か八かで出した解答が、正当だったパターン。


「そこから発展させるなら、四つ目は問いかけのミスを見抜いて、意図を読み解き、正しい答えを導いた場合。もっとも、そうだとしたら、あたしにはできなかった、ということになるのだけど」


 ややしょんぼりする彼女だったが、即座に「でも、それなら多賀ちゃんもできなかったはず!」などと言い出したので負けん気が強い。

 ナチュラルに相手を下げているあたりが、じつに魔女だ。


「前提を共有したからこそ省いたけれど、A先生と恵留さんが共犯だった可能性も、一応は考慮すべきだとぼくは思う」

「そう考えたいなら、どうぞ。あたしは止める必要性を感じないから」


 含むところがある物言いだ。

 その理由は、次の仮説でわかった。


「さっき、採点は機械的といったけれど、こちらにエラーがあった可能性もあるの。つまり、答えの方が間違っていたのなら、共犯なんて有り得ないし、満点も取れない」


 合点する。

 つまり彼女はぼくに、こう示したいわけだ。

 試験の問題と答えには齟齬(そご)があった。

 その上で、多賀恵留は満点を取っている。

 そしてA先生と共犯ではない。

 ゆえに。


「多賀恵留は、不正をしている?」

「ええ、あたしに勝つために」


 委細承知だ。

 であるならば、考えなければいけない点は、わずか一カ所に限定される。


「A先生は、どのようにして問題と解答を作成したか。それが、この事件を解く鍵だね?」

「よって、あたしはハルさんに一つのお願いをしなければいけないの」


 魔女が。

 七不思議の在・不在証明に挑むものが、告げる。


「A先生の備品PCに、今回のテスト問題を入力してみてくれない?」


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