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ぼくらは七不思議にヒトを視る  作者: 雪車町地蔵
第一章 下駄箱の置き傘すべて盗難事件
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第三話 親友の証言曰く

 ぼくの親友こと茶太郎の証言をまとめると、次のようなことになる。

 彼は名前に反して質実剛健、非常に体付きのしっかりした、胸板が厚い、上腕二頭筋が丸太のように太く肩幅の大きい、礼節を重んじる空手部期待の新人なので、普段は置き傘などしない。

 そもそも、翠城学園では、生徒を目の敵にしているような指導部がおり、これがことあるごとに内申点を削ってやろうと、常になんらかの瑕疵(きず)を探している。


 置き傘は、減点対象の最たる例だ。

 学生からしてみれば些細極まりないことでも、大人のルールによってこれは禁じられている。

 だから、茶太郎も傘を放置などしなかった。


 だが、大型連休が迫った先週のこと、天気がぐずつく日が増えた。

 ただでさえこの時期は、持ち帰る書類や教材の量が増える。

 それでいて、いつ降り出してくるか見当もつかない空模様だ。

 天気予報をあてにする時代は、正直遠く過去のもの。

 毎日傘を持参するのも非効率だと判断した茶太郎は、同じような決断をしたその他大勢と同じく、傘立てに自分の分を放置することにした。

 これが、ある日突然、すべて綺麗さっぱりに消えてしまったのだという。


「ふーん。それでチョーノスケくんは濡れて帰ったんだ?」

「茶太郎だ。彼は運良く、折りたたみ傘を持っていた女生徒に入れてもらい、難を逃れたらしい」

「相合い傘ってこと?」


 なぜか胡乱(うろん)なものを見るような目つきをこちらに向けてくる透海さん。

 確かに状況だけ考えれば、相合い傘と言われても不思議ではない。

 なにせ。


「その時に知り合った女生徒が、いま茶太郎が交際している相手だ。彼は喜んでいたよ。まったく濡れずに済んだし、自分のような無骨者(ぶこつもの)にガールフレンドができるなんてと」

「指導員からなにか言われそうなものだけど? ほら、彼らって生徒が嫌がることを好むから」


 否定しようとしてやめる。

 一定の事実ではあるし、少なくとも透海さんはそう考えているのだから。


「指導はされていないね。近くに見回りはいたそうだけれど、雨に濡れないための緊急避難的な相合い傘だ。これに難癖をつければ、PTAが黙ってはいないだろう」

「不純異性交遊も黙っていないって」

「当人同士が節度を守っていれば、不純ではないよ」

「節度。節度かぁ」


 何事かを思い返すように天井を見遣り、彼女は深くため息を吐く。

 無言の時間。

 窓の外、いつの間にか暗雲が途切れ。

 雲間から、西へ沈みゆく太陽の光が差し込み、彼女の姿を照らし出す。

 黄昏時(たそがれどき)


 或いは――逢魔ヶ時(おうまがどき)

 魔と行き逢う時間帯。


 教室の中が、夕暮れに染まるなかで。

 魔女が、はっきりと告げた。


瞭然(りょうぜん)ね」


 それは、なにが?


「唐傘オバケは存在するのかも知れないけれど――少なくともこの事件は、七不思議でなくても実現可能だと断言できる」


 なぜ?


「だって、犯人と顔見知りでしょう、あたしたちって」


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