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逆ハーレムな母に育てられた私は“特別”がわからないので旅に出ることにした  作者: Koro


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1/2

平等に愛されて育った私は、“特別”を知らないまま学園へ向かう

---


うちの家が“特殊”だと気づいたのは、いつだっただろう。


毎日が幸せで、愛情にあふれていて、

賑やかで、騒がしくて、笑顔が絶えない家族だった。


だからこそ、外の声に気づくまで少し時間がかかった。


「ほら、あれが例の家の子よ」

「まあ、綺麗な子。でも母親がアレだとねぇ」

「優秀だけど、男にだらしないって噂もあるし」


そんな声が、ある日耳に届いた。


——母は、そんな人じゃない。


愛情深くて、優しくて、確かに少し変わった話をするけれど、

父たちを平等に愛する優しい人だ。


父親が多いのは、そんなに不自然だろうか。


王様に妃が多いのは普通なのに、

どうして母だけ“だらしない”と言われるのだろう。


私は勇気を出して、母に尋ねた。


「お母さん……うちは、おかしいのでしょうか?」


母は少し考えて、柔らかく笑った。


「んー……まあ、特殊よね。でも私は幸せよ」


「……はい。私も、毎日幸せです」


「ふふふ。ねぇツバサ。

 貴方が見て、聞いて、感じた気持ちが一番大事なの」


どんな感情も“あなたのものだから大切にしなさい”。

そう教えるように、母は言った。


母は不思議な人だ。

前世の記憶があり、地球という世界の話をしてくれる。


そこには、色んな価値観の人がいて、

愛の形もさまざまだったという。


兄は否定的だったけれど、

私はその話に強く惹かれた。


——この世界にも、いろんな価値観があるはずだ。

それを知りたくて、私は旅立つことを決めた。


 



 


「……様……ツバサ様!」


はっ、と我に返る。


「ああ、ごめん。ぼーっとしてたみたい」


長い時間馬車に揺られていたせいで、

代わり映えしない景色に意識が流れていたらしい。


「もうすぐ学園に着きますよ」


「ああ、そうなんだ。どんな人たちがいるか楽しみだね」


世界一の魔法学園。

そこへ入学するために、家からはるばる旅をしてきた。


「はぁ……ツバサ様。兄上のお言葉を覚えておられますか?

 学園は勉強の場であって、遊び場ではございません」


小さい頃から世話をしてくれた老執事が、

呆れたようにため息をつく。


「もちろん。でも、色んな人と交流するのも勉強でしょう?」


笑顔で返すと、老執事はさらに深いため息をついた。


「ツバサ様は、見た目も性格も特殊ですからな。

 だからこうして、学園までお見送りに参ったのですよ」


言葉は厳しいが、その目は優しい。


「大丈夫だよ。兄さんたちみたいに問題は起こしてないし。

 私は人当たりが良いからね」


そう言うと、老執事はまたため息を漏らした。


「ええ、人当たりは良いでしょう。しかし……

 本当に人当たりが良い方は、自分からは言いませんな」


遠い目をしている。

どうやら、幼い頃の私を思い出しているらしい。


「あ! 見えたよ、爺!

 門が見えてきた! ここからでも分かるくらい立派だね!」


胸がすっと高鳴る。


馬車の窓の向こうに見えるのは、

空へ伸びるように聳える光の塔——

魔法都市ルミナリアの象徴。


たしかに、“光の都”と呼ばれるのも頷ける。


新しい世界。

まだ見ぬ価値観。

“特別”の愛の形。


私は、胸の奥が踊るのを止められなかった。


 


魔法都市ルミナリア。

中立国として知られ、様々な能力者が集まる国だ。


孤児から王族まで、

“能力があり、学びたい意思がある者なら誰でも門を開く”と謳われている。


……と言っても、読み書きができない者は当然ながら除外される。

形式上は平等でも、結局は実力主義ということだ。


各国にも学園はあるが、

この魔法都市にある“中央魔法学園”は別格。

テストで優秀な成績を残した者、

もしくは特殊能力を持つ者だけが入学を許される。


例外として、能力の“予兆”がある孤児が保護されることもある。

表向きは「慈悲深い中立国」だが……

実際には“育成と管理”の意味が強いのだろう。


そんな中で――

私はというと、特別な能力も、飛び抜けた頭脳もない。

魔力量も知識も、そこそこ。

テストはギリギリ合格。


正直に言えば、コネ入学だ。


父たちが全力で “私には将来性がありますよ” とアピールしてくれた結果だろう。

そこは素直に感謝している。


……入学できたなら、楽しまないとね。


 


学園では寮生活が推奨されているけれど、

家から通う者、寮が嫌で近くで家を借りる者もいる。


私は寮生活を選んだ。

最低限の荷物は先に送ってあって、

さっき老執事のエドガーとも別れてきたところだ。


別れ際の小言はすごかったけれど、

あれはきっと、私のことを自分の子どものように思ってくれているからだ。


生まれてはじめての、一人暮らし。

寮生活。


受付を済ませ、案内された部屋で荷物を軽く確認する。

広くはないけれど、三年間を過ごす場所だ。


胸が高鳴る。


私は一足早く学園に着いたので、

入学式まではあと一週間以上ある。


寮にはまだ人が少なかったが、

その静けさもまた心地よくて——


新しい場所、新しい世界に触れる期待が、

どうしても抑えられなかった。


 


——この時の私はまだ知らなかった。

この学園で“特別”という言葉の意味に触れることを。



---


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