勝利の代償
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今回は、初めての戦闘のあとに訪れる“現実”を描いています。
勝利の裏で、何が失われ、何が残ったのか――。
補給車を奪った一行は、夜明け前に隠れ家へと戻った。
仲間たちは声を上げ、勝利を喜び合う。
「見たか、あの火柱!」
「これでしばらく食糧には困らねえぞ!」
笑いと安堵の輪の中、篠崎蓮は黙り込んでいた。
血の匂いが鼻を刺す。手のひらには、敵兵の断末魔と共に流れ込んだ記憶の残滓が、まだこびりついていた。
「……どうした、浮かない顔だな」
声をかけてきたのは雪だった。
彼女の頬にも血の筋が残っているが、その表情は明るかった。
「勝ったんだ。今日は、それでいいじゃない」
蓮は返事をしようとしたが、そのとき。
「……っ」
誰かの悲鳴が上がった。
見れば、荷台に運び込まれた青年兵が、胸から血を流して横たわっていた。
銃弾が肺を貫き、呼吸は荒い。
「ユウジ! しっかりしろ!」
仲間たちが慌てて駆け寄る。だが、どうにもならなかった。
青年は喉を震わせながら、かすれた声を漏らす。
「……や、っと……仇を……」
次の瞬間、蓮の頭に強烈な映像が流れ込んだ。
ユウジが幼い妹を抱きしめる記憶。
出征する直前、母親に渡された数珠。
そして、砲撃で焼け落ちた故郷の街。
「――!」
蓮は思わず頭を抱える。
視界の端で、ユウジの身体から力が抜けていくのが見えた。
仲間のひとりが嗚咽し、雪が顔を覆った。
歓声は消え、代わりに重苦しい沈黙が広がる。
やがて鷹宮迅が口を開いた。
「死んだ者のことは、後で弔えばいい。だが忘れるな――これは戦争だ。俺たちが勝てば生き残れる。負ければ全員死ぬ」
その声は冷徹だったが、誰も反論できなかった。
蓮はユウジの顔を見つめ、拳を固く握った。
――勝利は、失うことと背中合わせ。
力を振るうたびに、奪うものと守るもの、その両方を抱えていかなければならない。
胸の奥に重く沈む感覚を抱えながら、蓮は静かに立ち上がった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
第6話では、勝利の裏で命を落とす仲間が描かれました。
蓮の力がもたらす「他者の記憶」も強く表に出始め、彼自身を苦しめています。
次回は、この死がレジスタンス内部にどんな影を落とすのか、描いていきます。




