初陣
お読みいただきありがとうございます!
今回は、蓮がレジスタンスの仲間と共に初めて敵へ挑みます。
彼の「力」が少しずつ表に現れ始める回です。
夜のアシハラ。
占領軍の補給車両が街道を進んでいた。
兵士たちは油断なく周囲を警戒している――だが、暗闇には潜む影があった。
「合図をしたら、一気に仕掛ける」
低く囁いたのは鷹宮迅だ。
手を上げると、雪をはじめ十数名の仲間が息を潜める。
蓮もまた、胸の鼓動を押し殺すように構えていた。
迅が手を振り下ろす。
次の瞬間、火炎瓶が宙を舞い、爆ぜた炎が闇を照らす。
「今だ――!」
銃声が一斉に響き渡る。
閃光の中で、蓮も引き金を引いた。
弾丸が兵士の胸を撃ち抜き、血が飛び散る。
だがその瞬間――頭の奥に再び、他人の記憶が流れ込んできた。
「……っ!」
撃たれた兵士が最期に見た、母親の笑顔。
子に残した小さな木彫りの護符。
その断片的な映像が、蓮の視界をかき乱す。
だが躊躇は許されない。
蓮は唇を噛み、さらに引き金を引いた。
◇
戦闘は熾烈を極めた。
敵は数に勝り、火力も強い。
だが、迅の采配と仲間の連携がそれを覆していく。
「蓮、右だ!」
雪の声に振り向いた瞬間、銃口が迫る。
咄嗟に蓮は前へ飛び出し、兵士の喉をナイフで裂いた。
温かい血が頬を濡らす。
「……大丈夫?」
雪の問いに、蓮は短く頷いた。
「問題ない」
その瞳には、恐怖ではなく奇妙な静けさがあった。
まるで戦場そのものが、自分の居場所であるかのように。
◇
やがて補給車は奪われ、敵兵は退散した。
仲間たちが歓声を上げる中、迅が蓮の肩を叩く。
「やるじゃねえか、新入り。お前の度胸、気に入った」
笑う迅の目には、評価と……どこか探るような光があった。
蓮はその視線を受け止め、無言で視線を逸らす。
その胸の奥では、別の感情が渦を巻いていた。
――この力は、仲間を救うために使うものなのか。
――それとも、自分が生き残るためだけに使うものなのか。
答えはまだ出ない。
だが、確かなのはひとつ。
篠崎蓮という存在が、レジスタンスにとって無視できない力となりつつある、という事実だった。
第5話をお読みいただきありがとうございます!
蓮が初めて仲間と共に戦う姿を描きました。
彼の力が「戦場向き」であることが、徐々に周囲にも知られ始めています。
次回は、勝利の余韻と裏腹に生まれる「疑念」。
仲間の間に小さな不協和音が響き始めます。




