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雪に沈む銃声

お読みいただきありがとうございます!

今回は、ついに「裏切り」が現実に起こる回でした。

蓮が未来視を使い、自らの生死を分ける場面を描きつつ、仲間の中の不穏さを鮮明にしています。

林道を進む一行。

風は冷たく、木々の枝に積もった雪が時折ぱらりと落ちる。

荷車のきしむ音と、靴が雪を踏みしめる音だけが響いていた。

蓮は歩きながらも、頭の奥に残る光景を振り払えずにいた。

銃口。

仲間の顔。

そして、己が倒れる未来。

――来るのか、本当に。

「……蓮」

隣を歩く雪が、囁くように呼びかけた。

彼女の視線は前方に向いていたが、僅かに強張っている。

「気をつけて。何か……嫌な気配がする」

蓮は頷き、答えを返さなかった。

代わりに、指先でそっと銃の安全装置に触れる。

やがて、林道は小さな谷を越える細い橋に差しかかった。

荷車が通るたび、きしむ木の音が冷たい空気に響く。

一行が橋を渡りきろうとした、その瞬間――。

「――今だ」

低く短い声。

同時に、銃声が轟いた。

弾丸が蓮のすぐ脇をかすめ、背後の雪壁に突き刺さる。

白い粉雪が弾け、冷たく舞った。

蓮は反射的に飛び退く。

未来視で見た光景が、現実に重なっていく。

「……やっぱり」

喉の奥で押し殺した声が漏れた。

撃ったのは、同じ部隊の男――昨夜、密談を交わしていた一人だ。

その顔にはためらいも迷いもなかった。

「こいつは危険だ! 今のうちに――!」

叫び声に合わせ、別の銃口が蓮に向けられる。

銃弾が迫る刹那、蓮の視界が揺らいだ。

未来の断片。

閃光。

銃弾の軌跡。

それを“先に”見ていた。

「……遅い」

身体が自然に動く。

わずかに身を逸らし、飛び込む。

耳元を弾丸がかすめて抜け、背後の木を抉った。

驚愕する男の前に転がり込み、蓮はナイフを突き立てる。

男は声にならない呻きをあげ、そのまま雪の上に崩れた。

「っ……!」

残る二人が銃を構えた瞬間――。

「やめろ!!」

鋭い怒声が林道に響き渡った。

鷹宮迅だった。

彼は荷車の影から飛び出し、銃を構えたまま裏切り者たちに狙いを定めていた。

「撃つな! こいつを殺したら……お前らが地獄を見るぞ!」

迅の眼差しは鋭く、冷たかった。

裏切り者たちは顔を引きつらせ、銃口を下ろす。

蓮は荒い息を吐きながら、血に濡れた手を見下ろした。

自分が殺した仲間。

胸の奥が冷たい何かに締め付けられる。

「……分かってるな」

迅の低い声が裏切り者たちに突き刺さる。

「次はない。蓮を敵に回すということは、俺を敵に回すってことだ」

誰も反論はできなかった。

沈黙の中で、雪が蓮に駆け寄り、その手を握った。

「大丈夫……?」

蓮は答えなかった。

雪の手の温もりを感じながらも、心の奥底に別の問いが渦巻いていた。

――なぜ、自分は生き延びたのか。

――なぜ、未来を知ってしまうのか。

答えは、まだ闇の中にあった。

ここまで読んでいただき感謝です!

仲間の手によって命を狙われた蓮。

それを救ったのは迅でしたが……この一件が蓮にどんな影を落とすのか。

次回は、その余波と、さらに深まる「不信」が描かれます。お楽しみに!

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