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密やかな刃

お読みいただきありがとうございます!

今回は、仲間の中に「蓮を危険視する動き」が芽生える回です。

異能の力が、仲間を救うと同時に恐れられる――そんな皮肉を描きます。

奪った補給物資を拠点へ運び込んだ夜。

レジスタンスの隠れ家は久しぶりの笑いに包まれていた。

仲間たちは酒を分け合い、肩を組み、勝利を称え合う。

蓮もその場にいたが、輪の中に加わることはせず、静かに壁際で杯を傾けていた。

「おい、新入りも飲めよ!」

陽気に叫んだ男の声に軽く手を上げるが、蓮の瞳に明るさはない。

頭の奥には、あの夜の戦場がこびりついていた。

銃弾を浴びて倒れた兵士。

その瞳に浮かんだ母の姿。

血と共に押し寄せた断片的な映像が、まだ消えてくれない。

夜も更け、人が散っていった後。

残った数人が、声を潜めて囁き合っていた。

「……やっぱり、あいつは危険だ」

「蓮のことか?」

「そうだ。戦闘じゃ役に立ったが……未来が見えるだと? 気味が悪い」

「迅さんが庇ってるから誰も言えないが……俺たちのことまで見られてると思うと、安心できねえ」

「いっそ……事故に見せかけて消すか」

男の吐き捨てるような声に、別の者が小さく笑った。

「戦場なら、死は珍しくない。明日、運搬任務があるんだろ? “たまたま”弾が当たっても、誰も疑いやしねえさ」

冷たい笑い声が、暗闇に沈んでいった。

その頃、蓮は拠点の外に出ていた。

月明かりが淡く雪を照らし、夜風が頬を刺す。

吐く息は白く、重苦しい。

未来視の残滓がまだ残っていた。

敵兵が倒れる刹那の光景――。

未来と過去がないまぜになり、現実感を揺るがす。

「……やめろ」

額を押さえ、低く唸る。

「蓮」

背後から声をかけてきたのは雪だった。

彼女は手に毛布を抱え、そっと差し出した。

「寒いでしょう?」

蓮は受け取りながらも、目を伏せた。

「また、見えたの?」

「……ああ」

短い答えに、雪は唇を噛んだ。

「私は……あなたを信じたい。でも、みんなが……」

そこまで言って、彼女は首を振る。

「ごめん。何でもない」

「いい」

蓮はそれ以上を求めず、毛布に身を包む。

雪の瞳には、言葉にできない不安が揺れていた。

翌朝。

補給物資を別拠点に搬送するため、小隊が編成された。

蓮もその一団に加わる。

顔ぶれの中には、昨夜ひそかに囁き合っていた男たちの姿がある。

「よし、行くぞ」

鷹宮迅の号令と共に一行は出発した。

雪に覆われた林道を進む。

凍りつく空気。

雪を踏みしめる音。

だが、蓮の背に突き刺さる視線があった。

仲間であるはずの彼らの視線。

そこにあるのは、信頼ではない。

潜んでいるのは――密やかな刃の気配だった。

その時、蓮の視界に一瞬、未来が揺らめいた。

銃口が自分へと向けられる映像。

そして仲間の顔――。

「……っ」

喉の奥で声が詰まる。

果たしてそれはただの幻か。

それとも、避けられぬ未来なのか。

蓮の足取りは重くなる。

冷たい風が頬を切り裂くように吹き抜けた。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

蓮の力が戦果をもたらす一方で、不信と恐怖が仲間の中に広がり始めました。

次回は、ついに「裏切り」が表に出る展開になります。どうぞお楽しみに。

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