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眼鏡交換

作者: 島猫。

「眼鏡が見当たらない」


見当たらない、という言葉

口に出して言ってみたものの、しっくりこない

だって、そもそも見えないのだもの

そこここに手を伸ばしても、指にさえかすらない


眼鏡をかけたら目が無ぇ、とはよく言ったものだけれど、かける眼鏡が無ぇ


「眼鏡、知らない?」


「さあな」


探してもないくせに、と心の中で不満を言う

聞こえたのか、こぶしで頭をコツンと叩かれた


「目を閉じて、顔上げて」


目を閉じる前、分かっちゃた

あんまり見えないけれど、でも見えちゃった


だって、握った手からはみ出した無機質なもの、きっと眼鏡のフレームが、少しおでこに触れたように思うから


落ちた髪を耳にかけてくれる、肌に触れる指の温もりが嬉しい

そのまま眼鏡をかけてくれると思ったのだけれど、予想が外れて、耳をかぷりとかじられた


鼓膜を震わす吐息と音に、ぞくぞくする

近過ぎて見えない、耳のそばにあるだろう唇を想像する

それ同士が触れ合ったときの柔らかさを思い出す


カチャリ、眼鏡を外す音


「かけてよ」


「誰に?」


「俺に」


なんのために? 外さなきゃいいのに

不思議に思いながらも、目を開け、渡されたそれを言われたとおりにかけてやる

交代で、手の温もりがほのかに移った眼鏡を、やっとかけてもらえた


「次は、指輪を交換しような」


嬉しくて、すぐに唇を寄せ合えば、カチャチャと、眼鏡と眼鏡もキスをした

















挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文字の向こうに、色彩が浮かんできました。 艶やかなお話でした!! [一言] 2作品もご参加下さいまして、本当にありがとうございました!!
[良い点] 「眼鏡ラブ企画」からきました! おお〜。官能的。 近しい者同士だからこそ『眼鏡交換』がありえるわけですね。 最後の『交換』に対する大きな前振りになっていて素敵です。 息をかけ合うような近さ…
[良い点] 「眼鏡ラブ企画」から拝読させていただきました。 淡々とした描写が情感を増しています。 堪能させていただきました。
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