第九話「プロといくゲーム」
外を歩いていたら、見慣れた背中があった。
お、べこらだ。
「リンコさん、おはようございますべこ」
「おはよう!」
あれ、挨拶してるのは、確か……真島リンコっていったっけ?
いつも片目に黒いアイパッチをしてる人だ。
「おい、べこら」
「あ、イブ。おはようべこ」
「なんでリンコには敬語なんだ?」
「知らねーべこか? リンコさんは一年二回目べこ」
「ダ、ダブり!?」
「おいおい君らぁ。声が大きいんだよ~。聞こえてるぞぉ。まぁ、事実だけどさ」
振り返ると、リンコが……いやリンコさんがすぐ後ろにいた。
「づわぁ! いつの間に!」
「あはは。びっくりさせてごめんねぇ」
「リンコさん、ダブりって本当なんスか? V高の勉強なんてラクショーって聞いてたんスけど!」
俺の情報では、V高は入りさえすれば卒業できる、という学校のはずだ。
もし厳しいなら、俺もちゃんと勉強しないとマズイぞ。
「それはねぇー。自分、ほら、傭兵やってるじゃない? それで某国の紛争に行ってたからさぁ。成績じゃなくて出席がたりなかったってワケ」
「よ、傭兵!? マジっスか!?」
「そうなんよー。君は知らなかった?」
「はい! 俺は袰屋イブっていいます!」
「イブねー。よろしくー」
「それで、リンコさん。失礼ですが、ひょっとして……その目って、戦闘で……」
「ああ、これ? これはカッコイイからやってるだけだよ」
そう言うとリンコさんはペロっとアイパッチをめくった。
その下には普通にパッチリとしたお目々があった。
んだよ! 紛らわしい!
「でも傭兵なのはガチだよ? 戦場で撮った動画も自分のチャンネルで公開してるから、今度見てみてね」
なんと。それはすごいコンテンツじゃないか。
やっぱここでやってくには、それくらいの個性が必要だよなー。
一緒にやれたら、俺に足りないものを盗めるかもしれない。
「リンコさん、俺とコラボしてくれませんか?」
「おー! 良いねぇ。ちなみに自分はFPSならちょっとしたもんだよ?」
「おお! 傭兵と行くFPS! 最高じゃないっスか!」
これは良い企画になりそうだ。
※
「オラオラオラ! ファ(ピー)ンビ(ピー)ッチがぁ!」
「リンコさん? ちょ、ストップ、ストップ!」
「ブチ(ピー)すぞ! クソがぁ!」
「ひぃぃ!」
ダメだこの人。トリガーハッピーになると暴言が止まらなくなるらしい。
あまりの放送禁止用語の連発に、俺のチャンネルは見事、一時BANになってしまった。
がっくし。
この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。
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