第五話「成績よりもチャンネル登録者数」
そんなこんなで俺のV高の初週は過ぎていった。
少しの失敗はあったが、これならやっていけそうだと、俺は生まれて初めて、自分に自信が持てた気がした。
だが、いきなりのピンチが訪れたのである。
※※※
「今日呼ばれたのはなんでか分かってるな?」
「うっ!」
放課後の職員室。俺がなんでここにいるかというと、栄子先生から呼び出されたからだ。
理由は俺が一番、わかっている。
「すみませんっ! これでも自分なりに一生懸命勉強してるんです」
学校が始まり一週間。ハッキリわかったのは、高校の授業は難しい、ということだ。
俺も不登校が長かったので、授業というものの感覚を忘れていた。
今は本当に、ついていくのが精一杯だった。
これじゃテストはボロボロ。成績はガタガタになるだろう。早くも先生には見抜かれたってわけだ。
「何言ってる? 勉強じゃねぇ!! チャンネル登録者のことだよっ!!」
「え……えー!?」
チャンネル登録者って俺のV活動の個人チャンネルのことか?
「チャンネル登録者ですかっ?」
「そうだよっ、お前だけ圧倒的に登録者数が少ないんだよ。自覚してんのか? 同期のトップは入学一週間で早くも十万越えてんだぞ? お前、たったの300とはなんだ!」
登録者数なんて、見たこともなかった。
同期とそんなに差がついていたのか!
「そもそもお前、入学から一回しか配信してないな?」
「ううっ! いや、配信ってものに慣れていなくって」
「まぁ、そういう生徒もいる。ならば登録者数を増やすためにどうするか……他の人を見て参考にしてこいっ!!」
くっ、まさか学校なのに成績じゃなくてチャンネル登録者のことで怒られるとはな。
V高等学校は授業料を生徒からのV活動による収益から徴収している。そのため成績よりV活動を重視しているのだ。
生徒たちのチャンネルに送られる有料チャットや有料メンバーからの収益は学校に入る。なぜなら、俺たちは未成年(という設定)だからだ。
文句はない。だから俺はほとんどタダみたいな額でここに通えているのだ。
親に迷惑もかからない。入学の話をしたとき、親から反対もされなかった大きな理由でもある。
人気がないからといって退学にはならない、とは聞いている。
しかし、あんな調子でプレッシャーをかけ続けられては精神が持たん。
俺はさっそく、同期のチャンネルを調べた。
同期で一番チャンネル登録者数が多いのは……? 牛田べこら!
よし、コイツを研究するぞ!
この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。
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