表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/45

第四十四話「自問自答」

 夏休みも終わるというある日、通話してきたのはノワールだった。

 他愛もない近況報告のあと、話題はやはり、ネルちゃんのことになった。


「音楽班は明日、お見舞いにいくつもりだけど、イブはどうするの? 一緒に行く?」


 ネルちゃんは二学期が始まる前に入院することが決定した。

 これは、最後の登校ができないことを意味していた。

 卒業式は本人不在で行われるそうだ。


 このことは、ネルちゃん本人から、同期全員に連絡が来ていた。

 特に親しかった数人には、入院する予定の病院も教えられていた。


 嬉しい事に、俺にもその中の一人に選ばれていた。

 書かれていたのは病院名だけではない。彼女の本名まで明かされていた。

 見舞いに来るならば、受け付けでその名前が必要になるだろうからだ。


 そこまでの信頼を受けていたとは、光栄だ。

 そんなネルちゃんに、俺はすべてを打ち明けることができるだろうか?


 想像するだけで胸が苦しくなる。

 本当の俺の姿を見られたら、幻滅されるだろう。


 俺には何もない。ただの引きこもりだった。


 俺の見た目が悪かったせいだろう。

 小さなころから俺は人から嘲笑され、馬鹿にされ、気持ち悪がられてきた。そうされるうち、俺は人の目を見て話すことができなくなっていた。

 いつもびくびく怯え、おどおどと小さな声ではっきりと喋ることもできない。


 俺はさらに人から距離を置かれるようになった。


 いや、距離を置いたのはこちらからだったのかもしれない。

 傷つけられることを恐れた俺は、自分の部屋という安全地帯から出られなくなってしまったんだ。


 そんな俺が、思い切ってV高に飛び込んだのは、我ながら英断だったと思う。

 ここでは俺の内面を出すことができた。

 気軽に誰かと接することができた。

 気づけば、友達と呼べる存在もたくさんできていた。


 少し、調子に乗っていたところもあったかもしれない。

 それも仕方ないことだ。人生で、これほど人気者になったことはなかったんだから。


 だけど、今回のことで俺はまた、自分を見つめ直すことになった。


「少し、考えさせて欲しい」


 ノワールにそう答えた。

 通話が切れたあと、自問自答する。


 少しとはいつまでなんだ?

 ネルちゃんと会う機会なんて、これが最初で最後かもしれないんだぞ。

 行かなくていいのか?


 もう一人の俺が、俺自身を責め立てるようだった。

 だけど、俺のこの姿をネルに見せるべきなんだろうか?

 それが正解なのか?

 知らなくていいことも、世の中にはあるんじゃないか?


 俺は夜も寝ず、ずっとそんなことを考え続けていた。


 この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。

 誤字脱字があればお気軽にお知らせください。

 感想、評価もお待ちしております。たくさんの反応が励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ