第四十二話「射的で遊ぼう」
俺は意気揚々と前に出た。なんだか背中にネルちゃんの熱い視線を感じる気がするぜ。
見ててくれよ!
「で、どうすりゃいいんだ?」
「その台の前に立って、そこのボックスから弓と矢を取り出してくれ。矢は十発、一つの的につき一発だけ撃てる」
台に見立てた木のブロックが並んでいて傍らに浜田の言うボックスがあった。
20ブロックほど先には弓道の的のような、白と黒の同心円がいくつか重なっている絵が飾ってある。
「当たったかどうかは自動的に判定するぞ。中心に近いほど点が高くて、ど真ん中で十点。パーフェクトで百点というわけだ」
「ほー? どうやってんだ?」
「回路やセンサーを使ってな。ま、儂もネットで参考動画を見ながら見よう見まねで作ったんだが。何にしてもやってみてくれ。矢は重力の影響を受けて落ちるからな、それを計算して少し上を狙うのがコツだ」
「分かった」
弓はモンスター狩りで使ったことはある。
どの程度落ちるのかは体感でなんとなく予測できる。
この距離ならば、このへんかな?
放った矢は的に命中。
的の貼られた壁の上に電光掲示板のような装置があって、それに『8』というデジタル数字が、オレンジ色の光を伴って表示された。
「すげぇ! ちゃんと点が出てる!」
「うむ。8点とは初めてにしてはなかなかだぞ。続けて次の的を射ってみよ」
俺は感覚を忘れないように、リズムカルに次々と的を狙った。
その都度、『8』、『9』と数字が表示されていく。ついに最後の的で『10』が出た。
「おおー! 10点が出たぞ! 合計は? 82点! ここまでで最高得点だ! やるなイブ」
「おっ、そうなのか?」
「祭り中は何度も挑戦できるからまた来るがいい。最終ランクで景品も出すから楽しみにしておけ」
「景品ありか! ネルちゃんもやってみなよ」
笑顔で手を叩いていたネルちゃんは、コクコクとうなずいた。
見ていたらやりたくなったのかもしれない。
現実と違い、ここなら筋力も使わないし、今のネルちゃんでもできるだろう。
「さ、ネルよ。説明は聞いていたな? ではこちらへ」
ボックスから弓と矢を取り出し、弦を引くネルちゃん。
最初に放たれた矢はなんと9点だった。
「おお! ネルちゃんうまい!」
さらに続けて矢を撃つ。
表示は殆どが『9』か『10』だ。うめぇ!
「これはうまいぞ! 合計は……92点! ワハハ! あっという間に抜かれたな、イブよ」
「いやー、まいった! ネルちゃん、上手すぎ!」
ネルちゃんは笑顔のまま、ふるふると首を横に振っている。
謙遜しているのだろう。
それにしても、ゲーム内にこんなゲームを作れるだなんて、『ディグコンストラクト』ってすごい可能性があるな。
感心している俺に、声をかける者がいた。音楽班のノワールだ。
「あ、イブ、ネル! ここにいた。そろそろやぐらにおいでよ。盆踊りがはじまるよ」
俺はネルちゃんと顔を見合わせ、一つうなずくとやぐらへと向かって歩きだした。
この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。
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