第四話「気をつけるべきは利用規約」
俺のバカみたいな趣味を発表しても栄子先生は少しも笑わず、俺の話を聞いて深くうなずいてくれている。
この先生……いい人だ!
「うむ。ゲームか。やはり放課後のV活動もゲーム中心でやるつもりか?」
V学園では、放課後に部活動ならぬV活動というものがある。
俺たち生徒は部活代わりにゲームや雑談など、様々な配信活動をすることになっているのだ。
俺はつい、嬉しくなって声が大きくなってしまった。
「はいっ! とりあえず『大激闘ドンキーブラザーズ』をやろうと思ってます!!」
「バカッ!! N堂のゲームは禁止だって入学説明会で言っただろ!!」
そうだった!
ゲーム配信には権利の関係で許諾が必要なのだ。N堂はそのあたり、特に厳しいと聞いている。
「いいかぁ? 皆にももう一度言っておくが、V活動でゲームを配信するときは許諾がおりているタイトルだけ! それと授業の配信は禁止だからな! 授業中は普通に勉強すること! あとは雑談でもなんでも企画すれば良いが、やっていいか不明ならまずは先生に企画書を見せて相談すること。チャンネルBANされた奴は退学もあるから注意しろよ!」
V高の配信プラットフォームは、V高の親会社が経営している。なので、多少は大目に見てもらえると聞いている。
AIを使った自動BANでは無いので、間違ったBAN、いわゆる誤BANは無いそうだ。
もう一度、規約をよく読んでBANされないよう注意しなければ。
自己紹介は次々と進んでいく。
なかなか個性的な面子ばかりだが、俺は人を覚えるのが苦手だ。
あとで少しづつ、名前をおぼえていくとしよう。
「あ、あの、私は星空ネルといいます! よろしくお願いします!」
おお。ネルちゃん!
同じクラスとは運命を感じちゃうなぁ。
ネルちゃんだけはすぐおぼえたよ!
「趣味はピアノで、歌を歌うのが好きです。夢はオリジナル曲を発表すること。カラオケ配信もしたいと思っています」
「カラオケか。これも権利があるからな。音源は自分で用意しなければいけないから、結構大変だぞ。場合によっては配信アーカイブを残せなくなるから、事前にきちんと確認すること」
なるほど。確かに楽曲も著作物だもんな。
俺は歌が下手だからやることはないが、胸に留めておこう。
「あ、あの……先生」
「なんだ?」
「お花摘みに行きたいんですけど……」
「ああ、遠慮せず行って来い」
ここでいう“お花摘み”はトイレに行くことだ。やはりネルちゃんでもお花摘みに行くのかー!
なんて思って見ていると、なんとネルちゃんの首が、ポッキリ骨が折れたように直角に横に倒れた。
「ネルちゃん!?首がっ!?」
「トラッキングが外れたんだろ、気にするな」
VR機器を外したからか。
理屈はわかってても気になるわ!
この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。
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