第三十三話「ラリアからの新星」
放課後、俺はV活動をすべく準備を始めようとした。
すると、教室のドアを開け、近寄ってくる影があることに気がついた。
「ハロー、イブ」
それはキムだった。
「おう、キム。どうした?」
「今日はイブに紹介したい人を連れてきたヨ」
と言いつつ隣に立つ女の子の肩に手を置いた。
初めて見る子だ。
こんな、やたら目立つ真っ赤なショートヘアの子を見逃すとは思えないんだが。
しかも後ろの真ん中の毛が尾っぽみたいに跳ね上がっている。
「カノジョは今日からここに通うことになったエイプリルだヨ」
「ハロー! ミーは四月一日エイプリルだよ! よろしくね!」
「お、新しい海外組か」
言葉にちょっと訛りがあるけれど、かなり日本語は上手いな。
「そうだよ。ミーはラリアから来たよ」
「ラリア?」
「オーストラリアだよー!」
「妙な略し方すんな!」
「こうしないとオーストリアと間違えられるからさー」
「そんなに間違えるかぁ?」
「コアラがいる方って覚えてね」
「それくらい知っとるわ!」
またなんだかとぼけた奴が入ってきたなぁ。
するとなにやらキムが、真剣な顔で口を開いた。
「ところでイブ。この間はひな団に名前を付けてやったらしいネ?」
「ん? ああ。そうそう。よく知ってるな」
「ズルいヨ! アタシたち海外組にも名前付けてよ! 海外組はワタシたちには言いにくいんだヨ!」
「え? 俺が? 自分らで考えりゃいいじゃん」
「イブに考えてもらいたいんだヨ!」
なんで俺が……。
けど“頼られる”、なんてことは今までなかったから、悪い気はしないんだよな。
「そこまで言うなら、アイデアを出さないでもないけど……」
「アリガトサンクス!」
とは言え、どうしたもんか。
海外っていう以外、メンバーに共通点はなさそうだしなぁ。
「海外勢は英語で言うとオーバーシーズ、だっけか……」
「おお! オーバーシーズ!? いいじゃないカ!
「え?」
「今日からアタシたちはオーバーシーズだ! エイプリルもOK?」
「ミーはそれでいいよー」
「お、おう。気に入ったならよかった」
なんのひねりも無い案だけど、彼女たちがいいなら……ま、いいか。
「それとイブ。ミーたちとコラボしない?」
「おお、エイプリル。それはいいアイデアだナ。アタシらも四人になったことだし、なんかやりたいネ」
「俺はいいぞ~。なにする?」
「そうだなー。それじゃ『お菓子の“たぬきの街”と“狐の川”どっちが美味しいか討論会』はどう?」
「バカいえ。そんなことやったら戦争が始まるぞ!?」
「えー? 大げさだよ」
「何も分かってねぇな……」
またしてもとんでもねー奴が入ってきたな。
オーバーシーズ、恐ろしいグループになりそうだ。
この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。
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