第三話「そこはメタバース立V高等学校」
メタバース立V高等学校、通称V高。
メタバース内にあるバーチャル高校、という点以外は普通の高校と考えてくれ。
校舎もあるし、教室もある。
どこにでもあるような一般的なデザインの教室に入り、指定された座席に座る。
生徒がアバターでなければ、仮想空間だということを忘れちまいそうだ。
すると、ちょうど良いタイミングでダークグレーのパンツスーツに身を包んだメガネの女性が入ってきた。
その人はツカツカとヒールの音をさせ、まっすぐ歩くと教壇に立った。
「はい。みんなそろってるね? 私はこのクラスの担任の加羅栄子だ。栄子先生と呼んでくれ」
黒髪を後ろで一つにまとめ、いかにも真面目って感じの先生だ。
「では出席をとるぞー」
栄子先生は名簿を開き、名前を呼び、返事があったらペンで何やらマークしている。
おいおい、ここ、メタバースぞ? 手書きでやるの逆にめんどくさくない?
全員の名を呼び終わると、栄子先生はパタンと名簿を閉じ、ため息交じりに言った。
「それにしても、予想通り女だらけだな~」
手のひらを上にして外国人のやれやれポーズをしている。
呆れながらも予想済みだったらしい。
「それじゃ、まず最初の授業は……自己紹介タイムといこうか!」
とたんにざわつく教室。
俺も嫌だが、まぁ、これはしょうがない。自己紹介は必要だろう。うん。
「お、袰屋イブ! いい目をしているな。お前から行こうか!」
「え……えー!」
いい目なんてした覚えはないんだが!?
なんなら親からも目付きが悪いと言われ続けてきたし、道を歩いていたら女の子は避けていくし、ヤンキーからはケンカ売ってんのか? とすごまれてきた人生なんだが?
あ、いまはアバターだからか。
こうなったら覚悟を決めるしかねぇ。
どっちみち、やらなきゃいけないんだ。
だったら、最初に終わらせちまったほうが気が楽だ。
「えー? じゃないんだよ。イブ。同期のことをお互いよく知っとかないとな」
普通の学校では同級生というが、ここでは同期というらしい。
「えー、袰屋イブです。あの……。その……」
どうしよう、何も言うことがない!
そうなのだ。俺は身分を隠してここにいる。いや皆そうだろう。年齢、出身地、その他個人情報に関してはお互いに言わないし聞かない、それが暗黙のルールなのだ。
「どうした? 趣味とかないのか?」
「趣味はゲームとアニメです!!」
それだけは自信を持って言えるわ。
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