第二十九話「『ディグコンストラクト』ってなんだ?」
帰りのホームルームの後、栄子先生から声をかけられた。
「イブとネル。このあと校長室に行ってくれ」
「え? 校長室? なんでです?」
「校長からお話があるそうだ。詳しくは私も知らん」
ヤバいことはしていないと思うが……ネルちゃんも一緒なら怒られるってことはなさそうだ。
行ってみると、俺たちの他、浜田を始めとするDemonZ。ネルちゃん以外の音楽班。チベ率いるひな団。海外組もいた。
俺たちが入ると、校長用のデカいデスクに座っていたダニ-校長が立ち上がった。
「これで全員だな。集まってもらったのは、プレイして欲しいゲームがあるからなんだ。みんなも知っているだろう、『ディグコンストラクト』だよ」
「ゲーム? 『ディグコンストラクト』? なんだそりゃ?」
「イブくんは知らんか? 今とっても人気のゲームなんだが」
話を聞くと、素材を集めて好きなように建物を作ったりできるゲームらしい。
ボス敵を倒す探索モードもあるそうな。
「で、学校でサーバーを用意したんだが、ゲームが大人数に対応していないんだよ。ということで、登録者が多い君たちに代表して遊んでもらいたいんだ。もちろん、V活動として配信してほしい」
なんだか先生に言われてやるのもしゃくだなぁ。
と、俺は思ったのだが、みんなは喜んで大騒ぎとなった。
「やったね! イブも一緒にやろうね!」
そうネルちゃんからひまわりのような満面の笑みで言われたらやらざるを得まい!
※※※
普段使うVRモデルをそのままゲーム内に持ち込めるというのもこのゲームの特徴だ。
俺たちは学校に通う普段の姿のまま、ゲーム内のワールドに降り立った。
「なんもねぇな……」
見たところ、ここは丘陵地帯のような地形に木が茂っている自然豊かなところで、人工物は一切見当たらない。
「それはこれから作っていくんだよ!」
「嬉しそうだね、ネルちゃん」
「うん、これやりたかったんだぁー。まずは木を切って、道具を作るよ」
木を切って木材を集め、ピッケルで石を砕き、斧でさらに大量の木を切り、スコップで土を掘り、といろいろやっているうちに、ちょっとした広場ができた。
「今日はここに家を作ろうよ!」
ネルちゃんに言われるまま、作業台を作り、木材を加工し建築資材を作っていく。
「ふう。あとは組み立てるだけだ。けどネルちゃん、辺りが暗くなってきたね?」
「ちゃんと一日のサイクルがあるんだよ」
気づけば真っ暗な夜に包まれていた。
気にせず作業を続けていたのだが、闇の中から獣の唸り声のようなものが聞こえてくる。
「なんだぁ?」
「イブちゃん、危ない!」
振り返ると、俺の背後には赤い目を光らせた、狼がいた。
「げ! なんだこいつ!」
飛びかかってくる狼。抵抗しようにも、武器になるようなものは作っていなかった。
数度、画面が赤く光ったと思ったら、真ん中に『You Dead』という字が表示されていた。
「ネルちゃん、俺、死んだ?」
「二人とも死んじゃったねー。夜になるとモンスターとか獣が出てくるだ。忘れてたよ」
「そんな大事なこと、忘れないでよネルちゃん……」
俺は正直、このゲーム、どこが楽しいのか分からなかったが、ネルちゃんと一緒に遊べたので満足だ。
誘われたらまたやると思う。自分からは……やらないかなぁ?
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