第二十五話「バーチャル寺の女僧」
海外組、一体どんな奴らなんだろう。
確実にやってくる彼らとの交流にそなえ、俺も、もっと英語を勉強しておくべきだろう。それは分かっている。
でも、俺の英語の成績、終わってんだよなー。
「そなた。何を悩んでおるのな?」
「ん? だれだ?」
声の方には薄水色の頭巾をかぶった見知らぬ女がいた。
制服を着ているから生徒のようだ。
「拙僧は淡路山びくに。バーチャル寺で尼をしているのな」
「バーチャル寺? 学校にそんなもんまであるのか」
「うむ。拙僧はV高の生徒でもある。してお悩みは何なのな? このグレート尼のびくにが聞いてやるのな」
「悩み……ていうか願望だけど、英語が喋れるようになりたいなーって」
「英語を喋りたいのな?」
びくには瞳を閉じ、何か考えているようだ。
しばらくすると目をカッと見開いた。なにか思いついたのか?
「日本に生まれたのなら英語を喋る必要ないのな! そんな小さなこと、忘れてしまうのな」
「なんだよそれ! 学生なんだから、英語の勉強だってしないとだろ!」
「愚かな……やはり人は愚かなのな。特にお前」
「おい! 失礼だろ!」
何だよコイツ! また変なやつが出てきたぞ。
「びくにっていったっけ。お前だってV高の生徒だろ? 英語はどうしてるんだよ」
「人は諦めることも肝心なのな」
「何言ってんだコイツ……」
「ときに、なぜ英語など喋りたいのな?」
「いや、なんでもこれから海外からの生徒が入ってくるらしくてさ。どうせなら仲良くなりたいだろ?」
「ふむ。ならば心配ないのな。わざわざ日本の学校にくるのなから、どうせ向こうが日本語を勉強してくるのな」
「いや、そうかもしれねーけど!」
「しかし、勉強しようという姿勢はいいことなのな。努力する気はあるのな?」
「びくにには言われたくないが。勉強するチャンスでもあるよな。せっかく喋り相手がいるんだから、実践的に勉強できるだろ」
びくには大きくうなずいた。
「その意気やよし。ならば滝に打たれるのな!」
「なんでそーなる!?」
俺は強引に校舎の裏へ連れて行かれた。
するとなんとそこに、小さい寺があった。
「学校にこんなところが……」
「前回のアップデートで追加されたのな」
「そういうメタいこと言うなよ、風情がないだろ」
滝も実装されていたので、俺はそこで滝行をすることになった。
頭に降り注ぐ大量の水。だが……。
「おいびくに。これ、バーチャルだから冷たくもないし水の感触もないんだが、何か意味あるのか?」
「そんなもん、気分なのな」
「なんじゃそりゃ!」
なんという無駄な時間だ。とっとと帰ろう。
去っていく俺に、びくにが背後から声をかけてきた。
「また悩みがあったら来るのなー!」
こんなとこ、二度と来んわ!
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