第二十四話「ライブのトラブル」
ネルちゃんとノワールがウキウキで話し合いを始めた。
「何歌おうか?」
「そうだなー」
そうだなー、じゃないんだよノワール。俺の意見も聞け!
「ちょっと待って二人とも! アンコールったって、用意がないから無理だよ。あ、同じ曲をやるならできるかな?」
とっさの思いつきだが、それならいけるのでは?!
「えー、そんなのお客さんもつまんないじゃん」
ノワール! いい加減にしろ!
そこでネルちゃんがポンと手を打った。
「そだ。『歌ってやった動画』の曲、やればいいんじゃない? あれならオケもあるでしょ」
「それだ! ネル、さすがー!」
二人は手を取り合って飛び跳ねている。てぇてぇ……って言ってる場合じゃねぇ!
練習なしで、でできるのか? 俺!
「ちょっとマッテもらおうか。ステージを独り占めにするなよ、反トラスト法違反だヨ」
急に低めの声がしたと思ったら、ステージ上に長い金色の髪の女が立っていた。
誰だコイツ!?
「あの、あなたは?」
怯える室内犬のように恐る恐る、ネルちゃんが聞いた。
「アタシはキンバリー木村。キムと呼んでくれ。今日からV高に通うことになったからヨロシクな」
「今日から? なんでこんな時期に?」
もう夏だぞ? 転校生かなにかか?
「アタシら海外組は手続きがハードでネ。そういうことで、チェンジしてもらっていいかな?」
「か、海外組ぃ!?」
俺は驚いたものの、べぇたまの例もあるよな。
などと考えていたら、曲が流れ出した。
「ヘイ! こっからはアタシの番だよ! ヘイ! ヘイ!」
客を煽りだすキム。俺たちも思わずノッてしまうほどアップビートな曲だ。
そして始まるラップ。英語で何を言っているか分からないが、俺でも上手いと分かるほどの歌唱力だ。
ちょっとまて、よく考えるとこれ、助かったな?
おお! そう思ったら気が楽になってきたぞ!
ノッてきたぜぇ!
俺は手を叩いたり、飛び跳ねたりしてはしゃぎまくった。
ネルちゃんもノワールも実に楽しそうにしている。
なんだかんだ、ライブは大盛りあがりで終わった。
と、思う。少なくともこっちは盛り上がった。
客が金平糖じゃ、ノッてるかどうかわかんねーんだよな。
ただ、数字は良かったらしく、ライブ終わりの俺たちに挨拶にきた校長もごきげんだった。
「よかったよ! これからライブは定期的にやるから、またヨロシクね!」
校長は確か、ダニ-郷っていったか。
アバターはナイスミドルって感じのイケオジだ。ここにきて初めて男を見たぞ。
アメリカ帰りの経営者らしく、今後は積極的に海外の生徒を入れていくらしい。
また濃い奴らが来そうだ。オラ、ワクワクしてきたぜ!
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