第二話「ふりかえれば見知らぬ美少女」
メタバース立V高等学校へは、俺と同じく色んな問題を抱えた生徒たちが通っているようだ。
今年の募集生徒数は100人だったが、あっという間に埋まったらしく、すぐに120まで拡大された。
「ほほー! いるいる! 生徒がいっぱいいるわぁ」
登校する生徒たちが、合わさって一つの大きな流れとなり、校門へ流し込まれて行く。
現実なら人の多さで吐きそうになってるかもしれん。
この一人ひとりが、俺と同じく、紆余曲折あって、ここにたどり着いているのだ。
そう考えると面白いし、興味が湧いてくる。
「ここで新しい出会いがあるのか。ひょっとして、恋なんかもしちゃったりして?」
それにしても、だ。
「美少女しかいねぇ……」
俺も人のことは言えねぇ。
見た目が自由とあって俺が選択したのは、憧れの金髪ショートヘアの美少女だからだ。
これだけ美少女だらけでも、本当の女は何割いるだろうか?
つっても、ここでは性別なんか、大した問題ではない。
「あのー……」
背後からの声に、振り向いた。
ロングの明るい茶髪。目立たぬ小さな鼻。薄く小さな口。大きな目にエメラルドのような輝きを放つ瞳。抱きしめれば折れてしまいそうな細い体。
俺の大好きなキャラそっくりの女の子がそこに立っていた。
「あなたも新入生、かな?」
声がまたかわいい!
子どものように高いが、耳障りではない。小さいが明瞭で聞き取りやすい。
優しい風が鳴らす風鈴の音のような声だ。
「あの……?」
「あああああ、はい! 俺ですか?」
いかん。見とれてしまっていたようだ。
明らかに俺を見て言っているのに、マヌケな質問をしてしまった。
その子は小首をかしげ、口元を隠すと妖精の羽音とはこういうものではないか、と思わせる声で小さく笑った。その仕草がまたおしとやかだ。かわいい。
「うふふ。そうです。急に話しかけてごめんなさい」
「いやいやいや、全然もう、バンバン話しかけてきてくださいよ! 俺は今日からここに通うことになった、袰屋イブっていいます。よろしくです!」
「イブさんですね! 私は星空ネルって言います。よろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそ!」
お互いに、腰を折り曲げて深々と頭を下げる。
本体の俺は大きく背もたれを倒した椅子に座っている状態だ。だがこの最新VRゴーグルは脳波を読み取り、動きたいと思った動作をアバターに反映することができるのだ。
なんともよそよそしいが、これが俺とネルちゃんとの出会いであった。
まぁ、俺にしては普通に会話できた方、なんじゃないだろうか?
この作品は有名VTuber事務所が好きすぎて書かれたものですが、フィクションです。実在する団体、個人、VTuberとは一切関係ありません。
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