第十一話「設定は守ろう」
今日も遅刻、遅刻ぅ!
いくら登校時間ゼロでも、それが当然だと思っていると、起きるのがギリギリになっちゃうんだよなぁ。
「こら! イブ殿! また遅刻ギリギリでござるぞ!」
「ゲッ! あおゐ!」
門番のように立っていたこいつは風紀委員の風賀あおゐ。
いいヤツだが、真面目すぎる性格が難の自称くノ一だ。
「別にいいだろー? ギリ遅刻じゃないんだし」
「こう毎回だといずれ遅刻するでござる! 一体、何時に起きてるでござるか?」
「だいたい登校時間の十秒前まで寝てるな」
「じゅ、十秒!? 寝過ぎでござる! 何時に寝てるでござるか?」
「昨日は深夜までゲームやってたから、寝たのは深夜二時くらいかなぁ」
「ダメでござる! たるんでるでござるよ!」
「まぁまぁ、いいじゃんか。あおゐだって俺と同じ、派手な金髪なんだしさぁ」
あおゐは明るい金髪で、それを後ろで一つにまとめている。ほどいたら腰くらいまでありそうだ。
「こ、これは拙者でなく、父上の趣味で……っていうか、髪色は自由って校則にもあるでござる!」
「そうだな。V高は制服を着てさえいればあとは自由だもんな。けど武器を持っているってのはどうよ?」
俺はあおゐの腰にある、二本の刀を指さした。
「こっ、これはくノ一の魂! 学校であろうが、片時も手放すわけにはいかぬでござる!」
「ていうかさぁ、くノ一なら刀は背中に挿すもんじゃねーの? 武士なのか?」
「どこに挿そうと自由! 拙者は武士ではござらぬ! くノ一でござる! それ以上言うと然るべきところに訴えるでござるぞ!」
「なーにやってんだお前ら、とっとと教室入れー。授業はじまんぞ」
振り返ると、そこには栄子先生がいた。
「栄子先生! いいところに! 今、あおゐの刀は危ないんじゃないかって話、してたんですよ!」
「こ、これはちゃんと許可をとっているでござる!」
「あー。その刀なら別に問題ないぞ」
「ええ!?」
「ほら、言ったでござろう?」
「だって、そんなもん。ただの3Dオブジェクトで別に武器として使えるわけじゃないからな」
「なぁーんだ、そうなのかぁ。そんなもんを魂とか言ってたのかぁ? ぷぷ」
ちょっと言い過ぎたかもしれん。
あおゐは顔を真赤にして肩をぷるぷる震わせだした。
「せ、先生殿! そんなメタいこと言ったらダメでござる!」
「あ、おい! 待て!」
そのまま校舎の中へ走り去っていくあおゐ。
「先生、今の発言はマズイっすよ……」
「ああ……。あとで謝っとくわ。てか、イブも煽ってただろ、謝っとけよ!」
「はい……」
人から見たらバカバカしいとかくだらないとかあるけど、本人にとっては大事な設定ってあるんだよなぁ。
今回は失敗だった。
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