第十話「黒船来校」
俺は登校中、我が目を疑う物を見た。
何あれ……船?
黒い海賊船みたいなのが学校に向かってるんだが。サイズはクルーザーくらいだけど、あんなことできるのか?
こっちに近づいてくるぞ!
あ、人が乗ってる。あれは……。
「あっ、イブ! おはー!」
「お前は! 黒船ベリー!」
「ベリーじゃなくて『べぇたま』と呼べって言ってるでしょ!」
「なんで船なんて乗ってるんだ?」
「べぇたまだけ海外っぽさを出すために船登校が許されてるの。校長に頼んだんだよ。キャハハ!」
べぇたまは確かどっか海外から通っているらしい。
そういうことができるのもV高の強みだろう。
「ところで最近面白い配信やってるらしいわね!」
「面白い配信って何のことだ?」
「ごまかすんじゃないわよ! チャンネル登録者数一位らしいじゃん!」
「一位は本当だけど、あんなの、俺の力じゃねーよ。すぐ抜かれるって」
「まぁ、いいわ。特別にべぇたまがコラボしてあげる!」
「はぁ!?」
「キャハハ! 遠慮すんなって!」
「してねーよ!」
こんな上からのコラボの誘いは初だ。
断ってやろうかと思ったが、最近、誰もコラボしてくれないし、これもチャンスかもしれん。
「分かった、コラボするか。どんな企画をやる?」
「そうねぇ。ゲームじゃありきたりだし。うーん。あ、ラップ対決は?」
「はぁ? ラップぅ? 俺、下手なんだよなぁ。上手く切れなくて、すぐくっついてグチャグチャになってさ」
「Wrapじゃねぇよ! Rap! キャハハ!」
「えー! ヒップホップのアレかぁ? そんなの余計、できねーって!」
「いいじゃん、いいじゃん! 何事もチャレンジ! キャハハ! そんじゃまた後でね~!」
「お、おい!」
※※※
そんなこんなでラップ対決をすることになってしまった。
ラップなんて人生初なんだが。
「キャハハ! 今日はイブとフリースタイルバトルやるよ! まずはべぇたまから!」
べぇたまが用意してくれたビートが流れる。
『黒船来航♪ 船乗って登校♪ V高に参上♪ 天下取って卒業♪』
うお! べぇたまめ、自分から言うだけあって上手いじゃねぇか!
「さぁ、かかってらっしゃい!」
くっ、こっちの番か。もうどうにでもなれ!
『はぁ~♪ 友達いねぇ♪ 最近コンビニ弁当しか食ってねぇ♪ 昨日二時間しか寝てねぇ♪ これじゃ誰もコラボしてくれねぇ~♪』
【ダセェww】
【ラップになってねぇぞwww】
視聴者のコメントは散々だ。そりゃそうだろう。
勝敗は視聴者からの投票で決定、とのことだが……まぁ惨敗だろうな。
「投票率2%対98%、勝ったのは……イブ! えー! なんでよぉ!」
べぇたまはガックリうなだれている。
俺にもなんで勝てたのか分からん。コメントを見てみよう。
【ダサかったけど、なんか共感できた】
【俺も……】
お前ら……。
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