スライムと薬草
モンスターに襲われることはないのではないか。そう思った彼は、思い切ってモンスターに近づいてみることにした。10m、5m、1m、そこしずつ近づいていき、手を伸ばせば触れられるほど距離になった。しかし、モンスターが襲ってくる気配はない。
よく見ると、このモンスターは寝ているようだ。
寝ているならば好都合である。気づかれないように枝を拾い、帰ればいいのである。
モンスターが寝ている横で一本ずつ丁寧に枝を拾う。しかし、あと少しというところで積んであった枝が崩れてしまった。咄嗟にモンスターの方を見たが、まだ起きていなかった。
先ほどまで緊張して気づかなかったが、このモンスターは怪我をしているようだった。スライムだから分かりにくいが、体のところどころに何かが当たったような傷のようなものがあった。
無事に枝を拾い終えたが、それまでモンスターが起きる気配はなかった。もう一度モンスターのことを見るが、やはり怪我をして弱っているようだった。枝を集めてくれたであろうモンスターに感謝を伝えることなくその場を離れるのも嫌だったため、彼は枝の入っているカゴをその場に置き、近くに薬草がないか探し始めた。
運のいいことにこの周辺は人が来ることも少ないようで、様々な草が生えていた。茂みの中を少し入ったところで薬草を見つけた彼は、それを持ってモンスターのところに戻った。
戻る時に茂みのガサガサという音がしてしまったが、モンスターが起きる様子はない。
薬草を細かくちぎり、近くにあった石ですり潰してモンスターの傷に塗ってあげた。
すると、モンスターの体内へとすり潰した薬草が取り込まれていった。しばらくすると、モンスターは目を覚ました。
「大丈夫?」
モンスターに言葉が通じるか分からなかったが、思わずそう聞いていた。モンスターは驚いた様子で周りを見ている。すると何か見つけた様子で、動き出した。モンスターが進む先を見てみると、先ほどすり潰した薬草の残りがあった。
丸い体から手のような細い部分を作りだすと、薬草を指したあとにこちらを指してきた。おそらくは薬草を塗ったのはお前かと聞いているのだろう。首を縦に振ると、さっきまで小さい点のようだったモンスターの口が笑顔へと変わった。
すると、モンスターがこちらに向かって飛んできたので思わず受け止める。てっきり食べられるのかと思ったが、小さい犬のように体を擦りつけてくる。自分のことを治療してくれたのが嬉しかったのであろう。そんな可愛い姿を見て、彼も思わず笑顔になる。
しばらくすると、モンスターが体を擦りつけるのをやめてこちらを向く。同じように彼もモンスターの方を向くと、モンスターの目のしたがほんのり赤くなって、それと同時に下におりようとバタバタし始める。下におろしてあげると、近くに置いてあったカゴの中に入っていった。
そろそろ帰ろうと思っていたのだが、カゴのなかにモンスターがいる限りは帰れない。
カゴの中を覗き込み、
「外に出てくれないかな?」
と言うのだが、モンスターは首を振るように体をふるふるして拒否してくる。
どうしようか迷っていたが、モンスターが先ほどと同じように手のようなものを作り出し、カゴの中から森の出口を指してきたので、諦めて連れて帰ることにした。
読んでいただきありがとうございました。
この先も作者が書きたいことを書いていくつもりです。今後モンスターとの戦闘シーンも書きたいなとも思っていますので、こんなモンスターに登場させたいというのがありましたら感想と共に教えていただけると嬉しいです。